黄昏のクレイドリア

18-3

エピソードの総文字数=879文字

あっ……
…………!!
ゲふッ、
エン!!

フランツを庇おうと間に入ったカノンの、

さらに前へと走り込んできた少年は、

致命傷を負い、力なく地へ崩れ落ちる。

庇われた青年は血相を変えて、少年を抱えこんだ。

エン!

しっかりしろ!!

…………どうして、

どうしてあたしも、

庇おうとしたの……。

おいガキ!

いきなり走って行って何事だ――

!!
……!!
なんだよ、これ……
……チッ、

エンを追って駆けつけた

セシルとディーン二人の視線を受け、

イーリアスは苦々しげに

表情を歪めて外へ出ていった。

くっ……!
あっ、おい!

すぐさまイーリアスの後を追う

カノンへ声をかけるも、

目の当たりにした光景と状況を

飲み込むことが出来ないままだったセシルは、

その背を見送るしかなかった。

エン。

聞こえるか、エン!!

…………、

いい加減……目を覚まそうよ、

にーちゃん

流石にもう気づいてるだろ……

おれたちは、もう

此処にいないはずの人間だって

!!

おれが……、にーちゃんが

結界魔術が使えることを、

知らないわけ、ねーじゃん……。

にーちゃんは、エルドと同じくらい……

おれの憧れだったんだから……。

エン…………

結界魔術しか取り柄がないのが

恥ずかしいとか、ほんとしょーもない……。

魔術使えるだけでもすげーのに、

エルド、おかしそうに教えてくれたぜ……。

にーちゃんの気をひきたくて

バカの振りしてたけど……、

もういいや。

やっぱにーちゃんは……

ほんとは優しいままだったって、

わかったから

…………。

じゃーな、後片付けは

しっかりやってこいよな……。

伝えるべきことを伝えた少年の殻は、

がっくりと弛緩し、身体の表面にヒビが入る。

間もなくそれは粉々に砕け、

破片は虚空へ溶けていった。

…………。
…………ッ、

このような不幸は、

彼らにとって別段珍しいことではなく、

日常の傍らに存在するものだった。


たまたまそこに居合わせただけとはいえ、

二人は目を閉じ、その死を悼んだ。

………………。

……俺は、長い夢をみていたようだ。

いや、まだ見ているというべきか。

少年を抱えたままの態勢で居た青年は、

外を見遣った後、立ち上がって

セシルとディーンへ向き直った。

あんたたちに頼みがある。

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