黄昏のクレイドリア

17-2

エピソードの総文字数=1,060文字

<地下牢>


目が慣れ始めた闇の中、

カノンは格子の向こうを見つめながら

脱出のために頭を巡らせていた。

…………。

(あの男は、あたしたちを

 火あぶりにしたいみたいだけど、

 この雨ですぐにそれを

 実行できるとは思えない……)

(武器と所持品は押収されたけど、

 あたしの羽衣の

 アーティファクトを使えば

 なんとかなる……)


(脱出するなら、彼等が別の事で

 気を取られている、今……!)

(でも、問題は……)

――――ッ、
黙れ、いい加減にその口を閉じたらどうだ

俺はそんなことは望んでいない考えていないお前の考えを押し付けるな

(さっきからずっと、

 この調子のイーリアスね……。)

頭をおさえたまま、

延々と一人で空虚へ向かって

言葉を発し続けるイーリアスを、

カノンは不安げに伺っていた。

(今までの状況から考えれば、

 魔力欠乏による禁断症状、か。


 だったら――――)

イーリアス。
…………。

今は上にも人の気配はない。

あいつら完全に、あたしたちを

丸腰にして高を括ってるわ。

…………そうか

あたしのアーティファクトを使えば

これくらいの鉄格子は風で切断できる。

此処を出るなら今がチャンスよ。

だからあんたはさっさと――

要らない
は?
魔力供給は……必要ない。
イーリアス……

あんたが今さらどーして

意地を張ってるかは知らないけどね……、

そんなになるほど魔力が必要なら、

あたしから魔力を得るのが

あんたの契約の筋ってもんでしょう!!

違う!

満月はだめだ、”あいつ”が来る。

そうしたらお前は――――

!?
…………。

噛まれるのも構わず、

カノンはすかさず相手の口内へ

血濡れた指先を突っ込んだ。


咄嗟に自傷した指の傷に眉をひそめながら、

気を紛らすように言葉を発する。

少しは思考が戻ってきた?
…………。

観念したのか、指先から

流れているだろう血潮を舌で掬い始める。


やはり先ほどまでの錯乱状態は、

魔力が不足していたことが原因だったのだ。

それが分かっただけでも、カノンは少し安心した。

(……よかった、

 多少は大人しくなった。

 これでようやくまともに話が――)

……痛ッ!!

安堵したのも束の間、

傷口に先程までとは異なる痛みが走る。

その動作は"血を得る"ためのものではなく、

"傷を抉る"ものだった。

ちょっと、イーリアス――

魔力供給は指先よりも

首のほうがいいって、

こいつは言ってなかったか?

!!

顔を伏せたままの

イーリアスの表情を知ることはできない。

しかし、普段とは異なる

妙に語調の強い彼の言葉に、

カノンは嫌な予感が全身を駆け巡った。

寄越せよ、その首を

言うが否か、紅き瞳は

カノンの首元へ喰らいかかった――――

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