『みじょかもんの祈り ー 心の貧しい人は幸い? ー』

02. 「恐怖の実習。1段階」

エピソードの総文字数=1,428文字

6月も終わりの頃。

私は山を登り、いつも通り、専門学校へ向かっていた。
「坂の街」長崎の山を今日も登っていく。

季節が夏に近づくと汗が服にまとわりつくようになる。
専門学校の中に入ると冷気が入り、気持ちよかった。

この頃の10代から40代の人間関係は、まだ溝があったように思う。

彼らと上手に仲間になった訓練生がいた。

年齢は2人とも30代。
私と変わらない年齢だ。

境界線などないような立ち回りで、10台の子たちに話し廻る。

1人は営業経験のある男性。
もう1人は料亭で働いていた男性だった。
この2人は、羨ましいほど、年下の子達に慕われていた。

私はというと、元教師だというのに10代の付き合い方ができてなかった。

「話しかけたいけど・・、何を話そうかなぁ。」。
10代の子とは、今まで教師という立場で接していた。
だから、悪い言い方をすれば、上から目線だったのだ。
話が合わなくても、「まぁ、いっか!」と割り切れたのだが、この専門学校では同じ生徒の立場だ。
長続きする共通の話題が欲しい。
じゃないと、これからの授業やら実習やらで空気が悪くなる。

先ほどの2人はと言えば、 積極的にボランティアなどの校外活動に参加し、10代の子たちを誘ったり、授業のノートも皆に見せていた。
「もう、本当に凄いな・・。教師の時、あのくらいやんなきゃいけなかったのかもしれないな。」と反省するのだった。

自分の前職について、クラスの人たちには教えていた。
「学校の先生だったのに?なんで?」と最初は冷たい目で見られていたこともあった。
高校を卒業したばかりの生徒にとって、元教師は、どう映っていたのだろうか。

さて、7月になると、恐怖の「第1段階実習」が始まる。
介護実習は、3回ある。
私たちが体験する最初の実習が近づいている。

なぜ、恐怖かと言うと先輩の2年生から詳しく聞かされていたからだ。

「最初の実習は、本当に毎日、大変。」
「2週間、早く終わらないか毎日考えていた。」など、いい感想は聞かない。

1つの老人ホームに、2、3名が実習する。
日が近くなる毎に、皆、憂鬱になっていった。

先ほど書いた30代の2人と仲良くさせてもらっていた。
実習に入る前の不安を、よく放課後に話していた。
「いやぁ〜、緊張すっね。やばかぁ〜。」などと長崎弁で語っていた。
「森さん、実習先、どこ行くとね?」

私が行く実習先は、自分の家からバスで15分の所にあった。
ずっと山の上である。
そこの評判は、よくなかった。

「あぁ、森さん、あそこは評判、悪か(悪い)らしかよ。」

評判とは何かというと、2年生からの情報である。
実習に付いてくれる職員が、とにかくキツイそうだ。
「まぁ、評判と言っても、10代の子の言うことだからなぁ〜」などと、私は不安をかき消すように話した。

実際に行ってみると、どうだったか。

ほとんど放ったらかしにされていた。
実習生なんて、聞こえはいいが、施設職員の方にしてみれば、面倒をみる相手が増えただけである。
忙しいのに、実習生を相手にすることは迷惑だった。

3回の介護実習には、それぞれ目的・目標が設定されている。

1回目の実習は、「施設利用者さんとのコミュニケーションを経験する」ことである。

この2週間で、私は今まで知らなかった介護の現実を、少し知ることとなる。

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