いかに主は導きたまうか。

3. Released 掘って〜掘って〜、また掘って。

エピソードの総文字数=2,408文字

  前の会社[理晃]では抑圧されていたのだが、これが一挙に翻(ひるがえ)る情勢になった。新規顧客の開拓、この名目で、「一人で自由に動いてもいい」ようになる。名刺には室長の肩書きがついた。緩急が激しすぎる変化ではある。まあ、どちらにしても、なんらかの苦しみは伴うものなのだけど...。流石に、制約は、いくつかあるにはあった。売込むのは、[ボンド]関係のみ。*四部門の内の一つはボンド事業部であった。

  最初に、自分で方針を決めた。各(ボンド)製品の資料をみると、被着体としては[塩ビ]が圧倒的に相性が良いことが分かる。なので[塩ビ]に関わる会社にのみ絞りをかけて営業をするることとした。商工会議所を訪れた。図書室にあるプラスチック産業年鑑をあたる。かなりのページをコーピーした。あとは、ここにある会社群を虱潰しに訪問するだけ。これが唯一の、ボクの”奥義”、『ローラー作戦』であった。

  かなりの数の会社を精力的に回った。近畿エリアは当然、更には名古屋、関東以北へも行った。各地方の工場も訪問する。無駄骨折りが延々々..と続く。*専門的な知識は持ってはいないのだから...。一回だけではなく、時間をおいては、何度も何度も訪問する。場合によっては、部署をたらい回しにされることもあった。[根気]と[執念]が間違いなく要る。また、活動をするに連れて、それにまつわる経費が蓄積されていくことへの[意識]と[忍耐]も...。ただ、ボクは最初、弓が引き絞られた状態にあったことと、また立場から来る思いゆえか、かなり頑張ってしまう。「キリキリ」とストレスがつのっていくなか、三年を過ぎる頃からチラホラと...、話しがまとまり出した。それも、まったくの新市場においてである。ボクは限界に突入している感があったころだ。「なんでも三年はかかる」が定式となった。

  方針は「自己が信じて揺るがないもの」である必要がある。また、唯一の縁(よすが)として「単純なもの」であったほうがいい。時の進展の中で、なぜか情勢はこれを変更することを誘うが如きの流れになる。これを無視できなければならない。だから、最初に確信できて、かつ単純なものでなければならない。


新約より抜粋:

No trial has overtaken you that is not faced by others. And God is faithful: He will not let you be tried beyond what you are able to bear, but with the trial will also provide a way out so that you may be able to endure it.

『あなたを”鍛える”ために試練は用意される。これは誰もがみな味わい知るものでしか
 ありません。神が誠実なかたであることを忘ないでいてください。あなたの許容範囲
 を越える試練を、主は、決して与えることはされません。試練のみならず、同時に、
 これから抜け出す道をも備えてくださいます。だから、あなたは耐え抜くことはできる
 のです』 。(コリント10:13)[意訳:byMe]


追記:

  最初は、とある商社との同行を求められた。だが、ここから来た男は信頼を置けない人間だった。訪問先から入手したサンプルを自社に持ち帰ろうとしたからだ。取り敢えず、彼は替えてもらった。*遺恨が残る。

  訪問先からはサンプルの提出、また技術マンとの同行訪問が求められる場合があった。当然に、良いサインなのだが、これへの対応要請は、技術サイドからは歓迎はされなかった。「どうなるものか分からんもの」への対応だったからだ。さぞかし無意味で無駄なことに思えたのだろう。*みんな現実の話しだけで、てんてこ舞いであった。これも立場があればこそ、それなりには対応をしてもらえた。ただし、彼らにとってテーマが魅力的なものであった場合は、ボクは外された。*立場もなにもへったくれない扱いなので驚く。

  ある日、関東地方の、とある工場を訪れたときのことだ。ボクは、河川敷を歩いていた。辺りには誰も見かけない。両手には大きな紙袋をさげていた。中にはカタログ、資料がたくさん入っていた。訪問先との話し自体は、あまり良い内容のものではなかった。「とぼとぼ」と、かなり離れたバス停を目指して歩いていく。突然、にわか雨が降り出してきた。みるみる濡れて、紙袋が一挙に底から破れた。中身は土道に「ドサッ」と落ちて、広がった。少しの間、ボクは発狂して叫び声を上げていた。遠くに陸橋が雨に煙って浮かんでみえた。やがて、スッキリして、気を取り直したボクは、泥にまみれた紙束を抱えあげ、またバス停へと歩いていった。

  大阪の近畿自動車道には、とあるメーカの看板がでかでかとかかっている。この会社に営業で訪問した際に、不誠実な対応を受ける。こういった場合は、特別な[術式]の試行が流儀としては許される。以後、この看板を見る度に「潰れろ!」との念を強烈に送った。不思議なことに、しばらくしてから「取引をしたい」と、向こうから急な申し出が起った。

  おかしなジンクスを覚えた。商談には、関係者が複数いる場合がある。みんな、話しがまとまれば、各々メリットがあるので期待を寄せている。この内の誰かが、【失墜】(仲間外し、失職)した場合は、商売は事後に大きな展開をみせた。人柱のようで気味悪く思った。補記:商売の間に何社も入ることが、そもそもおかしいだけのことなのかも知れない。また、いい加減なことをしている人間が旨味に与ることは、本来あり得ないだけの話しなのかも知れない。



  「滅べ!我が肉体!!!」との思いでの、営為ではあった。

  

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