黄昏のクレイドリア

19-1

エピソードの総文字数=1,272文字

…………。
…………ん、
あっ、

起きた起きた

此処は……

スクオーラよ。

もうあの村での出来事は、

とりあえず収まったわ。

…………。

言葉を受け、辺りを見回す。

村の寂し気な景色ではなく、

格調高い空間が広がる。

傍らでカノンはベッド横に腰かけ、

手慣れた様子でリンゴの皮を剥いている最中だった。

俺は、どれくらい

眠っていた?

その辺、

ちょっとややこしいけど

今聞く気ある?

聞くだけなら問題ない。

そう。

それなら言うけど……

事態が収束した後、

ここに担ぎ込まれてから

あんたは丸一日眠ってたわ。


でもね……

あたしたちがあの遺跡を

調査した日から、今日までで

約2週間経過してるの。

……この意味がわかる?

あの村を現した結界が、

本来の時間と時の流れが

異なっていた、か?

(わかってた……、か。)

あんた、

いつから気づいてたの。

村人の正体だって……。

違和感を感じたのは、

遺跡から脱出した時からだ。

あの日はまだ、

月は半分だったはずなのに、

満月の時の魔力を感じた。

先に遺跡を出て、

何が起きたのか確かめようとした。

その最中に暗殺者と交戦し、

魔巧具が破壊された。


だから俺は焦った。

…………。

そして、気づけば

俺は地下牢の中。


そうしてお前も放り込まれた時に、

魔力の器が空の……

主犯の男が"満月"と口にしたのを聞いて、

予感は確信に変わった。

その後は……

お前たちのほうが

よく知っているだろう。

……なるほどね。

まぁ、目を覚ましたなら

良かったわ。

その調子で養生して、

早く動けるようになってよね。


セシルは代わってくれないし、

ほとんどあたしが

面倒みてたんだから。

やれやれと肩をすくめながら

イーリアスから視線を外し、

話を聞く最中で切り分けた

リンゴの一つをとり、

口の中に放り込んだ。

…………それだけか?
え?

……あんたの話の核は、

その先だと思っていた。

…………。

セシルの反応は当然だ。

薄情な上に、力を制御できない

殺人鬼。それが俺だからな。

……信用できないだろう。

そんな危険因子は。

むしろ、襲撃されたお前自身が

強く思ってるはずだ。

いや?
………………、
は?

あたしはあんたを信用してる。

そうじゃないと、今ここで

フィリカがあんたを

寝かせてくれるわけないでしょ

…………。
…………。

疑問符を浮かべたままの

イーリアスに、カノンは

ため息をついてから口を開いた。

契約――――

あんたはあたしと

契約をしたでしょ。


"献身"と"守護"。それに背けば

痛みを与えられる……

でも……、あたしは

あんたに地下牢で襲われた時、

その痛みは感じなかった。


だから、あのとき契約は、

献身よりも守護のほうが、

効力が強く働いてたってことでしょ?

あんたはあたしを守ると言った。

その言葉に偽りはなかった。


あたしには、それで充分。

正気か?

正気じゃなくても、

まずは相手を信用しないと

やってらんないでしょ

ンぐっ

とにかく!

余計なことは考えないで、

リンゴ食べて寝てなさい。

……あんたは、

色んなものが

見えすぎなのよ。

イーリアスの口に

リンゴを突っ込むと、

言葉を告げながら

部屋を後にして、扉を閉めた。

…………。

(色んなものが見えすぎる、か)

(初めてだよ。あの人以外に

 その言葉を言われたのは)

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