魔界の姫と二匹の黒猫の物語

第十二話 無理無茶無謀

エピソードの総文字数=1,940文字

ヒャッハー! 水だ! 女だ! 奪え、奪えぇ!

やめてけれ、やめてけれ!

うるせぇ! 汚物は消毒だ!!

後生だ、堪忍してくだせえ……。

ボカッ

痛ッ!

ウボッ!

おい、てめぇら! 下品な真似はやめろと言ってるだろうが!

お、お頭!

す、すいやせん。気分が盛り上がっちまって、つい……。

いいか、俺達の目的はあくまで食料と金だ。取るもん取ったら、さっさとずらかるぞ!

アイアイサー!

こ、これは……どういうこと!?

村が……村が盗賊に襲われているようです!

どうされますか、お嬢。

どうするって、やっつけるしかないっしょ!!

オラオラ! 出すもん出せや!!

ヒィィ、お助けを! さっき渡したので全部ですだ……。

まだ小銭持ってんだろ、オラァ! ジャンプしてみろや!

チャリンチャリン♪

やっぱ持ってんじゃねえか、オラァ!

ちょっとあんたら、やめなさいよ!

あァ? なんだ、おめェは?

あ、あんたはあの時の逆ナンぺたんこ娘でねが! た、助けてくれろ~。

あ、やっぱスルーで……。あんたら、続けていいわよ。

おい、チビ! おめェもさっさと金出せや!

はぁ? あんた今なんつった?

ち、チビ……金出せや……って……。

あんた、死にたいみたいね……。あたしはチビじゃないっつーの!!

ドリャァァァ!

ウボべぁぁッ!

やべェ! このチビ、チビのくせにやべェ! お頭に知らせないと……!

お、おかげで助かっただ……。あんたチビでぺったんこだけど強えだな。オラ、見直しただ。

あんたも死にたいようね……。

ひ、姫様! あちらを!

むむ……どうやら、本隊のお出ましのようですな……。

よぅ、うちのバカが世話になったようだな。

お頭、あのチビが……あのチビがやりやがったんです!
あいつ、チビのくせにすげーやべェチビで!

だから、チビじゃないっつーの!

(チビだろ……)

(チビだよな……)

(チビかと……)

(チビですな……)

フッ……こりゃ失礼した。うちのもんにはよく言い聞かせとこう。

ま、こんなバカどもでも可愛い手下なもんでな。悪いが、亡骸は引き取らせてもらうぜ。

(お頭、オイラまだ死んでません……)

ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! 村の人達から奪ったものを返しなさいよ!

おい、嬢ちゃん。そいつぁ出来ない相談ってもんだ。

は、働かざる者食うべからずって言葉を知らないの!?
あんた達は他の人ががんばって働いて手にしたものを奪ってるだけじゃない!

おぅ、いっちょ前な口を聞くじゃねぇか、お嬢ちゃん。働かざる者食うべからず、か。

俺たちにとっちゃ、これがその「働く」ってヤツなわけよ。

は? あんた達がやってるのは単なる略奪でしょ!

なら質問させてもらうが、狼は何を食べて生きてるか分かるか?

そ、そりゃ……ウサギとか……。

じゃ、狼はウサギの持っているもの……生命を奪ってる、ってことだよな。狼にとっちゃ、それが「働く」ってもんだろ。

で、でも……狼は動物だし!

おいおい、俺達だって動物だ。生きてくためにはおまんまが必要ってわけだ。
狼も、俺達も……嬢ちゃんだってそうだろ?

そ、そんなのおかしいわよ!
だって、だって……そうよ、村の人達にも生きる権利がある!!

おぅ、だから生きてくのに必要な分は奪ったりしねぇよ。
俺達は殺しはしねぇし、村がなくなったりしたら、おまんま食い上げになっちまうからな。

だからって……!

この村は最近調子がいいって耳にしたもんだからよ。

てめぇらが死なねぇよう、潤ってるところからちぃとばかし借りる。なんか間違ってるか?

……!!

姫様……。

……クッ。

もう話は終わりか、嬢ちゃん?
なら、引き上げさせてもらおうか。

……なさいよ。

あん?

待ちなさいよ!
村の人達のものを……返しなさいよ! 今すぐ! 返せ!!

だからそりゃ出来ねえ相談だって言ってるだろうが。

やれやれ、聞き分けのない嬢ちゃんだぜ。

なら、無理矢理にでも取り返してみせる!

ほう。俺達が力で奪ったものを、力ずくで取り戻そうってか。それじゃ、俺達と変わんねぇな。

うるさい! 黙れ!!

お嬢、ここは冷静に。この男、相当な……。

うるさい! うるさい、うるさい、うるさい!

おッと。無手で突進してくるとは、よほどのバカか自信があるか。ま、見上げた根性だ。

お前なんか、お前なんか……!
うわぁぁぁぁぁッ!

だが、無理無茶無謀は通らねぇのが世の中の道理ってもんよ。大体、身体の使い方がなっちゃいねぇ。ほらよ。

ドサッ

ひ、姫様……!!

う、うぅぅ……。

俺は女子供に手出しはしねぇ主義だからよ。運がよかったな、嬢ちゃん。

……っく。あんた……名前は……。

あぁ、俺か? 俺は『暁ノ狼』団長のヴィンドルフってもんだ。

ヴィンドルフ……あんたは……あんただけは……!

フッ……ま、もう会うことはねぇかもしれんがな。じゃ、あばよ。

おぅ、てめぇら、引き上げるぞ!

……。

ぬぅ……。

姫様……。

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