【1/12】ダンゲロスSS(86)高波一乱VSヤドナシ

ヤドナシ

エピソードの総文字数=4,826文字

ここはヤドナシさんの執筆スペース!
悪戯したら泣いちゃいますよ!
くっくっくっ……あんたか、この辺りで一番強いと噂される魔人は? 中年のくせになかなか鍛えられた体だな。
おや、私に待ち伏せですか? そういうあなたも、さっきからただならぬ雰囲気を感じますね……見た目はただのひょろいインドア系男子ですが……何か力を隠しもっている?
ああ……俺もあんたと同じく魔人の一人だ。悪いがあんたのこと、ここで潰させてもらう。
突然の宣戦布告、ですか……何かわけでも?
わけなどいるか? 俺はただ、あんたみたいに努力でその道を極めたっていう武術家が嫌いなんだ。あんたらを倒して、俺こそが何でもできる魔人だと証明してやる!
ふむ……自分こそが選ばれし者だとで言いたげな顔つきですね。いいでしょう、私も戦う相手は選びません。その勝負、受けて立ちます。
あんたの誠実そうな顔つき、そう来ると思ったぜ……言っておくが、俺はあんたが長い時間をかけて努力してきた成果を一瞬で得ることができる。万に一つも勝ち目はないぜ?
ほほう……面白いことを言いますね。ならば私も先に教えておきましょう。私の能力はイエローシップオペレーション……一度手にしたバナナであれば、自由自在に操ることができるのです。こんな風にね……!
言い終えた瞬間、松野はベルトに刺した数本のバナナを取り出し、鮮やかに一瞬で皮をむいてみせる。

yomogi

まずはこちらからです、バナナ・スプラッシュ!
うっ、なっ……何だ!?  視界が真っ白に!
バナナ・スプラッシュ……それはバナナを片手で握りつぶし、果汁を噴射する技である。粘り気がある果汁は相手に不快感を与える他、目潰しにも使えるのだ。

yomogi

バナナの果汁は一度つくとなかなか落ちません。厄介でしょう?
この……一瞬驚いたのは確かだが、果汁が飛ばせるくらいで得意になるな! 喰らえ、グラシッーズ・ブーメラン!
ひょろい青年……志門の放り投げたメガネが恐るべきスピードで中年男性、松野に襲いかかる!

yomogi

おっと……! あの状況から瞬時に攻撃をかましてくるとは……しかも……あの青年、メガネをブーメランのように手元に戻した!?
ふはははは……この程度の投げ技なら、寿命一年分も消費しないな。あんた、イエローシップオペレーションなんて洒落た名前、自分の技につけてるが、結局はただバナナを操れるだけ……何でも可能な俺を前に、いい気になるなよ!
どうやら、喋ってる間にバナナが持つ最も基本的な特性をお忘れのようですね……私が思い出させてさしあげましょう。バナナ・トラップ!
うおっ、いつの間に足元へバナナの皮が! くっ、ここで滑ってたまるか……!
バナナ・トラップ……その名のとおり、バナナの皮の滑りやすい特性を活かし、敵に踏ませて横転させるトラップである。バナナユーザーにとって最も基本的な技だが、それゆえに攻撃を読まれやすく、このように一瞬で避けられやすい。しかし……!

yomogi

なっ……避けたはずのバナナの皮が……自ら足下に入ってくるだと!?
忘れたんですか? 私はただのバナナユーザーではありません。バナナに愛されし魔人なのです……手元から離れたバナナを動かすことなど朝飯前!
ふっ……なんて驚いたかと思ったか?  動くと言っても、所詮はただのバナナの皮……俺の能力でこうしてやる!
吐き捨てるようにそう言うと、志門はバナナの皮に向かって自らの唾を吐きかける。正確に打ち出された唾の塊は、バナナの皮を衝撃で遠くに吹き飛ばしていた……。

yomogi

何!? バナナの皮が……みっ、見えなかった!
これぞ修行の末に得られる成果……寿命三年分ってところか。悪いが、俺の唾はまだまだ止まらないぜ!
志門の口から次々と射出される唾の塊が、松野の身を襲う!  素早く身を翻した彼は、ベルトからさらに数本のバナナを取り出した。

yomogi

これは驚きました、口から打ち出した唾を弾丸並みの速さで飛ばすとは……ならば、私も迎え撃ちましょう。バナナ・アタック!
無数のバナナが志門に向かって放たれた……ように見える。しかし、実際には4、5本のバナナが投げられただけ……そう、バナナを放った松野の手があまりにも速すぎたため、常人には大量のバナナが投擲されたように見えたのである! 

yomogi

はっ! 大声で叫んだわりには、ただまっすぐにバナナを投げてきただけか……眼鏡をかけていたからって油断したな。俺の動体視力は既に寿命4年分を消費して極度に高められている。4、5本のバナナがストレートに飛んできただけってことは分かっているんだ!  こんなもの一気に払い落として……って、何!?
志門がバナナを叩き落とそうと構えた瞬間、松野の放ったバナナは急に方向を変えて飛んできたのだ!

yomogi

どうやらさっきから聞いていると、あなたの能力は自分の寿命を消費して即座に筋力や技術を習得してしまう力のようですね……しかし、私は長年本当の鍛錬を積んできた身。先ほどのあなたが見せたグラッシーズ・ブーメラン、真似させてもらいましたよ!
バシンッ!   くっ……あいつめ、ただバナナを投げつけてるだけかと思ったが……まさかブーメランのように軌道を変えてくるとは!   俺の動体視力と反射神経がもう少し鈍かったらヤラれていた!
おっと、叩き落としただけで満足してしまいましたか?
何?   なっ……!   俺の足元にバナナの皮だと!?
そう、いつの間にか志門の叩き落としたバナナは地面で皮だけとなり、彼の足元に滑り込んでいたのだ!

yomogi

しまった……これは、バナナ・トラップ!
バナナ・アタックは、本来バナナそのものを投げつけるだけのシンプルな技である。しかし、バナナユーザー上級者ともなれば、ご覧のとおり対象にバナナを当てた瞬間皮がむけるように仕込み、そのままバナナ・トラップへと転じさせることができるのだ。

yomogi

うっ、うわぁああああああ!
まんまと松野の罠にはまった志門は、バナナの皮に滑って数百メートル先へと滑っていく……おそるべし、バナナ武術!

yomogi

おのれ……俺を本気にさせたこと、後悔するなよ!
怒りを露わにした志門は、一気に10年分の寿命を消費する!   その瞬間、彼の体から蒸気が吹き出し、モリモリとした筋肉が露わになった。

yomogi

うがぁああああああ!
強烈な地団駄で地面を揺らし、その反動で松野の元まで一気に舞い戻る!   あまりの衝撃に、松野も焦った。

yomogi

こっ、これはまずい……いくら私でもあんな攻撃が当たれば身がもたない。ここは一度引きましょう!
はっ、逃すとでも思ったか! お前ごときの速さでこの俺の全力から逃げ切れるとでも! 寿命10年分だぞ、10年分!!
ぶっとくなった志門の両腕から殴打のラッシュが松野を襲う!   しかし、松野はバナナ・スプラッシュによるバナナの果汁によって自らの体をヌルヌルにすることで、それらの殴打を絶妙に滑らせ、衝撃を和らげていた!

yomogi

くっ……はっ、速い! さっきとは比べものになりません!
この攻撃からお前が逃げ切れることなど不可能、諦めて潰されろ!
そういうわけにはいきません。こうなれば……バナナ走行!
なっ、何!? あいつの体が急に高速で滑り出した……? いっ、いったい何が……!
バナナ走行……それはバナナ・トラップを応用した移動方法である。滑りやすいバナナの皮に足を乗せ、大地をスライドして高速で駆け抜けるのだ。ただし、思ったとおりの方向へ進むには相当な集中力を要し、一歩間違えれば自ら滑って転んでしまいかねない非常に難易度の高い技である。

yomogi

まさか、自らバナナを踏んで移動に用いるとは……お前のことを舐めていたようだ。しかし、これだけ高速での移動……精神も体力も相当消費する技のはずだ。いくらお前でも、いずれ体力が尽きる!
くっ……確かに、この技はバナナの皮の摩耗も激しい……逃げ回ってばかりではいられませんね!
むっ、来たか! 覚悟しろ、松野!
望むところ!
なに?……高速で俺の正面に向かってくるだと!? ほほう……体当たりでの一騎打ちというわけか。いいだろう、受けて立ってやる!
ふふっ……これだけ近づかれる前に、もう少し目を凝らすべきでしたね。
はっ、お前まさか!? 罠か!
奥義、バナナ・スライサー!
ぐっ……がっ!
松野が志門にぶつかる寸前で繰り出したバナナ・スライサー……この技は、バナナ・スプラッシュの高度な応用技である。両手でバナナを一気に握りつぶすことにより、果汁を高圧で射出する。その果汁は厚い鉄板をも切り裂くという……ただし、射程距離は20センチと短く、バナナを握りつぶす一瞬しか発動できないため、一度使えば同じ相手に二度通用する技ではない。

yomogi

くそっ……体は無傷だったが、万が一に備えて着ていた防弾チョッキが真っ二つに裂かれてしまった……
……まさか防弾チョッキを着ているとは……予想外でした。
さっきは油断してしまったが、もうお前にその技は使えない。どうする、松野!?
おっと、お口が開いてますよ! バナナ・ポイズン・ショット!
ふごっ! ふがががががっ!
真っ二つになった防弾チョッキを脱ぎ捨て、志門が松野を振り向いた瞬間、その口に実の熟してないバナナが大量に投げ入れられる。

yomogi

くっ……これは!   たかがバナナと思って飲み込んだらダメだ! すぐに吐き出さなければ!!
あまり知られていないことだが、バナナの中には実が熟すまで毒を保有する種類もある。バナナ・ショットはその実を敵に向かって投げつけ、無理やり食べさせるバナナ・アタックの応用技である。当然、狙って呑み込ませることはかなり難しいが、決まれば必殺技となる恐ろしい技だ。しかし……

yomogi

がはっ! ふぅ……もう少しで飲み込んでしまうところだった。この姿を見て、脳筋になっただけだと思うなよ!   俺はもう10年寿命を消費して、知能や知識も成長させたんだ!
まずいですね……まさか、この種の未成熟なバナナの特性を知っていたとは……
その様子……どうやら、お前が手にしたことのあるバナナも底を尽きてきたようだな。
確かに、もう普通のバナナのストックはありません。こうなれば、あのバナナを出すしか……常人に使うにはあまりにも危険であったため、今まで人前に出すことはありませんでしたが……あなたにはふさわしいようだ。
ほう……聞こえるぞ。お前の自宅から高速で飛んでくるバナナの音が……しかし、何だこの音は? 今までのバナナよりも、はるかに重く禍々しい雰囲気が……。
言っている間に、松野の手元に飛んできた二本のバナナが装着される。その美しい黄色い曲線には、綺麗に全体を覆った霜が見える。

yomogi

これを使うのはあなたが初めてです。私の全力、受けとめていただきましょう!
なっ、何だ……見た目はただの凍らせたバナナだと言うのに……何が、何が俺をこんなに震えさせるんだ!?
喰らいなさい、私の……バナナ・ハンマー!
残りわずかな力を振り絞って、松野が全力のバナナ走行で志門に向かって走り出す! 彼の手に握られた二つのバナナ! 迎え撃とうと構える志門! その時、一気に松野の手が振り下ろされた!

yomogi

ゴンッ!

yomogi

重く鈍い音を立てて、大地に一人の体が沈む……立っていたのは……松野であった。

yomogi

マイナス40度……そこまで冷やしきったバナナは、釘を打ち付けることができるほど丈夫になるんですよ。しかし、気絶したとは言え、魔人である私からこの一撃を受けて生きているあなたは……やはり強い。
極度の緊張と疲れから、松野はその場に倒れこむ。彼は自宅の冷蔵庫を改造し、常にマイナス40度に冷やしたバナナを保存していたのだ。もしも、冷やしすぎてマイナス40度を少しでも越えれば、バナナは一気に脆くなってしまう……この技を使うには、絶え間ない努力と正確なバナナの管理が必要なのだ。

yomogi

バナナの重みを知った今のあなたなら……寿命など消費しなくても、何かができるはずです。
去り際、松野が彼の手に握らせたのは、一本の美しい果実……いや、野菜であった。

yomogi

そこまでです!!
完!

yomogi

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