星さがしのミリフィエール

お祭り通りにて

エピソードの総文字数=1,765文字

 少々不満げなリタの案内で、ミリフィエールが訪れたのはヴィオナの中心地。めまいがするほど鮮やかな装飾を宿した露店の数々と、活気あふれるひとびとの喧騒(けんそう)に、ミリフィエールは感嘆の声をあげた。
2017/10/31 15:38
わぁ、華やかな屋台がいっぱい! 今日はお祭りなのですか?
2017/10/31 15:39
いいえ、毎日こんな感じよ。ヴィオナは芸術の都。国民は皆、派手な騒ぎがだいすきなの
2017/10/31 15:40
 ミリフィエールはきょろきょろと興味深そうに辺りを見わたすと、ひとつの露店に心を奪われた。
2017/10/31 15:43
リタ様、射的があります!
2017/10/31 15:44
 ミリフィエールが指さした先には、愛らしくふわふわなぬいぐるみや、きらきらと輝くアクセサリーが“連れてかえって!”と言わんばかりに並べてある露店があった。店の前には、景品とは不釣り合いの、無骨(ぶこつ)なコルク銃がおいてある。
2017/10/31 15:45
ウチの射的は、本物のアクセサリーやブランドもののぬいぐるみが景品だよ~! それでいて、3回たったの500フィン! お嬢ちゃん、やるかい?
2017/10/31 15:48
ちょっとミリフィエール、やめておきなさいよ。ここ、地元でも“全っ然()れない”って有名な店よ?
2017/10/31 15:48
ふふ、リタ様。ご心配には及びません♪屋台のおじ様、ぜひぜひ、挑戦させてください!
2017/10/31 15:49
毎度ー
2017/10/31 15:51
 にっこりと楽しげな笑みを見せ、銃を構えるミリフィエール。
2017/10/31 15:51
 コルク銃はパン、パンパン! と軽やかな音を発し、その音と共に、ぬいぐるみやアクセサリーたちは次々と倒れていった。
2017/10/31 15:52
そ、そんなバカな……!!?
2017/10/31 15:53
 愕然(がくぜん)とし、息を()んだ屋台のおじさんとは裏腹に、ミリフィエールは子どものように、きゃっきゃっ、とはしゃぐ。
2017/10/31 15:54
うふふ! この景品、重心に(むご)いまでの細工がしてあるのですね、おじ様! すっごく狙いがいがあります~!
2017/10/31 15:54
うっぎゃああ、お嬢ちゃんバラサナイデ!!?
2017/10/31 15:55
 屋台のおじさんは、次々ともぎとられてゆく景品と、店を開いて以来ごまかしつづけてきた不正の無邪気すぎる暴露(ばくろ)に、すっかり顔面蒼白(がんめんそうはく)だ。
2017/10/31 15:57
リタ様、何か欲しいものはありますか?
2017/10/31 15:57
【ゾォ……ッ】ウワッ……最早(もはや)、的も見ずに()っているし……。えっと、じゃあ、あの青い石のブレスレット……
2017/10/31 15:58
かしこまりました~
2017/10/31 15:58
パァン! 銃声と重なるように、おじさんの悲鳴が一帯に響きわたった。
2017/10/31 15:58
もう許して~!!
2017/10/31 15:59
***
2017/10/31 16:17
 日が傾き、ひとびとがそれぞれの帰途(きと)につく。
2017/10/31 15:59
 青い石のアクセサリーを夕陽にかざしながら、リタはミリフィエールに問いかけた。
2017/10/31 15:59
結局全部、()ちおとしちゃったわね……。何だかんだ、アタシの分以外全て返しちゃったけれど。自分の分はいいの?
2017/10/31 16:00
屋台のおじ様が、ご生活できなくなってしまわれそうでしたから。不正はよくないことなので、ちょっと()らしめさせていただいてしまいましたけれど
2017/10/31 16:01
……ふっ。あはは! “ちょっと”って! 店主、真っ青だったわよ!!
2017/10/31 16:03
よかった、リタ様、やっとお笑いになった!!
2017/10/31 16:04
え?
2017/10/31 16:05
リタ様、わたくしと出会ってから、ずっと固いご表情をなさっていたのです。だいすきであるはずのお歌を歌われているときでさえ……
2017/10/31 16:05
……うそ。全然、意識していなかった……
2017/10/31 16:05
リタ様、まずは、ご自分の夢……歌うことを、楽しんでみませんか? 自身の前向きな気持ちは、きっと見ているかたの喜びを連れてきてくれるって……わたくしは、思います
2017/10/31 16:06
(そうだ……アタシも、ステラさんが幸せそうに歌う姿に()かれて、歌を始めたんだった……)
2017/10/31 16:06
 きゅっ、と唇をかみしめるリタの顔を、ミリフィエールは心配そうにのぞきこんだ。
2017/10/31 16:07
リタ様……?
2017/10/31 16:08
……アナタに、言いたいことがあるわ
2017/10/31 16:08
ごっ、ごめんなさい、差しでたことを申しまして……
2017/10/31 16:09
そうじゃなくて! さっきからアナタ、アタシのこと“リタ様”、“リタ様”ってよそよそしすぎるのよ!! ……アタシはミリフィエール……ミリフィと、もっと仲よく、なりたいのに
2017/10/31 16:10
……!!
2017/10/31 16:10
……“リタ”でいいわ
2017/10/31 16:10
……っ、はい、リタ!
2017/10/31 16:11
 リタが真っ赤になりながら差しだした手を、ミリフィエールはその両の手で、宝物のように包みこんだ。
2017/10/31 16:11
ちょっと! その(つか)みかたじゃ同時に進めないでしょうが!! 片手でいいの!!
2017/10/31 16:12
うぅ~、リタ、厳しいです……
2017/10/31 16:12
 夕暮れの街を、ふたりで進む。
2017/10/31 16:12
 春先でまだまだ肌寒かったが、リタは、ミリフィエールとつないだ手と胸のあたりに、確かな(ぬく)みを感じていた。
2017/10/31 16:12

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