放蕩鬼ヂンガイオー

06「燦太郎くん、強引です……」

エピソードの総文字数=1,903文字

「ひっさしぶりだな。いっやー、小さい頃はよくここでヒーローごっこしたもんだよ」 

 燦太郎は上機嫌だった。
 どこに移動するでもなく、その場で駆け足をしながら待機する。

「中でもう会場設営されてるらしいけんど、肩ならしに燦太郎、おめい何か壌ちゃんにお題だしてやれ」
「燦太郎くんが!? ……く、くまり、燦太郎くんのお願いなら頑張れるかもしれません!」

 天甚の提案を受け、唐突に目を輝かすくまり。
 
 意外な反応のよさに燦太郎は奮起した、これは期待に応えなくてはなるまい。

「よおし、じゃあ今朝のヂグソー封印してたやつ! あれ解除も手帳でやるんだろ! こうやってポーズ決めながら、シュバッ、ヂンガイオー、合体・承認! ってやってみせて!」

 くまりは目の輝きはそのままに、ほろほろと涙を零しながら頬をぷくーっと膨らませた。

「燦太郎くん、容赦ないです……」
「え、なんで!? ヒーロー好きなんだろ!? 会心の提案だと思ったのに! あれ!?」

 不服そうなのは確かなのだが、根が真面目なのか、くまりは渋々例の手帳を取り出した。

「が、がったい、しょ、しょ、しょ……」

 ポーズはスルーされたが、台詞だけでもやってくれるつもりらしい。

 さてお手並み拝見と楽しみにしていると、不意に目の前から手帳が消え去った。

「いただきッ! なのだ!」

 床に着地するヂンガイ。隙ありと判断して手帳を奪ったらしい。側面にあるはずのスイッチを指で探る。

「な、なにするんですか! 返してくださいっ!」

 手を伸ばして取り返そうとするくまり。余裕の体捌きで軽くかわすヂンガイ。

「反応ないけど……中に解除機構があるのかなっと? あー、わからんし」

 と遠慮なくタッチパネルをめくっていたヂンガイの指がふと止まった。

 何かを発見したらしく、ジト目でくまりを睨む。

「これって……えと、AQ女、なんでこんな画像。おまえ、ほんとヒーロー好きとかぜんぜん興味ないんじゃ……」
「わっ、わーっ! そんなことありませんッ! くまりは燦太郎くんのサポートに適任なんですっ! 返してくださいってば!」

 何を見つけたのか知らないが、ヂンガイにとっては良いものだったらしい。
 まさかの水抜きに手帳をしまいこみ、ぽんぽんとお腹を叩いてみせた。

「ぷくく。もっともっとちゃんと、やってみせるのだ。燃えるヒーローを演じてみせるのだ。あたしがちゃん燃えたら、返してやらなくもないのだ」
「くっ、こ、この、足元を見てくれますね……っ! くまり怒りました! そうくるのなら、こっちだって本気を出さざるを得ませんよっ!」
「いい度胸なのだ! やれるもんならやってみろし!」
「あとで後悔しても知りませんから!」

 二人の視線が絡み合い、苛烈な火花が散る。ような雰囲気だ。

 なんか、この二人はどうやっても仲良くならないような気がする。
 これ以上険悪な雰囲気にならないよう警戒して見守っていると、天甚のこぶしがヂンガイの頭に振り落とされた。

「あだっ!?」
「ヂンゲエ、おめーもやるんだよ。ちょうど一緒に特訓できるいい機会だろ」

 食いつくのは燦太郎である。

「特訓!? そっか、そうだよな! ヂンガイだってまだまともな特訓してないし! ここらでパワーアップしねーとな!」

 我が意を得たりと頷く天甚。
 ちょうどいま殴ったばかりのヂンガイの頭をそのまま撫でる。

「おめーが怪我しないために練習しようっていってやってんだからな」
「おじい、優しいのだ……」
「チョロすぎんだろ。そんなんでいいのか、おまえ」

 あきれていると、天甚がくまりを指差した。

「嬢ちゃんは慣れてないだろうから、燦太郎がサポートしてやんな。ヂンゲエはワシが鍛えなおしてやる」

 コンビ戦らしい。
 燦太郎はくまりの肩を叩いた。

「任せろ! 俺はこう見えて、ヒーローになりたいやつには優しいんだ」
「きゃん!? べ、別に自分がなりたいわけでは……あ、でも燦太郎くんが優しくしてくれるのならそれも、いやでも、ううん、ヒーローかぁ……」
「そうと決まれば特訓だ姫荻! ぜったいヂンガイを認めさせてやるぞ!」
「燦太郎くん、強引です……」

 くまりは半ば諦めた様子でため息をついた。
 微妙に嬉しそうな雰囲気を感じるが、なにしろヒーローが好きなのだから実際嬉しいのだろう。

 天甚が両腕を大仰に振り上げ、高らかに宣言する。

「相手チームよりたくさんのLAEを集めたほうの勝ちだ! 懐かしのヒーローごっこ対決開始だぜ!」

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