退魔天使は聖夜に踊る ~復讐の乙女~

【12】人外兵とは、すなわちバケモノ

エピソードの総文字数=1,877文字

 また冷えてきたな、と思ったら粉雪がチラついてきた。

 寒さでケモノの活性が下がってくると、発見しづらくなる。
 こういう時は、てきとうに小物を捕まえて、むぎゅ~~~~っと爆ぜない程度に握るんだ。そうすると、プキャ――ッとひどく耳障りな悲鳴を上げて仲間を呼び集めるから、その習性を利用する。

 ……というわけで、俺が早速小物を捕まえようと思ったとき、

「おう、やるぞー」
 と吉富さんが、長い竿のようなものをみんなに配っている。

 何に使うんだろう?
 ちなみに俺はケガしてるから竿はナシだそうだ。

 皆に竿が行き渡ると、おざなりにバリケードで囲われた区画に全員入っていった。
 バリケードといっても鉄パイプと鋼板で出来た背の低いもので、大人なら跨いで入れる程度だから、小さくて高い所に上れないような異界獣でもなければ防ぐことは出来ない。
 おまけに、中は資材置き場になっているみたいで、バリケードの一部には日常的に開閉された形跡があり、あちこちに隙間が出来ている。俺は地主の神経を激しく疑った。

(えええええええええええええええええええ――――――?????)

 こいつら、なんて非効率的な狩りをしてるんだ!

 俺は自分の目を疑った。
 囲いの中に入ると、吉富組のみんなは驚くべき行動を始めた。信じられないことに、彼等は揃って、竹竿で資材の物陰をつっつき始めたんだ。

「あのー……」
 俺は、遠慮がちに吉富さんに声をかけた。

「なんじゃー少年。今忙しいんだが」
 ポリタンクを積み上げたパレットのあたりを突っつきながら吉富さんが応えた。

「これ、けっこう効率悪そうですねえ……」
「ああぁ? 何か文句あるみたいだなあ、ん?」
「いや、おびき寄せればいいんじゃないかなあと……」

 吉富さんが手を止めて、俺を見た。
「おびき寄せる? どうやって」

 俺は死角にいた、モルモットくらいの大きさの異界獣を捕まえた。
 黒っぽくてトカゲのような足が四本生えていて、胴体はゴム風船のように丸く手触りはブニュっとしている。
 食うと不味い。

 俺は吉富さんの目の前で実演してみせた。

「こうするんです」

 むっぎゅうううううううう――――ッ!
 俺は、爆ぜないよう注意しながら、そいつをぎゅっと握りしめた。


『プキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――――ッ』

 辺りにひどく耳障りな鳴き声がこだました。

 俺が美声を披露したら、ミソもクソも集まってしまうけど、この方法なら一種類だけ集まってくれるから安全なんだ。

「な、何してんだ! そいつ仲間を呼ぶんだぞ!」

 吉富さんが血相を変えた。
 周りのメンバーも竿を放りだして銃を構えた。

「マズい! 囲まれるぞ!」
「ファッキン!」

 みんなひどく周囲を警戒している。
「ん? なに慌ててるんです? 棒なんかでつっつくより早いじゃないですか」

 ぞわぁっと異界獣の集まる気配。
 臭いも濃くなってきた。俺は銃を抜いた。

 一分もしないうちに、小波のように黒い異界獣がゾロゾロと押し寄せてきた。
 さあ、ボーナスステージだ。

「来ましたよ!」

 俺は片っ端から弾丸をブチ込んで、ケモノたちを粉砕し始めた。
 水風船のように内容物を撒き散らしながら爆ぜる小さなケモノたち。

 不思議なことに、ケモノを潰す度に薬品のような臭いが漂ってくる。
 しかも、近くで見ると体表にはうっすらとカラフルな色までついている。
 普通は黒っぽい連中なのに、一体この街のケモノはどうなってるんだ?

 まあいい。

 俺は、そろそろ弾がなくなりそうなので、腰から下げた電磁ウィップに持ち替えた。ヒュンと耳障りのいい音をさせながら、次々とケモノに先端を打ち込む。

 ……あれ? みんなオロオロしてるばかりで動かない……

「ど、どうするんだこれ! キリがないぞ! く、食われる!」
「ぎゃあッ、足に食いつかれた!」
「クソッ」
「なんてことしやがんだ、クソッタレ!」
「ど、どこにいるんだ! うああ!」

 何故か吉富組の皆がパニックになった。
 この程度の小物、何でそこまで慌てるんだ?

 ロクに抵抗出来ないまま、みんなが襲われている。
 何故?
 何故なんだ?

 ………………あ!

 ――こりゃヤバい!

「動かないで!」俺は叫んだ。

 みんなの足に纏わり付いている細かいケモノをウイップではたき落とし、周囲に群がる連中も次々と叩き潰した。

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