【共幻社座談会】第3回「デビュー前に知っておきたい、作家のための法律知識」

B会場『出版契約と作者の権利』

エピソードの総文字数=6,164文字

恐れ入ります。

私共幻社様から『天使ミレちゃんの振り回されな日々』を出版させていただいている、しゃりおっとです。


ネットで出版契約書のひな型を見たら


>第4条(甲あるいは第三者による類似著作物等の利用)

>(1)甲は、本契約の有効期間中、本著作物の全部または一部と同一もしくは明らかに類似すると認められる内容の著作物および同一題号の著作物を、自ら第1条にいう利用をせず、あるいは第三者をして第1条にいう利用をさせない。


という文面がありました。


これは二次創作やクロスオーバーを、絶対に『してはいけない』『させてはいけない』という事でしょうか?



電子書籍契約書のひな型(pdf)

※私の契約書ではなく、一般的なひな形です

しゃりおっとさん、いらっしゃいませ!
契約書の内容って難しいですよね。
言葉では理解できても、その意味するところがどこまでなのか……
私も作家の皆さんと契約書をやり取りしている中で、とても多くの質問を頂きます。
そして、これらの質問に応えることは非常に難しいです。

自分なりに調べてはいますが、やはり法律の専門家ではありませんので、自分に都合の良い解釈をしたり、誤った認識のまま説明をしてしまう危険があります。

これまでは齋藤さんに助けて貰っていたのですが、お付き合いする作家さんも増えてくる中で、毎回齋藤さんに聞いていくというのも負担が大きくなってしまいます。

そこで座談会を通して、質問や疑問などをまとめておくことで、私も皆さんへの説明が楽になりますし、皆さんも安心出来るようになると思いました。
皆さんがクリエイターとして仕事をするとき、相手方は会社であっても、窓口で連絡をするのは担当の編集者さんなどになりますよね。

契約書について疑問があったとき、まずはその方に質問をすることになると思いますが、その方は法律の専門家ではありません
熱心に丁寧に対応してくれたとしても、それが法的に正しいかどうかは別の話です。

とはいえ「法務担当の方に確認してください」とも頼みにくいですよね。
面倒な人だと思われたくない、担当編集者の仕事を増やしたくない、といった配慮をしてしまいがちです。

ですが!
そこは遠慮するべきところではありません!

なにも法律や条文のすべてを理解しろということではありませんが、作家としての活動、利益に関係する箇所については、契約をする段階で理解をしておくことが責務であるといえるでしょう!

出版社側も、後から
「ちゃんと内容を読んでいなかった」
「詳しく説明をされなかった」
「そういう意味だとは思わなかった」

なんて言われては困ってしまいます。
この人とはプロとしてのお付き合いが出来るのかと不安になってしまいますよね。
というわけで!

この座談会をよい契機として、日頃疑問に思っていた創作と契約のことなど、ご遠慮なく書き込んでください。

もっとも法律や契約については、すべて白黒つけられるというわけではありません。
齋藤さんもお忙しい中、条文や判例などの確認をしてからのご回答となる場合がありますので、即答することが難しいケースもあると思います。

でも、遠慮はしないでくださいね!
座談会の中で答えきれなかった質問については、後日取り上げるなど検討いたしますので。
『ぼくの異世界転生。』でお世話になっております、はおりです。



しゃりおっとさんが載せてくださった契約書のひな形を参考させていただきますが、


第 13 条(契約の有効期間)

>  本契約の有効期間は、契約の日から満 ヵ年とする。また、本契約の期間満了の3ヵ月前までに、甲乙いずれかから文書をもって終了する旨の通告がないときは、本契約は、本契約と同一の条件で自動的に継続され、有効期間を ヵ年ずつ延長する。


という項目がありますが、文書というのは契約終了の書類を出版者様に郵送する。という解釈でいいのでしょうか?

また、その際の文面やその他決まり事等はありますでしょうか?(内容証明等じゃないとダメとか…)


※契約を終了したいという意思は現時点ではありません。念のため……

C会場(その他の質問)の方へ先に投稿してしまったので挨拶が前後することになっちゃいますが……それもWEB座談会の醍醐味! こちらにも投稿させていただきます。

いざデビューしてみて初めて「契約書」なるものを目にするというような作家さんも多いと思います。

「なんかよくわからない言い回しが羅列してあって、疑問・質問以前に内容が理解不能! どーすればいいの?」と。

そんな場合は「自分がしたいこと(されたくないこと)」を思いつくままに挙げた上で「これらのことは契約的に問題ありませんか?」と尋ねてみるのもアリなのかなーと思いますが、どうなのでしょうか?

ちょっと隙はあると思いますが、「わかんないから何も尋ねないでいて納得しないまま契約を結ぶ」よりはマシなのかな、と。

法律的角度以外に、出版サイドとしての意見もお聞きしたいです^^

前述を踏まえて……

しゃりおっとさんが提示して下さっている「電子書籍契約書のひな型」の契約書の内容を出版社から送られてきた新人作家Aさんを仮定し、以下に、Aさんの「やりたいこと(されたくないこと)」をリストアップしてみます。

出版社として、あるいはその顧問弁護士としてはどんな回答になるでしょうか?
(もちろん、共幻社様あるいは斎藤先生としての回答ではなく、一般論的なものとして)

Q1:
作品に関してツイッターでの告知・宣伝を編集部に断りなく自由なタイミングで呟きたいです。

Q2:
電子書籍版が出た後、WEBサイト公開版の内容を改変していいですか?
誤字の訂正だけでなく、連載中の展開に合わせて前半のストーリーを変更もあり得ます。

Q3:
作品内容に対する修正要望が延々と続いて出版できない場合、こちらから出版キャンセルを申し入れることはできますか。

Q4:
こちらが納得するまでイラストの修正をしてもらいたいです。

Q5:
著作権侵害などで訴えられたとき、出版社様に窓口となってもらえますか?

Q6:
この作品の二次著作物を自分で販売したいです。

Q7:
著作権使用料(印税)を後から変更していただくことはできますか?

Q8:
レビューなどで中傷を受けた場合に出版社側で削除申請などの対応をして欲しいです。

Q9:
作品の出版経緯などをうら話として自分のブログで書きたいです。

Q10:
訴訟になったときの管轄裁判所を自分の地元の裁判所にしたいです。

Q11:
紙の書籍化のオファーを他社からいただいたとき、作者の独断で承諾してもいいですか?
また、アニメ化や漫画化、ゲーム化のオファーがあったとき、独断で承諾してもいいですか?

Q12:
電子書籍として出版された作品のオリジナル作品を公開しているサイトを、後から別のサイトに変更するかもしれません。

Q13:
イラストが著作権侵害していた場合などで、私(著作者)は責任を負いたくありません。

Q14:
著作権使用料(印税)の他に、原稿料も欲しいです。

Q15:
トラブルが生じた時に身内や弁護士さんに「業務上知り得た情報」を話すのは契約違反になりますか?


……以上、とりあえず、思いつくままに。

契約ではなく「事前の話し合いで決めること」というような内容もあるかと思いますが、前出の「電子書籍契約書のひな型」の契約書の内容でどの部分が関連するのかを交えて(あるいはそこから離れての)のアドバイスやご意見が伺えれば^^
こんにちは。

ご質問ありがとうございます。

順番に回答していこうと思います。

>>しゃりおっとさんのご質問(同一、類似の著作物の利用に関する条項)について

 契約条項の趣旨は、二次創作の禁止ではなく、同一作品又は明らかに類似する作品を、著作者が自分で、あるいは他の出版社から出版することを禁止するものです。

 また、インターネットで公開することも禁止されていますね。


 ご質問の趣旨は、「続編」あるいは「スピンオフ」のような作品を、自分で書いてインターネットで公開してよいものか、ということかと思います。


 契約条項では、「明らかに類似する」という文言の判断となります。

 作品の性質にもよりますが、「続編」ないしは「シリーズもの」は、「明らかに類似する」作品と考えるのが、当事者の間では一般的ではないか。

 一方で、いわゆる「スピンオフ」のような作品の場合には、「明らかに類似する」作品とは言えない場合もあるのではないか、と考えます。


 喩えとして適切かはわかりませんが、

①西尾維新さんの『化物語』→『傷物語』、といった関係はダメ

②福本伸行さんの『アカギ』→原恵一郎さんの『ワシズ』、といった関係はOK

(※②の例は漫画なので、絵画の著作物ということになり、小説と全く同様には考えられない点には、ご留意ください)

 というように考えます。


 クロスオーバーに関しては、各作品によるのだと考えます。(※小説という表現媒体を想定します)

 A(出版権を設定した作品),B,C,Dのそれぞれの登場人物を、クロスオーバー作品「O」に登場させる、とした場合、「O」という作品で描かれる内容・表現が、それぞれのA,B,C,Dに描かれている内容と、まったく異なるものとなっているのであれば、問題ありません。


 任天堂さんの「大乱闘スマッシュブラザーズ」をイメージしてみると、スマッシュブラザーズ独自の舞台で遊ぶステージに限っては、全く異なるものとなっている、と個人的には思います。

※スマブラの例も、映像の著作物の問題なので、小説の場合に完く同様には考えられない点には、ご留意ください。

※なお、上の「続編」を考える場合ですが、法的には「1巻」と「2巻」は別個の著作物ということになり、ストーリー展開が異なっているのであれば(たとえば、ミステリ系の作品で、事件の内容が全く異なる等)、「明らかに類似すると認められる内容の著作物」ではない、という考え方もあり得るところかと思います。

>>はおりさんのご質問(契約終了のための文書とは)

 契約条項の趣旨は、出版権設定契約を終了させたい、という意思を、きちんと文書で表示してほしい、ということです。

 逆に言うと、電話で伝えたり実際に会って口頭で伝えたたりしただけではダメ、という意味です。


 郵送であれば、問題ありません。

 メールはどうか、という点は一概には言い切れませんが、普段、当事者の間で、メール等で重要なやりとりをしているのであれば、メールによる意思表示も有効となる場合もあると個人的には思います。

 ただし、出版権設定契約が、郵送等で、実際の書類に署名押印する形で行われているのであれば、メール等での通知で済ませるのではなく、文書を送付するのが無難でしょう。


 契約終了の書類については、特別の形式が必要になるわけではありません。

出版権設定契約を継続しません」という意思が表示されている内容であれば、問題ありません。

 なお、出版社との間で、複数の作品について出版権設定契約を交わしている等の事情があるときには、継続しない契約がどの作品に関するものなのか特定する必要があります


 また、郵送について、内容証明郵便という方法があるのはご指摘のとおりですが、契約終了の意思を表示するために、内容証明郵便でなければならない、ということはありません。

 内容証明郵便は、郵便物が確実に相手に配達された、ということを証明できるものです。

 今回の場合で言うと、契約終了の意思表示が相手方に確実に到達しました、ということを証明する証拠になる、ということになります。

出版契約はどの時点で交わすことが望ましいのでしょうか?

作品が出版された後に契約を交わすということが珍しくない業界です。
出版をしたからといって、その後に提示された契約書の内容について異議を唱えられなくなるというわけではないと思うのですが、いったん出版されてしまった以上、後から取り返せない悪影響が出て来るかもしれません。
>>黒名さんのご質問(契約内容に関する質問)について

 契約内容について質問をするのは、当事者としては自然と思いますし、それができないということはありません。


 個々のご質問ですが、これくらい具体的ですと、相手方としても回答をしたうえで、契約の内容とすることも可能かと思います。

 ただし、契約時点で将来のすべての事態を予測することはできませんので、暫定的かつ相談の内容次第、といった形になることもあるでしょう。


 そこで、具体的に回答できるものをピックアップしてお答えしようと思います。


Q3.申し入れは可能ですが、それが契約の解除として法的に有効かどうかは、事情によります。

Q4.文言上は可能であると考えられます。

Q11.ひな型の文言上、いずれも可能と考えられます。

Q13.イラスト自体は、Aさんの著作物ではなく、Aさんが著作権侵害行為をしているわけではないので、責任は負わない、ということになります。

Q15.契約上の秘密保持義務の問題かと思いますが、弁護士は職務上の守秘義務がありますので、トラブル内容について相談、依頼する際にお話いただく分には問題ありませんが、身内の方には控えていただいた方が無難です。

※Q4(イラストの修正)について

 契約文言上はありませんが、作中の場面にイラストをつけることが、両当事者間で当然の前提となっている場合、翻案について著作者が許諾していると考えられる場合もあるかと思います。

 そうすると、イラストの創作という翻案行為については、基本的には何も言えないことになりますが、著作者人格権を行使することは可能です。

 しかし、こうした出版利用の性質からして、著作者人格権の不行使についても黙示的に同意していた、と解される場合もあり得ると考えられ、その場合には、修正要請について、限界があることになります。

>>高波さんのご質問(出版契約の時点)について


 ご質問の趣旨は、書面化する時期はいつごろか、というものかと思います。

 出版権の設定は、著作者に対して、著作物の利用権を大きく制約するものとなるため、明確な意思の合致が求められる、との指摘もあります。

 そうすると、書面化されていない段階で、出版に向けた作業が進められ、準備も整った時に、契約の条件面で折り合いがつけられないということになると、そのまま出版することが躊躇される事態になります。

 出版権設定契約がなされていない、となれば、著作者は出版社の出版行為を差し止めることが可能だからです。

 また、作品について、他の出版社に持ち込んで、そこから出版してもらおう、ということも可能です。(※)

 そうしたことを考えると、出版社の立場としては、なるべく早い段階で、契約書を作成しておくのがいいのではないか、と思っています。

※上記の、他の出版社に持ち込むという行為は、場合によっては、不法行為となる可能性も考えられます。

 たとえば、出版社の側から、「こういう話を書いて欲しい」等と要請を受け、執筆に入った後も、編集者から相談にのってもらっていながら、心変わりして、他の出版社に持ち込んでしまった、といったようなケースです。

キリのよいところで、第二会場へ移動いたしましょう。

  • ツイート
  • ツイート
  • シェア
  • LINEで送る

ページトップへ