黄昏のクレイドリア

17-1

エピソードの総文字数=1,507文字

…………。

雨粒を受けながら、

目的の碑石の前に立つ。

そしてかつての日々を

思い出すようにそっと石へ手を触れた。

(エルドと、にーちゃんと……

 一緒に遊んでたときは楽しかったな。


 エルドはおれたちにも

 優しかったし、薬草のこととか、

 色んなことを教えてくれて……、

 にーちゃんも、今みたいに

 怖くなくて、優しくて………) 

もう、戻ってこないのかな……

(じー)
……………
うわぁああっ?!!

よー、ガキ!


こんな雨の中でわざわざ

一人寂しーく、石なんか眺めて

どーしたんだよ?

がっ、ガキ言うな!

おまえもガキだろ!

なっ……!


…………じゃなかった、

オレはガキじゃないからな。

ガキの挑発には乗らねー……

(このガキ…………)

……で、

その碑石が

そんなに大事なのか?

!!

いや、別に…………

ふーん?

(おれだってわかんないんだ。

 なんでフランツにーちゃんが

 この石に拘るか…………


 というか……)

おまえ、元気になってたんだな。


だったら……、おまえこそ

おれに構ってないで、

さっさとこの村から

逃げた方がいいんじゃねーの?

そーしたいのは山々なんだが、
!!

生憎、オレを助けてくれた

仲間が捕まっててなー。

助けに来ておいて助けを求めるとか、

ほんと手がかかるっつーの。

あっ…………

先ほどまでの親しげな

雰囲気とはうってかわる、

相手の纏う空気の変化に

気づいた少年は、思わず後ずさる。

だからさ、散々お前を捲し立ててた

主犯のにーちゃんが気にかけてる

その碑石ってのが、オレも気になって

しょーがないんだよ。

おまえ、何か知らない?

う、…………

いつの間にか距離を詰められ、

互いの眼が間近に合い、エンは硬直する。

こちらを射抜かんとした鋭い視線に

すっかりすくみあがっていた。

(こいつ……、何て眼をするんだ。

 おれと同じ子どもかよ……?!)

………………。

あー、ダメだダメだ!

こいつホントに

何も知らなそうだぜ、ディーン。

そうみたいだな。


……それと、あんまり

いじめるんじゃないぞセシル。

へいへい

!!


(さっきの優しいおにーさんだ!)

セシルはエンの肩から手を離すと、

茂みから出てきたディーンへ

怪訝そうに口を開いた。

でも、どーするんだよディーン。

なんか村の連中はいかにも"火刑!"

ってかんじに薪とか運んでるし……


つっても、この雨の中じゃ

火がつくとは思えねーけど

そ、それ!

おれも思ってた。


エルドならまだしも、

にーちゃんが火の魔術を

使えるとは思えな……

エルドって誰だよ

……え、エルフの友達だよ。

でも……、魔術師たちに

森ごと焼き殺されたって、

にーちゃんは言ってたけどな。

エルフって……耳が長い、

あの”エルフ”かよ?


それに森ごとって……、

そいつらが集まってる

集落でもあったってことか?

な、なんだよ?

森を一つ見たらエルフがそれを

守護してると思えって……常識だろ?

いやいや、

エルフが存在してること自体

眉つばモンだってのに

そんな常識知らねー……


なぁ、ディーン?

…………………。

もしもーし、

聞いてますか~。

ディーンさんよー。

ぃでっ、

あ、あぁ。そうだな。

俺も聞いたことはないかな。

………………。

とはいえ、きみが

この場面で出鱈目な嘘を

つく必要性があるとも思えない。

とりあえず、事情はわかったよ。

……が、いくら加害者が

憎いとはいえ……俺達も勘違いで

殺されるわけにもいかない。

そーいうこった。

つーわけで、オレ達がカノンたちを

助けるまでお前人質な。

ひ、人質?!

あぁ、そんなに怖がらないで。

もし、君のおにいさんと交渉が可能なら

君を交渉材料に使うってだけで、

君に危害は加えないから……。

(それ人質だろーが!!)

村の奴らに

チクりにいったらころすからな。

いかねーよ………。
(おれの人生、ずっと

 振り回されっぱなしなのかな…………)

◆作者をワンクリックで応援!

0人が応援しました。

◆コメント欄は未記入でもOK! 公開されないのでお気軽に。

ページトップへ