アストロン~他人を操れる四駆マシンで自由を手に

開幕! アストロンレース

エピソードの総文字数=5,538文字

 勝獅はレース開催日の一日前、とある場所へ赴いていた。

 病院である。そこで勝獅と同じ苗字の人物の部屋へと入って行った。

2018/01/05 18:55
「よう。親父……」
2018/01/05 19:24
ベッドに寝ている、骨に皮が張り付いたようなゲッソリとした中年男性が勝獅の声に反応する。
2018/01/05 19:24
勝獅父「おお。久しぶり」
2018/01/05 19:26
「明日からいよいよレースが始まる。たっぷり稼いで来るさ」
2018/01/05 19:27
「すまないなぁ。父さん、過労で倒れてしまって……。兄さんの様に過労死しなかっただけマシだと思うべきかもしれんが……」
2018/01/05 19:27
「叔父さんか……。海外へ飛び回っていた人だっけか」
2018/01/05 19:29
「(頷き、)あぁ。兄さんは僕なんかより全然優秀なサラリーマンだった……」
2018/01/05 19:32
「優秀であるが故に酷使されたのだろうか?」
2018/01/05 19:33
勝獅父「恐らくなぁ。悲しいものだよ。まるで兄は企業に使い捨てられるために学を積んだみたいじゃないか」
2018/01/05 19:35
「フ、だがそんな時代はもうじき終わる。アストロンレースによってな。公式レース運営関係者はもとより、市販型マシンでの一般レースも開催し、一定の成績を修めたら賞金が貰える……。ブラック企業に従事しなくとも金を稼げるようになるのさ。クククッ」
2018/01/05 19:36
勝獅父「うまくいけばいいけどなぁ。まぁ、明日のレース、頑張って来い」
2018/01/05 19:38
「言われるまでもない。親父、あんたは今まで十分すぎる程働いた。これからはゆっくり養生するんだな。じゃあな。邪魔をした……」
2018/01/05 19:39
勝獅は病院から去った。その後、路上を歩きながら険しい表情をする。
2018/01/05 19:40
「作ってやる……。人が人らしく生きていけるまともな労働環境を……。そして、俺自身犠牲になることなく、楽しく生きていける未来を……」
2018/01/05 19:41
獅子座の青少年は拳を篤く握った。秘めたる熱さを滾らせているかのように……。
2018/01/05 19:43
 新設されたギャラクシーサーキットには人々が集まり、賑わっていた。そんな中、麗羽は単身、この場に赴いていた。


2018/01/01 20:12
「あわわ。来ちゃったよぉ~」
2018/01/01 20:13
??「おや? 君もアストロンをお持ちのようで」
2018/01/01 20:13
2018/01/01 22:46
2018/01/01 22:46
「えっ?」

 振り向いてみると、メガネの青年とお嬢様風の女の子がいました。

2018/01/01 20:14
「ファーストコンタクトの証にマシン同士が輝き、共鳴していますわ」
2018/01/01 20:15
「はじめまして。僕は半田秀仁(ハンダヒデヒト)。天秤座のレーサーです」
2018/01/01 20:16
「わたくしは高水更雪(タカミサユキ)。水瓶座ですわ」
2018/01/01 20:17
「北条麗羽です。乙女座のマシンを持っています……。お二人は知り合いなのですか?」
2018/01/01 20:18
「いえ。さっき出会ったばかりです。まぁこの場に集まって来て当然でしょう。同類のマシンを持つ者がこんな派手な催し物をするのですから。それが狙いなのかもしれませんけどね。今回のレースに出場する獅子座・射手座・牡羊座のうちの誰かの……」
2018/01/01 20:19
「あ、あぁ……。(多分、光我勝獅くんだろうけど)」
2018/01/01 20:22
「いつまでも立ち話してはなんですわ。観客席へ行きますわよ」
2018/01/01 20:23
 更雪は水瓶座のアストロンを翳し、近くの警備員へと命令する。
2018/01/01 20:24
「VIP席へと案内してくださいましー」
2018/01/01 20:24
 いつも簡単に警備員は操られ、更雪たちをVIP席へ案内しようとする。
2018/01/01 20:25
「(汗)うわぁ。ナチュラルに使っちゃってるぅ~。これがアストロンを持つ人の常識なのかな……?」

 とは内心思うも、一般席よりVIP席の方がイイよねって誘惑に負け、2人に付いて行くのでした。

2018/01/01 20:27
レーサーズユニフォームを纏った勝獅・馬慧・桜華の3人がスターティンググリッドについている。
2018/01/01 22:37
2018/01/17 00:10
実況「さぁ、これより記念すべき第1回アストロンレースをここ、ギャラクシーサーキットで行うぞ。出場選手は3名。百獣の王はサーキット界の王に君臨するのか? 獅子座のレーサー・光我勝獅選手! マシンはカイザーレーヴェン。人馬の如く荒々しい走りをするのか? 射手座マシン・タリアスバリスターダ。レーサーは弓家馬慧選手だ。そして、牡羊座のマシンクラウドスプリンガーを携え、臨むのは紅一点・綾辻桜華選手だ!」
2018/01/01 22:38
「レースは正々堂々やるぞ」
2018/01/01 22:46
「勝獅?」
2018/01/01 22:47
「いきなり何?」
2018/01/01 22:48
「ここまで来るのに、まともではない事もやって来た。そうでもしないと俺たち自身や多くの国民が苦しいままだったからだ。だが、ここからは違う。面倒なことはサッパリ忘れて真面目に遊ぶとしようじゃないか」
2018/01/01 22:48
「へっ、言われるまでもねぇ」
2018/01/01 22:50
「とーぜん!」
2018/01/01 22:51
実況「それじゃあ、レースをおっぱじめるぞぉ! レディー? ゴーッ!」
2018/01/01 22:51
レッドシグナルが消え、ブルーシグナルが灯った瞬間、火星座3つのマシンは主の手から放たれ、広大なコース上へと疾走していった。

 まずは直線。ここでは射手座のマシン・Tバリスターダがトップを飾る。

2018/01/01 22:52
実況「バリスターダ、凄まじいカッ飛びだぁ! 弓矢の如し直進性! 流石射手座だ!」
2018/01/01 22:58
「っしゃぁ! 幸先イイぜ!」
2018/01/01 22:54
「しかーし! 次の高速コーナーでは牡羊座・Cスプリンガーが追い抜き、トップへ! どうやら、スプリング=バネを内蔵しているスライドダンパーを装着しているようだ」
2018/01/01 22:55
「げげっ!?」
2018/01/01 22:56
「ふふ~ん♪ あんた、コーナリングは弱いみたいねぇ」
2018/01/01 22:57
「今度はテクニカルコーナー。ここでKレーヴェンが頭角を現す。あっという間に2台を追い越したぞ。さっきまでがまるで嘘のようだ」
2018/01/01 22:59
「フッ、甘いな……」
2018/01/01 23:06
「へっ、やってくれるぜ!」
2018/01/01 23:07
「ま、そうでなくっちゃ、オモシロくないよねー」
2018/01/01 23:07
 一方、VIP席で観戦中の麗羽・秀仁・更雪の3人は……。
2018/01/01 23:07
「なるほど。Kレーヴェンは4WSシステムを搭載しているようですね」
2018/01/01 23:08
「よんだぶるえす? とはなんですの?」
2018/01/01 23:09
「ズバリ! 前後のホイールが両方ともステアするシステムのことです。通常、ステアリングは前輪のみで行うマシンがほとんどです。でも、後輪もステアすれば、よりきめ細やかなコーナリングが可能となります。その能力がテクニカルコーナーで遺憾なく発揮された。だから、Kレーヴェンがテクニカルコーナーでトップに躍り出たのです」
2018/01/01 23:10
「そもそも、ステアリングとはなんですの?」
2018/01/01 23:12
「(ずっこけて)んだぁあああああっ! そんな事も知らないんですか!?
2018/01/01 23:13
「知りませんわ。レディーですもの(毅然)」
2018/01/01 23:14
「あははは(苦笑)……」

 まぁ、あたしも良く知らないんだけどね……。

2018/01/01 23:15
「(プルプル震え、メガネを直しながら)い、いいでしょう。懇切丁寧に説明しましょうとも……。いいですか? 車も自転車も向きがまっすぐのまま走っていたら、カーブを曲がることが出来ないでしょ?」
2018/01/01 23:16
「確かに……」
2018/01/01 23:18
「そりゃあもう、激突でドンガラガッシャンですわ♪」
2018/01/01 23:18
「なので、タイヤの向きを変える必要があります。その向きを変える機能をステアリングシステムと言うのです。分かりましたか?」
2018/01/01 23:19
「なるへそですわ」
2018/01/01 23:20
「あれっ? でも、桜華ちゃんのCスプリンガーもコーナーに強いマシンじゃありませんでしたっけ? でも、テクニカルコーナーではKレーヴェンに敗けていた。Kレーヴェンと違いがあるって事なのかな?」
2018/01/01 23:32
「その通りです。Cスプリンガーはなだらかな曲線=高速コーナーを得意としていますからね。同じコーナーと言っても、高速コーナーとヘアピン・S字などのテクニカルコーナーでは性質も攻略法も異なるのですよ」
2018/01/01 23:34
「へ、へぇ~。色々と奥が深いんだ……」
2018/01/01 23:36
「さぁ、それぞれのマシンが拮抗した状態で次のセクションへと突入! 待ち構えているのはぁ……砲台エリアだぁ!」
2018/01/01 23:36
「んあ? 砲台だぁ?」
2018/01/01 23:45
「む? 何か来るぞ?」
2018/01/01 23:48
砲台から次々と発射されたのはゴムボール。バランスボールサイズ程度のものが雪崩のようにアストロン三台の元へ押し寄せる!
2018/01/01 23:48
「えぇ~っ? マジでこれぇ?」
2018/01/01 23:54
「フン、どうということはない。アレを使えばイイまでの事だ」
2018/01/01 23:55
「あぁ。アレだな」
2018/01/01 23:55
「オッケー♪」
2018/01/01 23:56
「いくぞ、チェンジ・フォーミュラモード!」
2018/01/01 23:56
「バリスターダ、フォーミュラモードだ!」
2018/01/01 23:57
「フォーミュラモードッ♪」
2018/01/01 23:57
 レーサー達のコマンドを受け、各マシンはそれぞれ間隔を取るべく、広がる。そして光り輝き、膨張。ミニ四駆サイズのマシンはF1カーサイズへと巨大化したのだ。その巨大化により発生した波動・反動で襲来するバランスボールの軍勢はド派手に吹っ飛ばされていった。
2018/01/01 23:58
「わぉ♪ まるでカーニバルですわっ♪」
2018/01/02 00:00
「ス、スゴイ……。巨大化出来ることは知っていたけど、実際に見てみると迫力が違う……」
2018/01/02 00:01
「なるほど。このギミックを魅せる為の仕掛けでしたか。いやはやエンターテイメントしていますねぇ~」
2018/01/02 00:03
 そして今度は障害物の多いセクションへ。現在のF1カーサイズだと通れないので、3台のアストロンは小型サイズ=トイモードへと戻った。

 心躍らせる観客一同。麗羽たちも例外ではなかった。そんな麗羽たちのいるVIP席のあるエリアの天井に人影が。それはまるで忍者のようで……。

2018/01/02 00:05
「……」
2018/01/02 00:08
 その後もレースは白熱の展開を繰り返し、クライマックスへ。
2018/01/02 00:10
「いよいよ最終セクションへと突入! まずは急な下り道、ダウンヒル。その直後に傾斜30度のハイクライム。この険しい坂道を昇った先には栄光のゴールだ! 3台共、ラストスパート! 頑張れ!」
2018/01/02 00:12
「……(減速して来たか? ならば!)」
2018/01/02 02:03
「おっと! ここで勝獅選手、ピットイン! マシントラブルか? それとも作戦か?」
2018/01/02 02:04
「なるほどな。おし、じゃあ俺も」
2018/01/02 02:05
「続いて馬慧選手も追うようにピットに入った。その隙にCスプリンガーがトップに浮上したぞっ!」
2018/01/02 02:05
「ピットイン?」
2018/01/02 02:07
「半田さん、説明して下さる?」
2018/01/02 02:07
「やれやれ……。またですか。まぁいいでしょう。ピットインとはマシンのリフレッシュタイムの事です。消耗や破損したパーツを新品のに交換する作業を行います。F1ではピットクルーがチーム一丸で行うのですが、アストロンは小さいサイズに出来るので、レーサーが個人でピット作業出来るのですよ」
2018/01/02 02:07
「そうなんだ。それにしても皆、足速いね。マシンと一緒に走れているんだもの」
2018/01/02 02:10
「言われてみればそうですわね」
2018/01/02 02:12
「えっ? 知らないんですか? アストロンを走らせている時、持ち主は愛機を終えるよう一時的に足が速くなりますよ? お二人共、走らせた事ないんですか?」
2018/01/02 02:13
「お恥ずかしながら……」
2018/01/02 02:14
「わたくし、走らせた事はあっても、一緒に走ろうとは思いませんでしたし……」
2018/01/02 02:15
「(呆れつつ)そ、そうですか……。ま、まぁ、知れて良かったですね。あはは……(僕はいつまで説明役をあらなくてはいけないのだろうか……(泣)」
2018/01/02 02:16
「ピットインを終え、Kレーヴェン、再スタート。寸秒でバリスターダも再スタートを切った! ダウンヒルを流星の如く下っていく!」
2018/01/02 19:25
 下降が終わりそうになったそのタイミングに勝獅は反応。
2018/01/02 19:32
「よし今だ。獅子よ。雷と成りて勝利を掴め、ブリッツンナーゲル!」
2018/01/02 19:35
 Kレーヴェン、蒼雷を纏い、大加速。その勢いで上り坂へ臨む。
2018/01/02 19:35
「へへ、そう来ると思ったぜ。だったらこっちも必殺走法だ。バリスターダ、バーニングロデオ!」
2018/01/02 19:36
 バリスターダも紅蓮の炎を纏って加速。Kレーヴェンに追随する走りを魅せる。
2018/01/02 19:37
実況「どちらも必殺技を発動! 怒涛の追撃でCスプリンガーに迫る!」
2018/01/02 19:38
「うっわ! 追い上げて来た! だったらこっちだって! スプリンガー、シープエフェクト発動!」
2018/01/02 19:41
 Cスプリンガーは雲のようなエフェクトに包まれる。まるで羊のように。
2018/01/02 19:42
「いくよっ! リズミックバウンド!」
2018/01/02 19:42
 スプリンガーはフェンスにわざとぶつかるが、シープエフェクトによって跳ね返る。それを繰り返し、ピンボールのように坂道内を跳ね上がっていく。
2018/01/02 19:43
「追い越させないっての! ……って、アレレぇ~!?」
2018/01/02 19:44
 スプリンガーは引き離すどころか、今までのリードも維持できず。レーヴェン&バリスターダにどんどん追いつかれてしまう。
2018/01/02 19:45
「リズミックバウンドで分かり難いだけで、もしかして減速しちゃってる?」
2018/01/02 19:46
「バッテリーの消耗だろう。算段が甘かったな」
2018/01/02 19:47
 Kレーヴェン、Cスプリンガーを追い抜く。
2018/01/02 19:49
「じゃあな桜華!」
2018/01/02 19:49
 Tバリスターダも瞬く間にCスプリンガーの前に出て遠退いた。
2018/01/02 19:49
「ムキ~ッ! もっとバッテリーがもつと思ったのにぃ~」
2018/01/02 19:50
実況「万事休す! スプリンガー、完全において行かれた! トップ争いは2台に絞られたぞっ!」
2018/01/02 19:51
「チッ。Kレーヴェンを中々引き離せねぇな。坂道とはいえ、直線でバリスターダと張り合うとはやるじゃねぇか」
2018/01/02 19:52
「ペース配分を考えて走っていたからな。お前は勘違いしているようだが、教えてやろう。Kレーヴェンはコーナー型マシンではない。オールラウンド型マシンだ」
2018/01/02 19:54
「万能型と言い切りやがったか。でも、万能って事は突出もしていねぇってことだよなぁ?」
2018/01/02 19:56
「フッ、それはどうかな……? 御託はもういい。後はコースで語るとしよう。Kレーヴェン、ラストスパートだ」
2018/01/02 19:57
「おう! 望むところだぜ。バリスターダ、最後まで踏んばってカッ飛べ!」
2018/01/02 19:58
 モニター越しに勝獅たちの様子を観る麗羽の表情は自然と柔和になっていく。
2018/01/02 19:59
「なんだか楽しそう……。いいなぁ。楽しめるって……」
2018/01/02 19:59
 ゴールラインまで後わずか。

 チェッカーフラッグはレーヴェン、バリスターダ、どちらの手に……?

2018/01/02 20:00
「うぉおおおっ! ゴールを射抜け! バリスターダ!」
2018/01/02 20:01
「Kレーヴェン、サーキットの覇者は……お前だ!」
2018/01/02 20:02
 瞬く間に2台のマシンはゴールラインを通過。果たして結果は……?
2018/01/02 20:02
実況「ンゴールッ! 記念すべき第1回の優勝者はKレーヴェン! 獅子はサーキット界にも王者として君臨したーっ! 2位は僅差で惜しくもTバリスターダ。しかし、大健闘!皆、讃えてくれ!」
2018/01/02 20:03
 ――しばらくして、表彰式が実施。

 栄光の表彰台。1位の座に勝獅が立ち、2位に馬慧、3位に桜華が登った。

 勝獅は愛機を持った手を天高くかざし、不敵に笑んだ。

2018/01/02 20:07
 観客たちは拍手喝采。讃えた。無論、麗羽・秀仁・更雪も。

 一方で、フェンス上という非常に足場の悪い場所に平然と立ち、静観する謎の影――。

 それは忍者の少年であった。

2018/01/02 20:09
??「ぬっふっふ。やってくれよるわ。面白くなってきたでゴザル……」
2018/01/02 20:11

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