『みじょかもんの祈り ー 心の貧しい人は幸い? ー』

01. 「期待の実習。第3段階」

エピソードの総文字数=1,165文字

2011年の夏。

介護福祉士カリキュラムの実習は、最後の第3段階を迎えた。
第2段階と同じ施設である。
期間は20日間。

朝8時に始まり、夕方6時まで実習を行う。

第3段階は、今までとは違い実際に「介助」をする。
施設や職員さんに対して、一度経験しているので慣れている。

朝、出勤すると最初にすることは、高齢者の方々をベットから車椅子に移乗させることだ。
職員の方の監督のもとで、寝ている高齢者の方に体を寄せ、テコの原理などを使いながら体を動かす。
そして、起き上がった方の腰の服を掴み、背中に手を添え、腰を入れて車椅子に座らせる。
一回に4、5人こなす。
この移乗で腰を悪くする方も多い。

車椅子に乗った方々を、ご飯を食べるフロアへ連れて行く。
配膳し、準備ができた方から、ご飯を食べる介助をする。
できるだけ、自分の力で食べるよう手に箸やスプーンを持たせ、促す。

麻痺で手が動かない方には、介護者が食べさせる。
口の中に入れても、咀嚼(自分でものを噛み砕く)ができない方のご飯は、ミキサーにかけペースト状にする。
だから、食べ物は、ドロドロである。

体験ということで、実習生もペースト状のご飯やオカズを食べさせていただいた。
トンカツやお味噌汁とご飯を、それぞれミキサーにかけ、とろみ剤を入れたものを食べた。
当たり前だが、味はそのままである。

まず見た目に抵抗を感じる。
器に乗ったものは、色のついた液体である。
食べるとドロっとした感触と風味が口いっぱいに広がる。
正直、気持ち悪かった。
管理栄養士の方が実習生に教えて下さったのは
「普段、噛み砕いてものを食べることの有り難みと高齢者の方が普段食べているものを知った上で、食事介助をして欲しい」
ということだった。

私たちは、普段、何も考えず食べる。
そして、歩き、ものを動かす。
それが、どれだけ有難いことかも感じずに。

スプーンですくったペースト状の食べ物を、 自分の力で噛むことができない高齢者の方の喉の奥まで入れる。
すると「ゴクッ」と音を立てて飲んでくれる。
この音を聞いてから次のオカズをすくうのである。

食後は薬を飲んでいただく。
錠剤を普通に水では飲めない方は、ペースト状の食べ物に混ぜて飲んでもらう。

食事が終わったら、自分のベットへ戻る方もいれば、フロアでテレビを見る方もいる。
食事だけで、朝、昼、晩繰り返すのだから、介護福祉士さんが腰を悪くするのは無理のない話だ。

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