いつかのLip service

12:pink×white

エピソードの総文字数=1,203文字

あーーっ、おもしろかったーー!!
何故か知らない女の人と映画を見ることになってしまった。今は映画が終わって、ぶらぶらと歩いているところだ。
……こういう映画好きなんですね
みずきと見に行こうと決めていた映画は、いわゆるアメリカのゾンビ物映画で、R-15規制のやつ。ゾンビに街が侵略され、たった2人で生き残る話だ。特に、主人公の彼女がゾンビに食い殺されるシーンが丁寧に描かれており、精密さには目を背けたくなった。

血が吹き出るし、気持ち悪いし、女性が好き好んで見る映画ではない。俺もそこまで得意で好きというわけではなかった。

うん、純粋にハラハラしておもしろいし、特にこういう映画って特殊メイクすごくて感心しちゃう
メイクか……あいつも同じこと言いそうだな
あいつ?
今日この映画を見るはずだった奴ですよ、そういえば、貴方とどことなく似ています……それに、服も……この前見に行った時に目をつけてた服と一緒だし
じっと彼女を見た。

似すぎだ……唇とか、俺がかつて見つめていたあのぷっくらで形のいい唇だし、服も2人で見に行ったアパレルショップで選んでいたもの。偶然にしては、色々と重なる。

もしかして――

もしかして……みずきのお姉さんとかですか?
…………
あ、すみません、みずきというのは友達で、貴方に似ていて……もしかして、血が繋がってるのかな、とか
ふっ……ぷぷぷっ……あはっ……
!? な、なんですか
ううん、なんでもない! そう、実はわたしはみずきの姉なの。弟がいきなり来られなくなったからって、映画のチケット貰って来ちゃった
やはり……そうですか

やっぱり、血縁の関係だった。赤の他人というには似すぎていた。

服はきっとみずきからのプレゼントなのだろう。淡いピンクのトップスに、白いフリルのロングスカート。あの日みずきが手に取った服と同じ。あの日はお姉さんへのプレゼントの下見だったんだな。

弟じゃなくてご不満だったかしら?
いえっ! そんなことはないです。むしろ、お姉さんがいたなんて驚きました。
そりゃ実際いねーし……
え?
ううん、なんでも~おほほほほ
ところで、お姉さんの名前はなんと仰るのですか? いつまでもお姉さんと呼ぶのは申し訳ないですし
え……名前……名前、やべえ考えてなかった……ええと、み……みき……
みきさんですか、かわいくていいお名前ですね
うっ……
それじゃあ、私のことは榊とお呼び下さい
うん……わかった
俺がそう言うと、みきさんは一瞬寂しそうな表情をした。

でも、それは一瞬だけで、すぐにその片鱗はなくなる。気のせいか……?

――じゃあ、せっかく出会ったことだし、このまま帰るなんて言わないわよね……?
はい……??
わたしと、もうちょっと楽しみましょ……?

は、はい……

そう、いい子ね
何故かその誘いに即答してしまった。俺らしくもない。

逆らえない何かがあった。そう、いつものあいつみたいな。

もっと、みきさんとの時間を望んでいるのかもしれない。

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