勇者の武器屋

第三〇話 バニースーツ追加発注

エピソードの総文字数=2,051文字

……ふう、思ったよりも疲れてしまいました。

午前中ずっと、工房から卸してもらったスタウトシールド10枚を運ぶ作業をしていたんで、それが終わってすぐ講義に入ると、さすがに身体にきますね。ご飯を食べるヒマもありませんでした。

黒パンの残りとチーズがあるぞ。こんなんでいいか?

ありがとうございます!

お腹がグーグー鳴っていたので、嬉しいです。

おつかれさまだ。本当に勇者はよく仕事をしてくれるよな。

だがそのおかげで、スタウトシールド1枚がさっそく売れてくれたぞ。今回たまたま工房が10枚8万Gで投げ売りしたのを、1枚1万9000Gで店頭に並べたから、結構な儲けになってくれそうだ。

1枚売れてくれんたんですか! 仕事から帰ってきたら売れていたなんて嬉しいですね! 1枚で1万1000Gの粗利になるので、苦労して運んだ甲斐がありました。

しかしアンタよくそんな格好で剣を振るえるわよねぇ。休憩中に着替えろとは言わないけど、そのスタイル見せられるとなんか悔しくなってくるんだけど。

いったん慣れてしまえば、仕事着として悪くないなぁって思います。この特注バニースーツを身に付けたら、これから講義なんだっていう気分にもなりますし。

仕事着として悪くない? ハイヒールだと戦闘行動を取るのは辛いだろう、どう考えても。

そうでもないんですよ。私も前は、ハイヒールで剣を振るうのはよくないと思い込んでいました。実際最初はとても苦労しましたけど、でもバランスを取るために懸命になってみると、これは私にとっても修行になるんじゃないかって。そのことに気づかされて以来、私も教えながら学んでいるようなものなんですよ。おかげでいつもの革靴に履き替えると、剣を打ち込むときの腰の据わり方が、さらに安定したように感じるんです。

ほおお、ハイヒールにそんな効用があっただなんてな。向上心があるヤツは違うねえ。

勇者は向上心一本槍でここまで強くなったようなものだからな。毎日たゆまぬ努力を継続すれば、やがて魔王すら倒せるという良い見本だろう。俺みたいな普通の人間には、そのたゆまぬ努力っていうものが難しいんだがな。

素質の私、向上心の勇者というわけか。しょせん向上心だけじゃ、真正の天才には敵わないということね。

はい、異存はございません。

僧侶さんはあらゆる生命存在のなかで歴史上最強なんじゃないかなって思います。

魔王より、むしろ僧侶を封じ込めるべきか……。

ところで勇者のバニースーツ、ちょっとボロボロになってきてないか? そのせいで、前よりもどんどんエロさが増してきているように思えるぞ。ほら、脇腹のあたりとか、破れる寸前じゃないか。

大事なユニフォームなので、毎日夜には洗って、次の日の講義前には着替えてってやっていましたから、ヨレヨレになってきましたね。丁寧に扱っていたんですけど、そろそろ限界でしょうか……。

胸の固定具とか、もうかなりヤバくない? そのまま着続けてると、どこかで大変なことになるわよ。

たしかに。ときどき胸を押さえながらじゃないと、危険だなって思ってたんです。戦士さん、この機会に2着の追加発注をさせてもらってもいいですか? 高い衣服なので申し訳ないのですが……。

そりゃあもちろん。重大な商売道具と化してしまったからな。

それと網タイツとハイヒールも2つづつお願いします。ウサミミバンドはまだ大丈夫っぽいですけど、念のため1つをお願いします。次から次に頼んじゃってゴメンなさい。

すぐに仕入れるよ。今晩中には発注するから、数日だけ待ってくれ。サイズはもう測ってあるから、同じ縫製屋に頼めば少しは安くなる。

武器講座事業は完全に軌道に乗ったみたいだな。まぁ成功してるのは主に勇者のほうだけで、僧侶のほうはほとんど受講者がいないみたいだけど。

ふん、今に見なさい。召還術はあらゆるケースに応用できる万能な魔法なのよ。低級ゾンビからはじめて、やがてはアークデーモンとか、ドラゴンゾンビとか、巨人兵とかを呼び出すくらいになってこそ面白いのよ。それが理解できない庶民風情は根こそぎ滅ぼしてやろうかしら。

まったく、どっちが魔王なんだ……。

庶民はゾンビ一体を維持する魔力を捻り出すのすら困難だっていうのに、そんなもん召還できるはずもないだろう。もう少し身近な魔法でも教えたらどうなんだ?

私の白魔法講座もかなり人気ですよ。とくに、お子さんを通わせたがる親御さんたちが多いんです。僧侶さんも面倒がらず、白魔法の基礎技術を教えるといいと思います。

白魔法なんて珍しくもなし、今さら私自らが教えられるものですか。どうせなら、もっと世界と戦えるようなものを教えたいじゃない?

世界を滅ぼすつもりかよぉ……。

白魔法にだってホーリーブラストとか、セラフィックヘブンとか、大魔法に匹敵するようなものがあるだろうにさぁ……。

講座が上手くいかなくちゃ意味がないじゃないか。だから仕事ができないって言われ――

は……?(威圧)

い、いえ……僧侶先生ほどの偉大な仕事人は見たことがないなぁ……ははは。

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