放蕩鬼ヂンガイオー

12「燦太郎くんに手出しはさせません」

エピソードの総文字数=1,854文字

 ステンドクラスが怪しげな明かりをさした先に……コソの姿があった。
 勝ち誇った様子で笑っている。

『あなたたちの戦い方は分析させてもらったワ。どう? ここならLAEは集められないでショ?』

 燦太郎は舌打ちした。
 まずい、せっかくAQとの協力体制を整えたというのに、これでは外部に燃えが伝えられない。

「姫荻! ここではAQの力が借りられない! ヂグソーの封印だけ解除して、おまえは隠れてろ!」

 見ると、くまりは地に伏せていた。
 うずくまるようにして自分のひざを押さえている。

「た、確かにそう……ですが……」
「おまえ、今ので怪我したのか!?」

 燦太郎はくまりに肩を貸した。
 くまりは体重を預けてゆっくりと立ち上がる。

「大丈夫、少しくじいただけです。それよりも……手帳が」

 くまりが指で示した先――コソの背後の床に、瓦礫に埋もれるようにして手帳が挟まっていた。

 くまりの焦りがこちらにも伝わってくる。

 たしかに絶望的だ。これではLAEを集めるどころか、ヂグソーの封印すら解くことが出来ない。
 
(さすがに形勢がワリーな……)

 退路を検討しようと燦太郎が辺りを見渡した矢先――くまりが動いた。
 いつの間にか携帯武器のトンファーを取り出し、壁伝いに手帳へ向かって駆け出している。

「姫荻、無理すんな!」
「いえ、考えがあります。燦太郎くんとヂンガイさんは私の合図に従ってください」
「待てってば!」

 出遅れた。
 タイミングを逃した。

(ああもう、しゃあねえなあ!)

 ヂンガイを引っ張り、一歩遅れて走り出す。
 こちらはあえて、くまりと反対の壁をつたうことにした。

『なにを狙っているのカシラ、放蕩鬼』

 コソの視線が燦太郎たちに向く。

 よし、うまくいった。

 こちらにはヂンガイがいる、敵の優先順位から考えて囮になれるはずだ。
 コソは広間中央に陣取っているため、こちらへ注意を向ければくまりへの意識は薄められる。

 横目でくまりの走る先を確認する。そこには手帳の埋まった瓦礫と……少し離れたところにステンドグラスがあった。

(あれか?)

 ステンドグラスのモチーフは雪男やシルクハットの紳士など、ヂゲン獣の幹部たちがそれぞれデザインされているようだ。

 そのなかにひとつ、ライオンがいた。

 シシドクロの全身を模したデザインをしているらしく、地に這う獣をイメージしてか、ほかのステンドグラスに比べてずいぶん低い位置に設置されていた。あれなら破壊して外部と接触が図れるかもしれない。

 手帳を手に入れて、封印解除したヂグソーで勝負をするか。
 ステンドグラスを破壊し、外部から集めたLAEで勝負するか。

 くまりの意図を確認したいが、大声で聞けばコソにも伝わってしまう。何か手を打たなければならない。

「ヂンガイ! 金棒を抜け!」
「お任せなのだ!」

 くまりの狙いがどちらにせよ、手帳の埋まっている瓦礫かステンドグラスを破壊しなければならない。とにかく武器が必要だ。
 ヂンガイはすぐに状況を飲みこんだようで、数少ないポケットヂグソーを自分の右手に集めた。こぶしに光が収束する。

『そうは、させないワ!』

 コソが踊るように体を回転させる。爆弾が三つほど宙を舞った。

「っのォ!」

 ヂンガイが走りざまに腕を払う。中空で叩いた爆弾が跳ね、すぐ目の前で炸裂した。

 閃光が闇を裂く。

 黒煙と炎に揉まれながら、燦太郎とヂンガイは足を止めずに走り抜けた。

「そんなもんじゃ、このヂンガイ様はとめられないのだ!」

 ヂンガイの手には、すりこぎサイズの小さな金棒が握られていた。

『チィッ! 生意気ですわヨ! もう一撃ぶちこんであげるワ!』

 全身から怒りの冷気を吐き出すコソ。
 体中に吊り下げられた爆弾のうち、十を超える導火線が強く発光した。

 ――が、新たな爆弾が放たれる前に、コソの後頭部に瓦礫がぶつかった。

「燦太郎くんに手出しはさせません」
『アァ? なんのつもりですノ?』

 コソが振り返る。その先には、両手に瓦礫を持ったくまりの姿があった。咄嗟に投擲で注意を逸らしてくれたらしい。

 今だ。この隙に駆ける。

 燦太郎は全力疾走した。
 目的地点への距離が一気に縮まる。
 横目で見ると、コソの肩越しにくまりが手を振っていた。合図がくる。

「燦太郎くん! シャンプーハットです!」

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