フェンリル娘と始める異世界生活

異世界はやっぱり騎士甲冑!!

エピソードの総文字数=1,972文字

うわああああああああ!
グルウウウウウウウウ!!
ガアアアアアアアアアアアア!

暴漢に追いかけられているよりも数倍の濃度を伴った恐怖がシューマの体中を支配していた。



顔を悲痛に歪ませ、涙や鼻水よだれなどの体液を垂れ流していた。



下半身のほうも堰を切ったように放出し続けている。

もう無理もう無理!

平時であればどんなに無様かと思うが、今のシューマにとってそんな事はどうでもよかった。



現実世界にはそうそう居なかった凶暴な怪物から逃げていると嫌でも気付くものがある。

まだ追いつかれていないんだけどぉ!!

10数える間に瞬時につかまって食い殺されるのがオチだと思っていた状況がなぜか訪れない。



シューマの足が高速で動いている。



それも今までの人生の中で最大級の速さで。



というのも語弊があった



シューマは自分の限界の何倍も速いスピードで走っていたのだ。



そうでなければ俊敏な野生動物から逃げられるはずがない。

グルううううううううううう!!

十数体のオオカミモドキの威嚇と苛立ちを伴った唸り声が耳朶をうつ。

今のシューマはなぜかオオカミモドキと同じスピードで走れていた。


いつまで走ればいいのぉ!!?
シューマはすぐに訪れない死に、いつまでも安堵が得られず発狂しそうな心情のまま異常な速度で走り続けた
走り始めて数分が経ち、迫りくる恐怖に常識が溶け出し自らオオカミモドキの餌になりに行きたい欲求に駆られていた
もう無理だもう無理だ……!
うめくような声を上げるシューマ。

少し痛いだろうが、いやだいぶ痛いだろうがそれでも今のこの恐怖からは逃れられる。


もうゴールしてもいいよね……。
安易な方向に流れていきそうになった瞬間。

前方に人間大の大きさの何者かが数人分見えた。

人おおおおおお!
ほぼ野生に帰りかけていたシューマは今出せる最大の歓喜の叫びをあげる
助ああああすうううううけええええてぇええええええー!!!
ん!!?一般人か!!?なぜあんなところに!

人影は5人。

そのうちの中心人物らしき1人が、命の危険にさらされている人特有の叫び声を聞き分け、残りの4人に注意を促す。

全員が全員分厚い全身鎧≪フルプレートアーマー≫をまとっている。中世の騎士か。

彼らは即座に振り返る。ガチャリと鎧のこすれる音を立たせながら。

敵性体ヴァンディットウルフ!!

推定距離1000メルト!!

その数15体!なんて数だ!

民間人が襲われています!このままだと確実に殺されます!

救けに行きましょう!

もちろんだ!フォーメーションは通常通りだ!一人三体はやれよ?

行くぞ!

(しかしなぜ彼は今まで生き残って居られたのか……一般人ならそれこそ瞬く間に食われるはず。もし彼が開拓者だったとしても装備に違和感がある。あれはただの普段着だ。あれでは何の守りもない裸と同然だ)


騎士甲冑の中心人物はもの思いもほどほどに駆け始める。

一瞬でトップスピードに乗る。

号令を受けた4人は戦闘の1人に続き強く地面を蹴る。

彼ら5人は数十kgもしそうな全身鎧を纏いながら通常の人間では決して出せないようなスプリンターのような高速で走り出す。とても人間業とは思えない。

おっっそい!!
だがそれはシューマにとってはとてつもなく遅かった。

今のシューマの方が数倍早いくらいだ。

うわあああああああ!おそいおそいおそい!はやくはやくはやく!
救いの手がゆっくりゆっくりと伸びてくる現状に耐えられなくなったシューマは無我夢中で救いの手が早く伸びることを願った
(ーーー何だ!?)
鎧をまとった騎士たちの身体の周りからオーラのようなものが漂い始めた。


スピードアップ!』『スピードアップ!』もっと早くううう!
その靄が纏わりはじめてから騎士たちが心なしか速くなっているのに気付いた。

シューマはその靄がスピードアップのキーだと直感し、騎士の彼らにもっとその靄を増やして欲しいと願った。

グンッ!
なっーー!?これはまさか『スペクトル現象』か!?
すると騎士たちのオーラみたいな靄が一気に膨らみ、彼らのスピードが目に見えて上がった。

ちょっと本気になったと言うレベルでは無い。

速度は1.5倍から2倍へ。2倍から2.5倍へ。

今までとは隔絶するスピードが出始めていた。

双方の距離はみるみる縮まっていった。
接敵ッッ!かかれーー!!
オオオオオオオオオオオ!!!
お願いだ!『騎士様たちが強い部類でありますように!

オオカミモドキが雑魚の部類でありますように!!

そして合流直前。

騎士たちは己の武装を握り、オオカミモドキに立ち向かう。

シューマは騎士たちがオオカミモドキよりも強いことを、オオカミモドキが騎士たちより弱いことを『願った』。

これで騎士様が食われたりすると今度は良心的に死にそうになるから勝ってくれ!お願いだから!


とたん騎士たちとオオカミモドキから別種の色の靄が発生したーー。

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