黄昏のクレイドリア

20-5

エピソードの総文字数=1,878文字

<その頃、ロージア 宿屋の食堂にて>


カノンたちは旅路で疲労した

足を休めるべく、

宿屋へと足を運んでいた。

とりあえず、

今日はロージアでのんびり

足を休めるとして、

明日の朝に闘技場へ発ちましょうか。

りょーかい!

いやー、お腹すいたなー。

パンにスープにラム肉に……

あっ、ミートパイも食べてーかも!

よくそんなに

食いたいものが浮かぶな……。

オレは育ち盛りだから

食えるときに食っとかなきゃ

いけないんデスー、

イーリアスサンももっと食って

その細い身体をどーにかした方が

いいんじゃないデスカー

それはあたしも思うわ。

あんたは普段の食べる量が

少なすぎ……。


あたしの食べるものに

口だす前に、自分の食事を

見直しなさいよ。

…………善処する。
よくそれで

鎌ぶん回せてるよなー


……ん?

どうしたの、セシル?
あれ

言いながら、セシルが

指差した方向へ視線を移すと、

店内隅のテーブル席に、何時しか見た

青髪の青年が腰かけていた。

………………。
あれ……ディーン?!

やっぱそうだよな!

あいつ、フォレストレンジャー

なんじゃなかったっけ?

誰だ?

呪いで暴れて倒れたあんたを、

スクオーラまで

担いでくれた張本人よ。

イーリアスに説明をしながら、

カノンは冷や汗を流す。

自身の推測が正しければ、

恐らくディーンは……


そんなカノンの懸念は露知らず、

セシルはディーンのいる

横の席へさっさと腰掛け、

親しげに声をかけに行っていた。

よう、ディーン!

わっ?! 

せ、セシル?

……に、カノンも!?

どーしたんだよ。こんなところで。

もしかして、ディーンも

闘技場に行く口かー?


森での仕事は空けて大丈夫なのかよ?

いや、それがね…………
フォレストレンジャーを、

クビになっちゃって

!!

フォレストレンジャーを

クビになったぁ?!

いやはや、

お恥ずかしい話で……。

まぁ……、二週間も報告が空いてたら

代役をたてるしかないからね。


雇い主も申し訳なさそうに

俺に解雇を通告してくれて、

逆に辛かったなぁ……。

(理不尽な解雇に

 この語り口……こいつ、

 かなり不幸慣れしてるな……。)

………………。

カノンもセシルにならって

同じテーブルに腰かける。

しかしぬるいエールを片手に

対面でしみじみと自身の状況を語る

ディーンをよそに、

カノンは固まっていた。

(……ディーンは、

 あたしを助けたせいで)

直接的な原因でなくとも、

カノンの救援に応じたことで、

ディーンは職を失ったのだ。

それを全く気にかけないほど、

カノンは図太い性格ではなかった。

蓄えもそこまであるわけじゃ

ないから、闘技大会にエントリーして

賞金でももらおうかな!


……なーんて、考えてたところだよ。

……ごめんなさい、

やっぱり迂闊に

巻き込むんじゃなかった……

そんな、カノンが

気にすることじゃあないさ。

あの時君についていくと

決めたのも俺だからね。


謝られるより、感謝されるほうが

俺としては嬉しいかな!

ディーン…………。
イイ奴だなーお前!

ついでにオレにもなんか奢って

今のうちに善行ポイント貯めておかねぇ?

善行ポイント?!

そ、それはどうかな……。
セシルの冗談をかわしつつ、

ディーンはイーリアスへ

視線を移す。

いや、魔術師君も

回復したようでよかった。

……どうも。
ここのご飯は美味しいから、

たくさん食べて

力をつけていくといいぞ!

(そんなに俺は細く見えるのか……。)
…………。
ディーン。
はいはい、何かな?

美人の女性が頭〈トップ〉の

職場があるっていったら、来る?

詳しく聞こうか


……って、ひょっとしてそれって

カノンたちの……?

ご明察。ちょっと野暮用で

一度闘技場に行ってから

本部に戻るけど、あなたはどうする?

もちろん、ご一緒させて

いただきますとも!

……というわけで、

いいわよね?二人とも

異議なーし

俺はディーンとの

面識がないからなんとも言えないが、

リーダー命令なら従うさ。

隣に座るイーリアスと、ディーンの横で

肩肘をつきながら話を聞いていた

セシルに目配せをする。


どちらも"わかっていた"とでも言うように、

別段驚いた様子もなく、普段通りに言葉を返した。

歓迎されてる、んだよな……?

されてるされてる。


……あっ、

おねーさん、あたしサイダーで。

あっ、オレも!
俺は葡萄酒で。

給仕に各々希望を伝えると、

程なくして、3つの木製のコップが

中身を伴って運ばれてきた。

…………。
…………。
…………。
えっ、なになに?
いや、此処はリーダーらしく

音頭をとるのかなーと

なるほど、そういうことね

……ごほん。

3人の視線を受けながら、

それらしく咳払いを一つすると、

皆が飲み物を手に持ったことを確認すると、

自身も器を掲げた。

それじゃ……月並みだけど、

みんなが無事に生還したことに――――

〈一行〉

乾杯!

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