放蕩鬼ヂンガイオー

16「ヂゲン・エンド――なのだ」

エピソードの総文字数=2,094文字

「――凍てつくヂゲンに金棒一閃、燃やせ心のLAE! アキバを照らす一番の星、放蕩鬼ヂンガイオーッ、時空を越えて大参上! なのだ!」
「ヂンガイさん、放送が始まります! 爆発的にLAEが集まりますから備えてください!」

 くまりの指摘は耳に届いているのだろうか。
 ヂンガイは自身の両手を見つめながら震えていた。

「もう集まり始めてるのだ。……すごい、初めてアキハバラで戦ったときもびっくりしたけど、これは、もっと……」

 今まで積み上げてきたすべての作戦が、とうとううまく回り始めていた。

 そうだ、力を合わせた俺たちが負けるわけがない。

 覆面AQの臨時アナウンサーがカメラに向かって実況する。
 会場は大いに盛り上がり、人々は上空にLAEの光を大量に打ち上げた。

 関係者だって負けてはいない。
 司会席から降りてきた雁が叫ぶ。

「悪とはいつだって強大なもの! それを打ち破ることこそがヒーローのカタルシスだッ! 幾多のヒーローごっこを繰り広げたきみに、勝てぬ相手などいない!」

 隣で腕組みしている天甚も声を荒げる。

「ワシの教えを忘れるんじゃねいぞ! やってやれヂンゲエ!」

 くまりだって負けてはいない。燦太郎の隣から精一杯の声援を送る。

「ヂンガイさん、くやしいけどあなたにお任せします! AQの協力、思う存分利用してください!」

 続けて空に大きな変化があった。全方位の地平線から無数の光の帯が集まってくる。

 施設の場外……それどころか市外、町外、県外、日本中からAQの臨時放送を見た視聴者たちのLAEが集まってきていた。

 かき集められたLAE全てが空の一箇所に凝縮され、一滴のしずくのようにヂンガイの背中に振り落ちてくる。

 燦太郎は改めて燃えた心を胸に集め、最後の一押しとしてヂンガイへと照射した。
 ムカデクジラを睨みつけ、裂帛の気合で吼える。

「俺たち人間、一人ひとりの力は決して強くない! だけど、だからこそみんなで力を合わせて戦うんだ! 慕ってくれる仲間を裏切り、その命まで奪うことを躊躇わないお前に、勝ち目はなァい!」
『 なんというLAE量、信じられん……ッ! 』 

 全てのLAEが蒼き液体に変化して概念心房ハートデイヂーワールドにそそぎ込まれてゆく。概念血管を介してヂグソー各部へ行き渡り、その力を余すところ無く宿らせる。

「格好いいやつ、キメてやるのだぁッ!」

 ヂンガイが両腕を腰だめに構えた。

 全身のヂグソーが体の周囲を旋回する。
 ヂグソーは、ヂンガイの頭部――額のすぐ前に浮かんだツノ型装備に次々とLAEを送り込んでゆく。ツノが青白い光をたたえ始める。その光度はコンマ秒単位で見る見る増してゆき、とうとう場内全体を眩く照らす太陽のような白光となった。

「全LAE装填完了! 蒼炎号、アンティークイテーテンレガシィのロックを解除!」

 膨れ上がるLAEを前に、ムカデクジラの巨体が脅え、退く様子が見て取れた。

『 ま、待て! 話し合おうではないか! そう、このワシと手を取り合って、新たなヂゲンの王に! 』
「そんな言葉が信じられるかしッ! 空間破砕・デリーの一角(いっかく)……じゃなくってえ!」

 ツノの光が臨界を越えた。

 ヂンガイは胸を大きく後ろにそらして頭を振りかぶり、空中に頭突きをする要領で上半身を振り下ろした。

「ガイオ・ビィィ――――――――んムゥッッッ!」
『 ぐッ! と、特大瘴気波ッ! 』

 ヂンガイがツノから光の本流を放つ。
 ムカデクジラは右腕から闇の奔流を放つ。

 二つの力は互いの中点でぶつかり、辺りに大規模な衝撃波を撒き散らした。

 建物が砕け、アトラクションが舞い、プールの水は一息に蒸発して干上がってゆく。

 両者の放つエネルギーが拮抗したかと思った瞬間、ヂンガイが歯を食いしばりながらその口角を少しだけ笑いの形に変えた。

「ごめん。この展開、けっこう好きかもなのだ。あたし自身も、ちっとばかし燃えちゃった」
『 ――――なっ!? 』

 光が闇を押し返す。

 ヂンガイ本人の生み出したLAEを加算し、増幅されたビームが瘴気波を飲み込んでゆく。

 均衡の崩れた力は容易く一方へと傾き、息を呑む間もなく暴れ狂う光がムカデクジラの本体を蹂躙した。

『 ば、馬鹿なァァァ――――――――――――ッッッ!? 』

 地が砕け、クレーターの形に抉れた大地からLAEと爆風が放射状に吹き荒れる。
 ムカデクジラは全身が端から崩れるように光に変わってゆき、やがて残りは頭部だけとなった。

『 ヂン、ガイ……オー……その名、地獄に落ちても……忘れぬ、ぞ…… 』

 最後に残った頭部……そして歯が、ついに光と化して消え去った。

「ヂゲン・エンド――なのだ」

 後には廃墟と化した施設が残されていたが、通信機で現場と連絡していたくまりがヂンガイ、燦太郎の両名に目を合わせて微笑んだ。

「死傷者ゼロ。放蕩鬼と日本AQ、初の共同戦線は大成功ですね」

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