ハロウィンナイトカフェ

テラス席1「ゴリ先生の課外授業」東雲飛鶴

エピソードの総文字数=2,301文字

「ゴリ先生の課外授業」東雲飛鶴

izuru_s

うっわ~……すごいパレードですねえ、先生
どうだい、ちょっと遠いけど来て良かっただろう?
ですね~。でも、私もパレードに参加したかったな~。
済まんな。気付いた時にはもう、エントリーを締め切っていたのだよ。

この桟敷席での観覧でガマンしてくれたまえ。

いえいえ、連れてきて下さっただけでも嬉しいです。
では、食事も済んだことだし、そろそろ始めるとするか。
なにをです?
課外授業だよ。
え――――っ、ここでですかあ????
さあ始めるぞ。

いま左に歩いていったエルフのコスプレ。

君ならあの衣装、どこを手直しする?

えーっ、そ、そうですねえ……

(じーっ)

まず、服地と金のふちどりの素材がミスマッチですね。直すなら二択。

縁取りを生かす場合。

服地をもっとマットなものに変更、フェイクスエードかフラノあたりでしょうか。

そして服地を生かす場合。

ラメの入ったテープかゴールド系ブレード、もしくはゴールドのフェイクレザーを使用……かな。

他にはあるかな?
あー……あ!

手袋とブーツがすごく安っぽいし、時代が新しすぎて合っていませんね。

100均で売ってそうなあんな手袋をはめるくらいなら、まだ素手のほうがマシ。

ブーツもあのまま使うより、せめて汚しを入れるとか、服にあった素材で被覆するなりしたいところです。

うんうん。そうだね。

まだあるかな?

それから……あ、あの背負っている矢筒。

外装を古風に被覆しているのは高ポイントですが、中身の矢がおもちゃ過ぎて……。

あれでは大減点せざるを得ません。

弓の方はおざなりに塗装してありますが……まあ、雰囲気はそれほど損なっていませんので、まあプラスマイナスゼロ……でいいかな。

本当ならもっとエルフらしい、凝った装飾を施したいところですが……衣類と造型は別スキルですから、あまり無理を言うのもかわいそうですね。

うむ。合格だ。

さあ、私のパンプキンパンケーキを一枚進呈しよう。

あ、ありがとう……ございます
ゴリ先生は、自分の皿から彼女の皿の上へ、パンケーキを器用に移動させた。

彼の手には通常のカトラリーは小さすぎて、ままごとの道具に見える。

izuru_s

さて、次は……あのゾンビだ。
(もぐもぐもぐもぐもぐ……)


んーんーんんむむんむーぐぐーむんむー

すまん、日本語で頼む。

まず先に口の中のものを飲み込んでくれたまえ。

(もぐもぐもぐ……ごっくん)


……さて。

あのゾンビ、ですね。

まず、メイクがいいかげんですね。

足と腕が露出しているのに、顔だけ青黒いです。

化粧品が足りないなら露出しなければいいのに……。


それから血糊。

死後ある程度経っているような肌色なのに血はずいぶんとフレッシュですね。

もっと赤黒くして、あちこち乾いてこびりついたカンジにしないと。

頭に刺さっているナタの血も全く色が違います。これ、売ってる状態で着色された血糊でしょうか……。そのへんのなんちゃって仮装民と一線を画してコスプレとして参戦してるのに、こういう初歩的な部分で手抜きをされるとガッカリしてしまいます。

さすがに二人目はよく見ているね。

他に気付いたことはあるかね?

そうですね……。

あとは、衣類ですね。ダメージ加工の再現度がパーツによってまちまち過ぎます。

ズボンの裾はかなりがんばっているのに、シャツの方はハサミで切りました、みたいな雑さで、すごく残念です。時間切れだったのでしょうか。


よろしい。では、このパンプキンパンケーキを進呈しよう。
ど、どうも……
カップが空だな。お茶を注いで差し上げよう。

さあ、こちらへ。

ありがとうございます。

……ポットが小さくて、注ぎづらそうですね。

はっはっは。もう慣れたよ。

さすがにゴリラ用の食器は売ってないからね。こちらが慣れるしかあるまい。

さあどうぞ。

いただきます。

……あの、少々お伺いしてもよろしいですか?

うむ。

プライベートな事以外なら何でも聞いてくれたまえよ。

私……前々から気になっていたのですが。

先生って、ゴリラなんですよね?

いかにも。

私は知性あるゴリラ。

人間の友だ。

ええ。それで……今日気付いたんですが……。


その背中の……チャックは一体?


ああ、これかね?


ふふふ……。


ゴリラの着ぐるみのコスプレだよ。

コスプレ――!?


そうだったんですか……

いかにも。

今日はハロウィンだからね。

コスプレ……そうですか。

先生、申し上げてよろしいですか?

うむ。伺おう。
今のなりをコスプレと称するのなら……


ファスナーの布が体毛から浮いています。

きぐるみに見えません。

肌の露出している顔、指、足の質感がリアルすぎます。もっとゴムっぽくしてください。

それから唇や目のまわり。可動部まわりが自然すぎます。もっとメイクっぽくしてください。

あと体毛がナチュラルすぎます。もっとフェイクファーのようにゴワゴワに。リンスなんて言語道断です。石鹸で洗ってバッサバサにしてください。

それから――

そ、そ、それから……?(滝汗)
体臭がケモノくさすぎます。

もっとゴムっぽいフレグランスをつけてください。


これで完璧です。

ガガガ━(ll゚д゚ll)━ン!!


け、け、けもの……くさい……私が……けもの臭い……そう、ですか……あはは……そうなんですね……ああ……そう……あはは……

あれ?


ゴリ先生?


ちょっと?


うずくまって具合でも悪いんですか?


あの?


どうしたんですか?


あの?


ゴリ先生?


大丈夫ですか?


ゴリ先生!?


ゴリ先生!!??

落ち込んだゴリ先生が復活するまで、ゆうに一時間を要した。


その後、ゴリ先生は帰り着くまでずっと無言だった。



……明日が怖い。


                                 (了)

izuru_s

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