もしも敬虔な女子高生が〈神は死んだ〉のニーチェ作『ツァラトゥストラ』を読んだなら

『背面世界論者②〜それってビョーキ!?』【R14】

エピソードの総文字数=2,505文字

前回に引き続き、背面世界論者、つまり神を信じる者についてのツァラトゥストラの語りである。前回のまま、小早川栞理(こばやかわ・しおり)の選んだツァラ本、中公文庫、手塚 富雄 訳『ツァラトゥストラ』から読み取っていくとしよう。

【注意】

なお、本エピソードには少々大人向けの表現がはいってしまっている。

やばそうかな? と思ったら周囲の大人の人にこの先読みすすめてよいかの判断をおねがいしてくれたまえ。

また、読んでも「さっぱり意味わかんな〜い」という健全なお子様は、そのまま意味がわからないまま読んでいただいて結構である。だが、本作によって大人の階段をのぼるような結果を招いても、キャラクター一同と著者は一切責任を取れないのであらかじめご了承願いたい。

 わたしは快癒(かいゆ)した。いま、このような妖怪を信じようとするなら、それはわたしには苦悩であり、呵責(かしゃく)であろう。苦悩であり、屈辱であろう。わたしは背面世界論者にむかって、そう告げる。
「う〜。えーっと、神さま妖怪を信じるのは病気ですってことですかあ?」
「そうだな。ツァラ殿はその病気から快癒したわけだ。そして、いま妖怪を信じようとするのは苦悩であり屈辱だと言っているのだな」
「さすが、といっていいのかしら……。神さま嫌いっぷりがすごいですわね」
「まったくぶれていないね」
 苦悩と無能ーーそれがすべての背面世界を(つく)り出したのだ。またもっとも苦悩する者だけが経験するあのつかのまの幸せの妄想が、それらの背面世界を創り出したのだ。
「苦悩はいいですけど、無能ってなんだかまたひどくディスられているような……」
「神という病理を作り出すのは無能者だということか。苦悩は創造の苦しみだろうな」

「ひどーいー」

「苦悩するものが経験するつかのまの幸せってなんでしょう?」
「ううー、悔しいけどそれ、ちょっとわかります……。真夜中に書き上がったときの『できたあ〜!』ってやつだと思います。すんごい幸せなんだけれど、朝になって読み直したら出来がひどくて『ガーン』ってなっちゃうやつ。深夜テンションってやつですきっと……。」
「なるほど。創造の苦しみにはそうした快感がついてくるというわけか」
「苦しみ和らげるようになにか脳内物質でも分泌されているのかもしれませんわね」
「脳内麻薬かな?」

「痛いのが快感になっちゃうアレですわね。

 ひとみちゃんはその快感が大好きなのね」

「えー! やだー!

 わかるけどわかりたくないい〜」

「はははは。そう考えると次の言葉もちょっと意味深かもしれないな」
 ひと飛びで、決死の跳躍で、究極的なものに到達しようと望む疲労感、もはや意欲することをさえ意欲しない疲労感、それがあらゆる神々と背面世界を創りだしたのだ。
「えーっと……。苦しいのから決死の跳躍で……」
←(かんがえている……)
←(かんがえている……)
←(エロい考えになってしまった!!)
「きゃーー!! なんだかえっちぃなかんじです!!」
「あらあら、うふふふ」
「深読みしすぎな気もするが、そう読み取れないこともないなあ」
「意味深なんていうからですよーぅー」
「次も微妙にそんな感じがしないこともない文面かもしれないなぁ」
 現世のわれわれの肉体に絶望したのは、現世のわれわれの肉体そのものであったのだ。ーーそれが混迷(こんめい)した精神のかぼそい指を使って、いや果ての壁へと手探りをこころみたのだ。
「肉体……かぼそい指を使って……壁を手探り……」
(ぼっ)
「何を考えているのかなこの娘は……」
「もぅ、栞理ったらエロオヤジみたいな顔してますわよ?」

 大地に絶望したのは、われわれの現実の肉体であったのだ。ーー存在の「腹」の語りかけを聞いたのは、われわれの現実の肉体であったのだ。

 それで肉体は、頭で、いや果ての壁を突き破りーーいや、頭だけでやったのではないーー、「あの世界」へ移ろうとしたのだ。

「うーー、ツァラさんえっちすぎ!!

 なんかもうそういう話にしかよめませんよぅ、壁を突き破りとか、頭で考えてただけでなくて、肉体が『腹』の語りを聞いたとかあ〜」

「そう言うふうに読み取るからそう読めてしまうのだよ。ここで注目は『あの世界』じゃないかな?」
「快感の先の世界ですわね」
「きゃーー!!」
「いやだからそうではなく……」
 「あの世界」、人間から離れた非人間的なあの世界、あの天上の無は、人間にはうかがうすべものあく隠されている。そして存在の「腹」は、人間的な現れ方をしなければ、けっして人間に語りかけることはないのだ。

「やっぱそう読めますよぉ、カ・イ・カ・ンのあとでイっちゃう世界……!!

 きゃーきゃーきゃーきゃーー!!」

なにを想像してか、ジタバタと手足を振り回すひとみであった。
「こらこら、ちょっとは冷静になりたまえ!」
 まことに、あらゆる存在は証明しがたく、語らせがたい。だが、兄弟たちよ、あらゆる事物のうちで最も奇妙なものが、最もよくその存在を証明されているではないか。
「ツァラ殿さんもカ・イ・カ・ンの先は証明できない語れないっていってますぅ」
「でも、最も奇妙なものが最もよく存在を証明っていうのは何ですの?」
「まったくもう。そこから離れられないならしかたないな、ひとみ君の理屈に乗るとしようか……」
「はい?」

「その、なんだ。

 えーと……

 (照れるなあ)

 カ・イ・カ・ンの後で、生まれるものは何だね?」

「え? 生まれる?」
「そう、生まれる……」
「そ、それって……?」
(ぼっ)(赤面)
(赤面)
(赤面)
 そうだ。この我、そしてその我の矛盾と混乱とは、その奇妙さにもかかわらず、もっとも率直にみずからの存在を語っている。いっさいの事物の尺度であり価値であるところの、創造し、意欲し、評価を行うこの我は。
(赤面)

 女子高生三人組のえっちいな読み取り方が正しい解釈であるなどと語るつもりはないが、なかなかどうして、本質的な点をついているのかもしれない。すくなくともそう読めてしまうことはたしかである。


 これはやはり、発禁に値するのかも? などと愚考してしまう吾輩であった。


 背面世界論についてはまだまだ続く!

<つづく>

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