『みじょかもんの祈り ー 心の貧しい人は幸い? ー』

03. 「恐怖の実習。第2段階」

エピソードの総文字数=1,139文字

第2段階の実習先は、バスに乗って30分の場所にある。

今回の実習先は、最初の施設とは違い、かなり老朽化が進んだ特別養護老人ホームだ。
床や壁のペンキは剥がれ
鉄パイプの錆が目立つ
利用者の各部屋も、少し寂れた感じがする。

実習の挨拶に来た時は、正直「大丈夫かな?」と思っていた。

しかし、始まってみると、驚くことばかりだった。

介護のクオリティは非常に高かった。
ここで働く職員の方々は、明るく、楽しく、厳しさもあるプロフェッショナルだった。
介護力という言葉があるのなら、実に高い。

ただ、第1段階よりも、第2段階の方が高齢者のインパクトは強かった。
各部屋から、奇声が上がる。
言葉になっているものもあれば、言葉になっていない叫び声が施設内に響き渡る。

この施設で一緒に実習することになっている2人の女性(1人は20代、もう1人は30代)も、かなりビックリしていた。
20日を乗り切ることができるか不安だった。

重度の認知症の方が多かった。
テレビの前に、いくつか車椅子が並び、演歌が流れている。
見ている人は、ほんの数人。
他の人は寝ていたり、その隣で声を荒げたりしている。

ずっと奥の部屋には、寝たきりの方々がいた。
胃ろうと呼ばれる処置をされた方々だ。

あるご婦人が泣いていた。
泣きながら、私の手を握って訴えてくる。
「私は、この人たちとは違う。違うの‥。」

この女性は他の方とは違い認知能力は高く、自由に歩ける。
違う有料の老人ホームの空きが出るまで、この施設で待機しているらしい。
周りの方々は、ほとんど認知症で既往歴があり、麻痺の方が多い。
高齢者の目線で、同じ施設内を見ると、きっと別の見方になるのだろう。

第1段階の時の私なら、このご婦人に共感したまま考え込んで体が動かなかっただろう。
しかし、この数ヶ月、学校で高齢者について勉強した。
共感も大事だが、割り切るのも大事だ。

ある日の朝礼で、昨晩から熱を出した女性が早朝に亡くなったことを知らされた。
私も何度も顔を合わせた方だった。
その連絡を受けた職員の方々は、朝礼の後、その話題を出すことなく黙々と一生懸命に仕事をされていた。
一緒に喪に服すとか何かあるんじゃないか?と思っていたが、違っていた。
すぐに飲み込むことはできなかった。

しかし、それは、どういうことだろうか。
理解ある方なら、その理由も分かるのではないだろうか。

20日間、食事、排泄の処理、風呂に入れるなど第1段階とは違う介助をした。
想像以上の肉体と精神の疲れを感じる。
具体的には、第3段階の回で書かせていただきたい。

少しずつ、今までの自分が思っていた介護のイメージは、プラスのものとなっていた。

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