ハロウィンナイトカフェ

窓際のテーブル7「ハロウィンの魔法」如月真琴

エピソードの総文字数=6,184文字

「ハロウィンの魔法」 如月真琴

Rachel_3rd

あら、蓮華。みてちょうだい。

こんなところにカフェなんてあったかしら?

ん? たぶん前からあったと思うよ。

ハロウィンだからかな、仮装した人たちの溜まり場になってるね。

ミルカ、打ち上げはここにする?

そうね。そうしましょう♪

いらっしゃいませ!

ハロウィンナイトカフェ、「エブリシング」へようこそ!

お客様は何名様ですか?

2名よ。窓際のテーブルは空いてるかしら?
はい、すぐにご案内しますね♪
店内は外から見るよりずっと賑わっていた。

そして、とてもテーブル数が多く広い店だった。

――繁盛しているのだろう。


テーブルはほぼ満席かのように思えたが、よく見ると空席が幾つかあった。

ただの偶然なのか、それとも店員さんが絶妙に客をバラして入れているのか。

何にせよ、窓際の席が確保できたのは素直に嬉しい。

Rachel_3rd

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

さっきの店員さん、美人だったね♪

おっぱいも大きかったなぁ……。

うるさい色情魔。

バカなこと言ってないで注文決めるわよ。

メニューはグランドメニューの他に、ハロウィン限定メニューが用意されていた。

なるほど、どうりで今夜これほど繁盛しているわけだ。



どれどれ……。

『ハロウィン限定鍋焼きほうとう』

『カボチャのフレンチトースト』

『オバケ風味のクリームシチュー』

『不夜城パフェ』

『シェフの気まぐれサラダ たべないこだれだ』

『激辛!魔女狩りカレーライス』

『お子様プレート 恐怖のハロウィンVer.』

『パティシエ特製限定チョコレート680円』

『サービスキャンディ(お1人様1つまで無料)!』

Rachel_3rd

私、この店のノリに付いていけないかもしれないわ……。
いいじゃないか、遊び心は大事だよ♪

俺はそうだなぁ……激辛カレーライスでも食べようかな。

あら、あなたが辛い料理を選ぶなんて珍しい。

……食べられるの?

辛いものって字面を見ただけで食欲をそそる魔性があるよね。

もうお腹がカレーの気分だからそれ以外受け付けないぜー!

うふふ……何それ。

グランドメニューに甘口もあるわよ。

俺はそんなに子供じゃないっつーの……。
それにあなた、魔女を格好しているのに魔女狩りされていいの?
安心して。火炎耐性はS+だよ♪
取ってつけたような新設定ね……。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

ご注文はお決まりですか?
えぇ。私はオバケ風味のクリームシチューを1つ。

それから食前にダージリンティーと、食後に不夜城パフェを1つ。

店員さん、この店にはお酒は無いの?

申し訳ございません、本日はハロウィン営業ということで

アルコールの販売を一切中止しております。

ご理解いただければと思います……。

蓮華、お酒なんて家に帰ればいくらでも飲めるでしょう?

ご飯にしましょう、ご飯に。

はぁ……分かってないなぁミルカは。


じゃあ、激辛カレーライスとシェフの気まぐれサラダを1つずつ。

ソフトドリンクのジンジャエールを炭酸強めでお願いできるかな?

かしこまりました。ジンジャエールの炭酸強めですね。

ドリンクは食前でよろしいでしょうか?

もちろん!
では、ご注文を繰り返します――。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

(あの魔女さん、自ら魔女狩りカレーを注文したわ!

 なかなか分かってるじゃない!!)

17番卓様、魔女カレー、気まぐれサラダ、

クリームシチューいただきましたー。

それと食前にジンジャエール炭酸強めとダージリンティーを。

食後に不夜城パフェです。伝票送信しました。

……ってキッチンかなり忙しそうですね。

分かりましたよ。ドリンクは私が作って持っていきますねー。

ジンジャエールに炭酸水をシュゥゥゥーッ!!

超!! スパークリング!!

今日もデシャップに店員さんの声が響き渡る――。

Rachel_3rd

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

おまたせしました。

先にジンジャエールとダージリンティーでございます。

えぇ、ダージリンティーをこちらに。

ありがとうですわ♪
どれどれ、ジンジャエールのふつふつ具合はどうっかなー。

うんうん。ありがとうね店員さん♪

フードなのですが、少々混んでおりまして。

順番にお作りしておりますのでしばらくお待ちください。

私達は全然構いませんわ。丁寧にありがとう。
お気遣い痛み入ります。失礼致します。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

(ずぞぞ~~~~)

それにしても、良い店を見つけたね。

ここから見える夜景も綺麗だし、隠れた名店じゃないかな。

こんなに大きい店なのに目立たないのが不思議なぐらいだよ。

そうそう、私も気になってたの。

ひょっとしたら『能力』が絡んでるかもしれないわね。

なるほど、俺たちらしい解釈だ。

さっきからスマホでこの店を調べてるけど、全く引っかかってないよ。

エブリシング――山梨県に同名の店があるけど、もしかしてこれ?

山梨県から東京に店ごと飛んできたってこと?

……なるほど、「ほうとう鍋」に違和感を感じていたけど、

元々山梨の店だと考えれば納得ですわね。

ハロウィン限定メニューから明らかに浮いていた「鍋焼きほうとう」の文字。

これは山梨県を中心に作られる郷土料理の1つだ。

店長が山梨出身の人だっただけの可能性もあるのだが、

蓮華の情報と照らし合わせれば辻褄が合う。

Rachel_3rd

この店を飛ばした能力者、なかなか粋なことしてくれますわね♪

だからどうしたっていうの、今夜はこの店のお世話になるだけよ。

そうだね。能力者が居るからどうっていうことは無い。

素晴らしい一期一会の精神だ。


それに――俺たちにぴったりじゃないか。

何を隠そう、私たちも能力者ですわ!
ただし悪とは戦わない。

……いや、違う。そうだけど、そうじゃない。


ハロウィンだけあって、能力者たちも遠慮なく出歩いているようだ。

俺たちのこの派手な衣装も仮装扱いだし、

魔人にとって今日は生きやすい日だよ全く。

今月もたくさんの魔人たちとお近づきになれましたわね。

……もしかして、仕事の話がしたいの?

いや、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。

……ただ、良いムードだなって思ってさ。

え?

……そ、そうね。たまにはこういうのも良いんじゃないかしら。

いつも蓮華には助けてもらってばかりね。ありがとう。

むしろ俺がミルカに助けてもらってばかりだよ。

最初は地味な能力とかバカにしてたけど、

俺の能力に比べたらずっと有能じゃないか。

本当に困ったときに頼りになるのはミルカの方さ。


身体は女だが、これでもミルカの伴侶になるつもりだ。

俺にできることは何だってする。遠慮なく言ってくれ。

……………。
あなた、サラッと告白しましたわね?
おっと、さっきの発言は忘れてくれ。

どうやらアルコールが回ってきたようだ。

それは大変ですわ。

店員さんったら、間違えてお酒を持ってきたのかしら。

うふふ。

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

お姉さんたち、トリックオアトリート!

お菓子くれないとイタズラしちゃうぞー!

あら、可愛いお嬢ちゃん。うさ耳がキュートですわね。

でも残念。私はスコーンの持ち合わせが無いのだけど……。

蓮華は?

(チッ……せっかく良い雰囲気だったのに)

無いねー。サービスキャンディも貰って無いし。

不要だと思ってスルーしちゃったよ。

そっかー。お姉さんたち、お菓子くれないのかー。
…………。
うぇっ、ひっぐ……うぐ、うわああああああん!!
ちょっ、マジか!

待て待て泣き止め。すぐにお菓子持ってくるから!

あらあら蓮華が女の子泣かせましたわー。
俺のせいなのか!? これ、俺のせい!?
お姉さんのばかああああああ!!

うわああああああん!!

ほら、ミルカ、お姉さんって言われてるぞ!

つまり俺じゃない!

あんたも他人からしたら立派なお姉さんよ。諦めなさい。

ほら、お菓子をくれない人は――?

イタズラしちゃうぞ~~~~~~!!
ちょっと、あなたまさか――能力者!?
なんだこれ。体が……熱い……。
あれ、蓮華――?

彼の姿が見えなくなりましたわね。

何言ってんだお前。俺はここだぞ。
…………。

(全てを察する)

お姉さんにはこの姿がお似合いウサ♪

12時間もすれば元に戻るから、ハロウィンの間中悶えるがいい!!

おい、ミルカ。教えてくれ。

一体何が起きている――?

蓮華。あなたはどうやら、彼女のイタズラで変身しているみたい。

とても可愛らしいわよ♪

――な、なんじゃこりゃああああああ!!

おいこら、アホガキ! 元に戻せぇえええ!!

ふっふーん。子供にお菓子も恵めない愚かな大人には粛清ウサ。

しばらく子供の気持ちになって反省するぴょん!

そう言って、うさ耳の女の子は店内の喧騒に消えていった。

――そういえばあの子、どこかで見たことがあるような。

Rachel_3rd

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

うわああああ、助けてミルカぁ!

こんな姿じゃ外も歩けないよぉおおお!

い、いいんじゃないかしら。

私以外に知り合いが居るわけでも無いのだし。

それに……すごく可愛いわ、その姿。

黙れショタコン。

この獣耳のおかげで小声だってよく聞こえるぞ。

あら、せっかく励まそうと思って言ったのに。

まぁいいじゃないの。12時間ぐらいで元に戻るって言ってたのだし。

そんなこと信じられるか! 俺はアイツを追うぞ!
なんでいきなり死亡フラグを建てようと思ったのかしら。
うおっ、なんだこれ。まるで力が入らねぇ。

……くそっ、自力じゃ歩くのも困難かよ。

思ったより深刻なのね、それ。

大丈夫? お姉さんがおんぶしてあげようか?


子供扱いすんなっつってんだろーーーが!

……しかしこれ、どうすっかな。

生意気なお子様はずっとそこで困っていればいいのですわ。


そういえば料理、いい加減遅いですわねぇ。

……はぁ、どうしようこれ。

一生このままなのかな……。

たまには隣人を頼ってもいいのですよ?
ミルカ……!
――!!
ごめん、お前貧乳だけど頼っていいのか?
貧乳は全く関係ないでしょう!?
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

その時、事件は起きた――。

Rachel_3rd

うわああああああん、店の在庫があああああああ!!
どうしたのかしら。店が騒がしいわね。
ミルカ、大変だ!

さっきのガキ――!!

あっ――私もたった今思い出しましたわ。

彼女は――!!

はーっはっはっはっは!

怪盗アルセーヌ・ラヴィただいま参上!

この店のお菓子を根こそぎいただきましたウサ♪

その犯行宣言は店内の喧騒に掻き消えた。

誰も、彼女の言うことに耳を貸すことは無かった。


ただ2人、私達を除いて――。

Rachel_3rd

誰かあの子を捕まえて!

彼女こそ――世間を騒がせている怪盗アルセーヌ・ラヴィよ!!

だが、私の能力は「声を通じて思考をジャックする」こと。

これは誰よりもよく通る声――どうか、届いて!!


この店に居る全ての主人公たちよ!!

Rachel_3rd

な、なんですかこれは――!?

私の姿が脳内にぃ……!?

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

窓際のテーブル1「サメクマ百鬼夜行 嵐前の喧騒」16TONS

Rachel_3rd

どうやら怪物が姿を現したみたいだね。
あたしらの物語に水を差すなんて、いい度胸してるじゃない。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

窓際のテーブル4「なにゃまにゃ in ハロウィンパレード」 シャガ

Rachel_3rd

みてみて、まにゃちゃん!

かわいいウサギさんがいる!!

どこよー?

でもでも、たしかにかわいいね。

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

窓際のテーブル6「Ex Quest:ハロウィンナイトパーティー」碧るいじ

Rachel_3rd

うそ、強制エンカウント……!

どうしよう、まだ心の準備が……ってあれ?

勇者アプリが反応してないよ?

……現実に奇跡が実装されやがったか。

なんて日だ。早くバイト上がりてぇ……。

おいココナ、これはリアル事件(クエスト)だ。気合入れていくぞ。

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

中ほどのテーブル席1「ナイショのおでかけ」東雲飛鶴

Rachel_3rd

マスクかぶれ!
ううう……まだひとくちしか食べてないのに……。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

中ほどのテーブル席2「能天気な彼女」つっしーうま

Rachel_3rd

誰だか知らないけど、私より可愛いなんて良い度胸ね!
いやいや、どんないいがかりだよ……。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

中ほどのテーブル席4「いとしの彼氏殿」さと

Rachel_3rd

(彼は来ない)

(変な事件に巻き込まれる)



――なんて日だ!


◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

店奥のテーブル席1「1年に1度だけの……」しゃりおっと

Rachel_3rd

あっ、かわいいうさぎさんだ!

う~さ~ぎ~お~いし~、ま~ろ~や~か~!

本当にそれでいいのか?
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

店奥のテーブル席2「とある男たちの話」滝口流

Rachel_3rd

むむっ、これは事件でしゅ!
ハロウィンにうさぎの仮装なんてミスマッチにも程があるね。オイラを見習いなよ。
少なくともお前よりはマシだと思うぞ。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

店奥のテーブル席5「魔の饗宴」兜海老

Rachel_3rd

トリィ、あのうさぎさんかわいいねー!
アーマ、油断してはダメだ。

ああいう輩に限って必ず首を刈ってくる。

ヴォーパルバニーですか・・・

あなたも大概古いですね。

のんきなこと言ってる場合か!
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

カウンター1「日常会話」 間部小部法竜

Rachel_3rd

今日はうさぎ鍋にするか……。
動物愛護団体に訴えられてしまえ!
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

カウンター3「ブレンドコーヒーで歩み寄りましょう」藪亜季

Rachel_3rd

ど、ど、ど、どうしましょ~~~~!

お店のピンチです!

落ち着いて。諦めるのはまだ早いよ。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

カウンター5「砂糖を沢山入れた珈琲のような」南雲 彩音

Rachel_3rd

おやおや、かわいい子ウサギさんだね。
どうやら俺たちの出番みたいだな。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

テラス席1「ゴリ先生の課外授業」東雲飛鶴

Rachel_3rd

うおおおお!! な、なんですかこのコスプレは!!

天然のようで計算されたあざとさ、一寸の狂いない服の縫い目!

お腹周りはファンタジーらしさを抜いて露出度を増やしてみてもいいでしょう。いやしかし、これは実にいい! 模写だ! 模写するぞー!

お、落ち着きたまえ!

デッサンよりも目の前のことを考えるんだ!

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

トイレ1「奥から4番目の個室」ヤドナシ

Rachel_3rd

私は幽霊……彼女の力強い声はこのトイレまで響いた。かわいらしいウサギの女の子と一緒に。地縛霊になった今、楽しげな店の様子を確かめに行けないのがもどかしい。そして不覚にも驚かされた。悔しい。私がデキる幽霊ならこんな呪縛から抜け出してウェーイ系幽霊に昇進するというのに。……諦めてはいけない。やればデキる幽霊なのだ。
◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

――気がつくと、私は完全に包囲されていた。

Rachel_3rd

うそ……どうして……?
観念してくださいね、ウサギの盗人さん!

もうこの店に逃げ場はありません!

それは尋常じゃない程の伝達速度だった。

ミルカという女性の一声で、店の空気はガラリと変わった。

おそらく広範囲に作用する能力だろう――迂闊だった。


この店の全ての客が私をマークしている。

確かに、逃げる術は無いだろう。

たった1つ、殲滅戦を除いて。

Rachel_3rd

なるほどー! なるほどー!

ここまで私が追い詰められたのは初めてぴょん。

しかしね、皆さん。魔人の身体能力をナメてはいけませんね。


もう逃げも隠れもしませんから、

ここは一つ、正々堂々勝負――ウサ♪

さぁ、店のものを返してもらうわよ!
俺を元の姿にもどせー!
みなさんで協力して怪盗アルセーヌ・ラヴィを逮捕しましょう!
一歩、また一歩と近づいてくる彼ら。

それはよく見るとクマだったり、吸血鬼だったり、

ゴリラだったり、天狗だったり、悪魔だったり、オニだったり、

人間に扮した連中も――あぁ、なんてことだ。


ここはバケモノしか居ないのか――。

Rachel_3rd

ええい、やけウサ! やけウサ!

私の魔法でまとめて相手してやるぴょん!

朝まで付き合えってやんよおおおおおお!!

この戦いは朝まで続いた――。

Rachel_3rd

◇ ◇ ◇

Rachel_3rd

カウンター6「連れはだれ?」ヤドナシ

Rachel_3rd

お客さん、逃げましょう。

ここは危険です。

いや、私はここに残るよ。

パレードよりもずっと楽しげだ……あぁ、長生きはするものだな。

一人一人が輝いて見えるよ。全員が主役の物語と言ったところか。


これが、ハロウィンの魔法なのだろう……。

おしまい。

Rachel_3rd

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