ハロウィンナイトカフェ

窓際のテーブル6「Ex Quest:ハロウィンナイトパーティー」碧るいじ

エピソードの総文字数=2,939文字

Ex Quest:ハロウィンナイトパーティー


碧るいじ

midori64

とりっくおあとりーと♪

……4名様ですね、この野郎。


窓際族がお似合いです、そちらへどうぞ。

あれ、スルーされた……。
不愛想でもキャラ作りで許されるバイトっていいよね。

喫茶『エブリシング』、ただいまハロウィンイベント実施中。


駅前商店街の総力を結集したパレードを特等席から眺められることもあり、店内はごった返している。

窓際は特に人気なのだが、ちょうど席が空いたのは幸運だった。


目つきの悪いアルバイト従業員に4人掛けのテーブルを案内され、男子高生と女子小学生、向かい側に女子高生二人が腰掛けた。

他の客からもあまり目立たない店舗の隅っこということもあり、早速愚痴る従業員。

midori64

お前に紹介されたアルバイトだということを忘れてたぜ。


情報を売りやがったな?

ここの会計は彼女達が持つのでそこんとこよろしく。


せいぜいサービスしてあげてよ。

目つきの悪い従業員は狐顔の男子高生にこのアルバイトを紹介してもらったのだ。


この日のための臨時アルバイトは仮装をしており、接客態度が適当でもキャラ作りで許される空気なので、愛想のない彼にとっては願ってもない話だった。

midori64

サクトくん、こっちでも黒づくめだね。


魔法使いもいいけど吸血鬼も似合ってるよぉ♪

そういうお前はこっちでも魔法少女かよ。
魔女っ娘だよぉ。
どっちでも一緒だ。

ちなみにヒメリちゃんは使い魔のニャンコだよ。


可愛いでしょー♪

……お兄ぃの使い魔だもん。

midori64

猫耳の小学生がアルバイト従業員にしがみつき、「フーッ!」と威嚇する。

彼女は彼の実の妹だ。


その姿がまた可愛いと、二人の写真を撮る魔女っ娘。

midori64

委員長は仮装しなかったんだな。

気分が悪いのか青ざめた顔のもう一人の女子高生に声を掛ける。


仮装行列の中にはリアル過ぎるガチな参加者も居る。

ビビリの彼女にとってさぞ心臓に悪かったことだろう。

midori64

レンタルで余ってたの露出の多い衣装しか残ってなかったから。


そんな破廉恥な恰好、私には出来ないわ。

だが委員長、あっちの世界ではあんたがナンバーワンだ……。
サクト、僕にはコメントないの?

妖怪ねずみ男だろ?


似合い過ぎててコメントする気も起こらん。

狐男だよ!


ほら、このフサフサの耳をよく見てよ!

黄色いフードについた耳を指差す男子高生。


吸血鬼アルバイトは無視してオーダーを尋ねた。

midori64

ハロウィン限定パンプキンキャラメルパフェをウルトラデラックス盛りで!

midori64

容赦ない……。


(ヒソヒソ)イズミちゃん、今度お金返すね……。

(ヒソヒソ)私だけ仮装してないし、この子の分は私が出すわ。
……ちっ、妹の分は俺のバイト代から引いてやるよ。
サクトくん、やさしー!
やっぱりシスコンなんだ……。

お兄ぃ大好き!


一度おっきなパフェを一人で食べてみたかったんだよねっ!

midori64

ごろにゃーんとなつこうとする化け猫。

吸血鬼は鬱陶しそうに頭を鷲掴みにして引き剥がした。

midori64

それじゃあ私は……シチリア風カボチャのクリームパスタで。

ハロウィンナイト特製フレンチトーストセット。

ドリンクはキャラメルマキアートで。

僕は手堅くオムライス。
がっつり食うんだな、お前ら。


暫く居座る気か……。

友人達のオーダーを取り終え、他のテーブルの接客に行く吸血鬼。

midori64

お兄ちゃんの働いてる姿かっこいいね?

(やっぱりこっちの女がお兄ぃを狙ってるのか……。


家族から手懐けようとしてるのバレバレなんだから!)

midori64

今日みたいな特別な日でもなければあんな不愛想な男、即クビでしょ。


まるで接客態度がなってないわ。

相変わらずツンツンしてるね、委員長は。
4人の視線を背中で浴びながら働く吸血鬼。

midori64

……糞うぜぇ!
ご注文の品は出揃いましたか、お客共。

いや、ご注文の品はウサギだよ?


早くケチャップで可愛いウサギ描いてよ。

ちっ。

仕方なくオムライスの上にケチャップを絞っていく吸血鬼。



『Go to hell』

midori64

なんかカッコイイ!

midori64

血文字のように滴り落ちたケチャップ文字に喜ぶ妹。

たぶん意味は分かってない。

midori64

ところでお兄ぃ、わたしのパフェ来てないよ?

midori64

目の前にあるだろ?

これわたしの?


凄く……小さいです……。

midori64

下腹が出て幼児体系に戻ってきてるの知ってるんだからな?


奢ってやるだけでもありがたく思え。

真っ赤になりながらも反論出来ない妹。

midori64

うぅ……いただきます……。


あれ、美味しい。

この赤いゼリーみたいなの何?

midori64

にんじんゼリーだ。
ぶーっ!!

midori64

吹き出す妹。

midori64

お兄ぃの鬼ぃ! 悪魔ぁ!

midori64

あくまで吸血鬼だし。
ヒメリちゃん、パスタでよければ交換してあげようか?

甘やかすな。


こいつはただ食わず嫌いなだけだ。

(この女に借りを作るのは嫌だ……!)

midori64

やけくそ気味に食べ始める妹。

midori64

ヒメリちゃん、偉い偉い♪
(悔しいっ! でも美味しいから食べちゃうっっ!!)

midori64

案外ちゃんとお父さん代わりしてるのね。

何だよ、委員長。俺の方をじっと見て。


ケチ臭いとでも思ったか?

べ、別にそんなこと思ってないわよ!

頬を染め、ぷいっとそっぽを向く制服姿の女子高生。


タイミングが悪いことに窓越しに張り付いたゾンビと目が合った。

特殊メイクを施した子供が外から店内の様子を覗いていたのだ。

midori64

きゃああああ!?

反射的に隣の魔女っ娘に抱き着き、よろめいた魔女っ娘がさらに吸血鬼にしがみつく。


突然の悲鳴に店中の人間が注目した先には、ズボンをずり下ろされた変態吸血鬼の姿があった。

midori64

お疲れ様、サクトくん。
おまえ……待ってたのかよ。
店舗の裏口に魔女っ娘が一人佇んでいた。

midori64

イズミちゃんは門限があるからって。

ヒメリちゃんは四十万(しじま)くんが連れて帰ってくれたよ。

四十万くんにしかなついてくれないし……。

人見知りが激しいからな。


ハルは昔からの知り合いなんだよ。

パレードまだやってるから……少し一緒に見ていかない?


実はイズミちゃんとヒメリちゃんがあの調子だったから、よく見れなかったんだよぉ。

駅まで一緒だし断る理由もなかったので、従う目つきの悪いアルバイト。

二人でパレードを見ながら練り歩く。

midori64

急に押しかけてごめんねぇ。
まったく、おまえらのせいで散々だったぜ。
ごめぇん♪
嬉しそうに思い出し笑いしながら言うな、痴女。
帰りは吸血鬼のコスプレしないの?

アレは文化祭で使う予定の衣装だからな。


万が一どっかに引っ掛けて破いたりしたら委員長がキレる。

そう言えばサクトくんのクラスの出し物はお化け屋敷だったね。

正確にはお化け屋敷喫茶な。


だが予行演習したかったわけじゃないぞ。

分かってるよぉ。

裏で色々やってるからお金が必要だったんだよね?


私がリーダーなのに、いつもサクトくんに頼りっきりでごめん。

手伝いたいけど、私が居るとかえって邪魔だよね……。

好きで勝手にやってることだ、気にすんな。

でも私達に協力できることなら言ってね?


イズミちゃんも本当は頼られたくてツンツンしてるんだよ?

…………。

それにしても、いつも本物のモンスターと戦ってるのに、今は現実の方が異世界みたいだよね。

どこもかしこもお化けだらけ!

目玉のカボチャの馬車のパレード見れなかったのは残念だけど。

来年またみんなで来りゃいいだろ。
……そうだね。
少し寂しそうに呟く魔女っ娘。

midori64

……サクトくん、ずっと友達で居てね。
何だよ改まって、気持ち悪い。

えへへ♪


じゃあまた明日、学校で!







※ この物語は公開中の本編より少し後のサイドストーリーです。

midori64

  • ツイート
  • ツイート
  • シェア
  • LINEで送る

ページトップへ