マジカルミュージック

囚われの蝶と籠の中の鳥②

エピソードの総文字数=1,690文字

    その日から、昴と里紗は一週間後の大河と郁の為、作戦を実行し始めた。

    しかし、里紗はあがってしまってなかなか曲にならない。一回吹き終わる度に、里紗はフラフラになって、椅子に腰を下ろしてしまうぐらい……里紗は、緊張していたのだ。手も異常に震え上がり、冷や汗が激しく流れ落ちていた。昴は、その度に練習を中断し、休憩を挟んでいた。

    あのクラリネットソリストの高山里紗が、あがり症……となるとどうして今まであれだけ出来ていたのか分からなくなってくる。

2017/08/12 14:42
里紗……マジでごめん……
2017/08/12 14:47
何が?    私は、気にしてないよ……。ただ……怖い
2017/08/12 14:47
    里紗は、震えながらそう言った。

    誰だって怖いものはある。歌音も人の心が怖いのと同じように……

2017/08/12 14:48
里紗は、自意識過剰過ぎるよ……
2017/08/12 14:49
それぐらい過剰じゃないと私は、弟に勝てない……お母様にも……。だから、私は……誰にも負けるわけにはいかない!!
2017/08/12 14:49
里紗のお母さんは、確かにすごいと思う……。でも、自分は自分だよ!!   だから、里紗は里紗らしい演奏をすればいいんだよ!!
2017/08/12 14:51
自分らしい演奏って何?    昴くんも悩んでるんじゃないの?    歌音さんが指揮者になってから……私たちは、振り回されているのよ!!
2017/08/12 14:53
確かにそうだけど……。歌音さんの指揮が別に悪いわけではないよ……。でも、俺は……まだ歌音さんを信用しきれないんだ
2017/08/12 15:11
    昴は、今までの心の縁に引っ掛かっていた歌音への思いを吐き出した。

    信用できない……何が?

    分からない……でも、信用できない……。

    それは、昴と里紗が本当の歌音の姿を見ていないからであって、二人に否はない。

    ただ……ここまで心を閉ざし続けてきたことには、理由がある。

    これも神様の悪戯だ。神のみぞ知る世界……、って言葉がある。

    だから、二人は殻に閉じ籠った。里紗は囚われの蝶となり、昴は籠の中の鳥になったのだ。

2017/08/12 15:12
さぁ、そろそろ練習しないとな……
2017/08/12 15:16
そうだね……。今度こそ間違えないようにするから……
2017/08/12 15:17
別にミスってもいいよ……練習だから……
2017/08/12 15:17
私は、ミスが嫌い……。だから、間違えないようにするわ……
2017/08/12 15:18
この完璧主義者め……
2017/08/12 15:27
完璧主義者のどこが悪いの?
2017/08/12 15:28
    里紗は、昴を睨み付ける。

    昴は、それに気がつき、黙ってしまった。

2017/08/12 15:28
じゃあ、楽器を構えて!!    一、二、三!!
2017/08/12 15:29
    四のタイミングで昴と里紗が息継ぎをし、最初の一拍目の音色を奏でた。最初の出だしは、好調だ。八小節目のクラリネットのメロディーが始まる。

    しかし……

2017/08/12 15:30
デロン♪    ボローン♪    デデーン♪    ピキィー♪    キィー♪    (滅茶苦茶&不協和音)
2017/08/12 15:32
ストップ!!    ヤバい……音楽じゃない……。これじゃあ、魔法の絨毯が墜落するよ!!
2017/08/12 15:33
墜落すればいいのよ!!    リア充は爆発しろ!!
2017/08/12 15:35
いやいや……爆発したら終わりだから!!    アリババがお姫様との愛のロマンスのシーンで流れる曲だよ……!!    これじゃあ、ロマンス以前の問題だよ……
2017/08/12 15:35
ロマンスってどんな演奏よ!!
2017/08/12 15:37
    ロマンス以前に、ロマンスの意味を理解していない里紗が、この後も曲中で暴走を繰り返し、いつしか放課後になって、夜になっていた。
2017/08/12 15:38
ひっどいね……
2017/08/12 15:45
すみません……
2017/08/12 15:45
    二人は、地面に倒れこんでいた……。

    床には、二人が流した汗がポタポタと染み込んでいた。

    里紗のクラリネットから垂れ流れた唾も含まれているだろう。

    昴もホルンの管に貯まった唾を雑巾の上に捨てている。

    こんなにも疲れるなんて思っていなかった。

    里紗は、ため息をついた。

2017/08/12 15:45
本当に私の重度のあがり症を治すつもり?!
2017/08/12 15:48
当たり前でしょ!!    俺が死ぬような事があっても……里紗のあがり症は治してみせるさ
2017/08/12 15:57
一人ならできるのに……皆となるとあがるから無理!!
2017/08/12 15:58
じゃあ、皇帝性格の圭にお願いしようか?
2017/08/12 15:59
お断りします!!
2017/08/12 15:59
    里紗は、大きな声で圭にお願いすることを拒否したのであった。

    それを見た昴は、声をあげて笑ったのであった。

    アンサンブル披露まで後5日。

2017/08/12 16:00

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