黄昏のクレイドリア

13-4

エピソードの総文字数=913文字

……どういうこと。
考えても見ろ
イーリアスの発した言葉の意味を
理解しかねる。そう言いたげな
視線を送るカノンを見据えたまま、
いつもの調子でイーリアスは話を続ける。
カノンが単独で
小屋を目指しているときに
殺し屋がお前を襲撃したら、
それこそ一貫の終わりだ。

あいつは撤退するとは言ったが、
その言葉が真意であるかはわからない。
撤退する?……って、
あんたもしかして
セシルを撃った奴と接触してたの?!
あぁ。
遺跡で水晶によって
外に転送されてから、
妙な気配を感じたからな。
取り逃してしまったが……。
…………。
そして、その際に
魔巧具を破壊された。
だから、俺の呪いの発症も、
身体が万全でない今…、
いつ起きてしまうかわからない。
…………。
…………つまり何、
あんたはセシルを諦めて、
この遺跡に篭ってる
べきだって言いたいわけ?
自分の身のかわいさに?
……あぁ、そうだ
……ッ!!
イーリアスの胸倉に掴みかかると、
同時に重い痛みが
カノンの首筋に脈打ち始める。
痛みに顔を歪めそうになりながら、
カノンはイーリアスを睨み上げた。
……本気なのね、イーリアス。
あたしたちの厄介事に
巻き込まれた人間を、
自分の都合で見捨てるって。
お前が解決策を得られなければ
状況は変わらない。ましてや襲撃されれば、
俺の呪いは発症し、セシルは俺に殺される。
最悪のシナリオだろう。
だから救援を
待ったほうがマシだって?
それじゃ間に合わない事なんて、
あたしより頭が回るあんたなら
わかっているでしょうに……!
察しがいいじゃないか。
それなら知恵のある人間の
言い分に従うのが筋だろう。
…………。
カノンは掴んでいた手を離し、
顔を俯けて暫く閉口していたが、
おずおずと口を開いた。
……そうね、
あんたの言い分も一理あるし、
間違いじゃあないもんね。
それなら――
ぅぐッ?!
みぞおちに重い一撃を受け、
イーリアスは膝をついて倒れこんだ。
でもね、残念ながら
この場で一番動ける人間は……
”リーダー”のあたししか居ないの。
行くな、よせ…………、
誰も死なせなんてしない。
だから、大人しく待ってなさい。
時間が惜しいとでも言うように
カノンは遺跡から飛び出すと、
言葉を紡ぎかけていた
イーリアスへは振り返らず、
降りしきる雨の中を走っていった。

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