勇者の武器屋

第七話 頭取出現

エピソードの総文字数=1,283文字

……せっかく始めた私のお店が……。

…………。

……い、いらっしゃいませぇ……。

でもごめんなさい、良い商品は持っていかれてしまいまして……残っているのは廉価品と、私の装備品くらいしかないんです……。

フフ……。

私の装備は中古品になりますが、なかなか手に入らない一品なんですよ……。どうか、買って頂けませんか……?

ククク……勇者よ、いいザマだな。

え?

貴様の落ちぶれきった姿を見るのは実に小気味よい。

……なっ!?

あなたは………………魔王さん!?

クククククク、勇者よ、そういきり立つな。たしかに私は魔王だが、今日は魔境銀行の頭取として訪問してきたのだ。

頭……取……?

やはりドジな女だ。貴様は確かに超一流の戦闘力を持っているのは間違いない。だが、社会経験があまりにも未熟すぎた。私の描いた絵図に上手くハマりこんでくれたよ。

そんな!

このペテンを仕組んだのは魔王さん!? 騙したんですね!

恨むなら、自らの無能を恨むんだな。さて勇者よ、我が行への返済期日が差し迫っておるぞ。返済できなくばその身体まで切り刻み、心臓まで売り払って回収させてもらおう。

ここであったが百年目です……!

私がどれほど悶え苦しんでいるか、その身で思い知ってください!

なっ!?

このような場所で剣を取るとは、なんという無法者!

私は今ほど自らの剣に魂を込めようとしたことはありません!
覚悟してください、聖剣グランド――

まっ、待て勇者よ!

犯罪者になりたいのか!?

魔王さんを倒して、なぜ犯罪扱いされるというんです!?

この国ではな、生きとし生けるものすべての権利が、憲法および法律で強力に保護されておるのだ!

私のような魔族出身者も、貴様のような人間もいささかの変わりなく、等しく同様に法によって守られている。健全な市民生活を送っている私を、その剣で傷つけてみよ。犯罪者になって追われるだけだぞ。ましてや債権者である私を殺そうものならば、凶悪犯として死罪に処せられても文句は言えまい。

!?

剣を収めるのだ勇者よ!

私は健全な一市民として、貴様が無慈悲に振りかざす限りない暴力と断固戦うつもりだ。なんという正義……なんというドラマ性……。私のこの平和と理想を求める戦いは、多くの市民たちの間で長く語り継がれるに違いない。たとえここで私が打ち倒されようとも、それを目撃した多くの市民たちは勇者の悪逆非道を語り継ぎ、やがて法が貴様を裁いてくれるであろう。私を闇討ちするにしても、貴様はあまりに有名すぎる。

正義が魔王さんにあるというのですか!?

もともと魔界の兵を使って動乱を起こしたのは、魔王さんだったじゃないですかぁ!

魔界の法によれば、強い者が正義。それゆえに魔界でならば、貴様にはこの俺を倒す権利があったのだ。しかしここは人間界、そして文明が最も進んだヴァレンシア王国内であることを思い出せ。人間界においてこの私は、大資本家という顔も持っているのだよ。貴様にとっては債権者というわけだ。

う、訴えてやるんです!

好きにしろ。法的に、裁判で貴様が勝てる見込みはほとんどない。

フハハハハハ、実に気分がいいぞ。このまま死ぬまでのたうち回るがいい!

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