魔界の姫と二匹の黒猫の物語

第十一話 疲労回復には塩レモン

エピソードの総文字数=1,520文字

ハァ、ハァ……。まだ追ってきてるわね。

動きが鈍いのが、せめてもの救いですね。

しかし、このままいつまでも逃げ回っているわけにもいきませぬな……。

スライムが合体するなんて、聞いてないわよ!

……これは推測ですが、姫様に退治されたことにより、スライムが種としての危険を感じたのかもしれません。そのため対抗手段として……。

ちょっと、なによそれ。あたしが退治したのが悪かったってこと!?

い、いえ……そういうわけでは……。

スライムをやっつけたら、皆喜んでたでしょ!
あんた達だって、ほめてくれたじゃない! それをあたしが間違ったみたいな言い方してさ!

申し訳ありません、姫様……。

お嬢、今は仲間うちでもめている場合ではありませぬぞ。

フンだ!

しかし参りましたな。お嬢の頭突きはいわば鈍器のようなもの。叩くのには適していても、弾力のあるものには弱い。

どうしましょうか、姫様。このままだとやがて村の方にも……。

うるさいなあ! 今考えてるところよ!

やや、どうやらお疲れのご様子。疲れているとなにかとイラつくもの。イライラしてちゃあ、いいアイデアだって浮かびゃしやせん。そんな時にはこれ、疲労回復には越後屋印の塩レモン。ささ、どうぞお一つ。

あら、ありがと。もぐもぐ……。

うわ! すっぱ! しょっぱ!

レモンに含まれる酸味成分が疲労回復に効果がありやして、さらに運動時に身体から流出しがちな塩分を補うことで……(略

へー。てか、あんたいつの間にいたのよ?

ちょうど商談が終わって魔界に帰るところでやしたが、ご挨拶が途中だったのを思い出しやして。この商談というのが塩とレモンを間違って大量発注しちまったもんで、こりゃあどうしたもんかと試作品を……(略

ちょっと待って! あんた今なんて言った?

えーと、試作品を……。

その前!

塩とレモンを大量発注しちまい……。

それよ、それ! 要は、塩がたくさんあるのよね?

は、はあ……そりゃもうたんまりとごぜぇやすが。

じゃんじゃん持ってきて! お代は……そうね、あいつを魔界に返したときのお金からってことでどう?

合点承知でごぜぇやす。あれだけの大物なら、お代もそれでお釣りが来まさあ。

ひ、姫様……!?

うぬ……これはまたどうしたことか……。

おーい、こっちこっち。おぅ、どんどん運んでくれい!

うん、それくらいでいいわ。ありがとね、エチゴヤン。

なあに、姫様のご命令とあれば、これくらい容易いものでさぁ。

こんなに塩を集めてどうしようというのですか、姫様。

いいから、あんたはそこで見てなさい。

スラララララララ……。

お嬢、彼奴がすぐそこまで迫ってますぞ!

いくわよ!! ウォリャァァァァ!

バサァッ!

ス……スラ~……。

な、なんと……!

スライムが……縮んでる!?

ふん、やっぱりね! このまま、どんどんかけるわよ!

バサァッ!

スララ……スラ……。

まだまだぁッ!

バサァッ! バサァッ!

ス……スラ~……。

これくらい小さくなったら大丈夫でしょ。エチゴヤン、後はよろしく頼むわ。

あ、あっちに帰ったら大鍋に浸して戻してやってね。

承知いたしやした。そいじゃ、あっしはこの辺で。

それにしても姫様、どうして塩を使おうと閃いたのですか?

へヘーン。城の厨房から塩をかっぱらっては、城壁のナメクジにかけて遊んでたからね!

お嬢のおてんばも、時には役に立つことがあるのですな。

あたしだって、いつも何も考えずに遊んでるわけじゃないのよ。

とにかく、これで村の人を安心させることができそうですね。

今回は特大のアイスクリームくらいもらわないと、やってられないわね!

などと言っているうちに、もうそろそろ村ですが……ムゥ、何か様子が変ですぞ。

姫様! む、村が……!

な、なにこれ……一体どうしたっていうの……!?

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