フェンリル娘と始める異世界生活

前線都市グランフロント

エピソードの総文字数=2,483文字

シューマたち御一行はある程度舗装された人の道を通って、前線都市グランフロントに向かった。


道中、何匹かの魔物(見たことないものや、スライム、ねずみといったある意味オーソドックスのもの)が襲ってきたが、騎士甲冑の方々が鎧袖一触で蹴散らしてくれた。


着いたぞ。ここが前線都市グランフロントだ
2、3時間ほど歩いただろうか。

前方に巨大な城壁に守られた、予想を遥かに超える広大さをもった大都市が目に映った。


まず最初に思ったのはなんだか木の年輪のようだ、ということだった。

民家が立ち並ぶ場所、農場、平原、それを高い城壁が覆う。

そしてその周りにまた民家や農場、平原がならぶ。

まるでミルフィーユのように層になっているようだ。

しゅごい……。ここ映画の中……?


シューマはうめくしかできなかった。


(このままシューマを入れても大丈夫だろうか)
騎士隊長であるガラムは目の前の少年を測りかねていた。

たまに人間の中には規格外と呼ばれる隔絶した能力を持つ存在が現れる。

常人の数倍の成長速度を持ち数十倍の成果をあげ数百倍の利益を生む存在

そんな天才たちを横目にみてきたガラムはこの少年もそのうちの1人ではないかと勘ぐっていた。

天才は魔術師になりやすい。

突き詰めると本来魔術とは発見された理論を網羅し、膨大な法則を基礎からすべて学び学び学び倒し極め切ったと思ったところがスタート地点だと言われている

そのような学問の極北とされる魔術を扱う魔術師がこのような(と言っては失礼だが)のほほんとした顔をしている事はほぼない。

魔術師は変人の巣窟だがシューマは魔術師では無い。

しかしただの凡庸な人間がヴァンディットウルフの群に襲われて生き残る術など無い。

それをこの少年は最低でも1000メルトものあいだ、恐怖にさいなまれながらも逃げ切ったのだ。

そしてあの時我々シュバリエガードの能力を底上げした技は少年のものだろう。

さらには何人ウルフを弱体化したのも。

少年自身は自分のその技のことをわかっていないようだったが、それはある意味天才の仕草に見えた。

魔術師では無い天才のパターンに「スペクトル現象」というものがある。

これは後天的に身に付くものではなく才能が先天的になければ発現しないと言われている。天性の業だ。

シューマは理解をせずともスペクトル能力を使っていたのだろう。

もし意図的にスペクトル能力が使えるようになったら、前線都市でも有数の開拓者になれるかもしれない。

ガラムは柄になく興奮している自分がいるのに気がついた。



(いや俺自身が育てたいと思っている。今更なしといわれても止めるつもりはないな)
カラムにはもう一つ気になることがある。

シューマは魔女に転送された。その前に魔女に召喚されたというのだ。

召喚。

これは魔術師にとって無視できない言葉の1つだ。

生来魔術師は魔術を介さない暴力に対して非力であり、むくつけき戦闘者に襲われた時は、たやすくその命を狩られてしまう。

長年のそれも極度の集中力で研鑽を重ねてきた魔術師としての人生がある意味そのような事故で終わらせられることを許容できるはずがない。

そうして魔術師たちが生み出したのは僕召喚≪サモン・サーヴァント≫と呼ばれる身を守らせるために超常の存在を呼び出す術式だ。

ただそこいらに存在する魔物を使役すると言う意味では無い。

形而上的な空間から形而上の存在を、イメージの産物を召喚し守らせるのだ。

それは理想であり幻想であり最強であり究極であった。

サーヴァントは魔術師にとって最初で最後の盾なのだ。


もしあの魔女が身を守る盾としてこの少年を召喚したというのならとんでもないことになる。

サーヴァントの強さは魔術師の能力に依存する。

とするならば今のシューマは弱くともそのポテンシャルは計り知れないものとなる。

数百年生きた魔女は今まで1度もサーヴァントを召喚した事はなかった

サーヴァント召喚をせずとも数百体の野性生物を使役し守らせるだけで十分だったのだ。



(ではこの少年は魔女の初めての?)
へへへ……。
カラムが不躾にシューマを見ていたのでシューマの目線があったときは、驚きキョロキョロと視線をさまよわせ中途半端なニヤッとした笑いを浮かべた。

典型的日本人の弱さだった。

(わからん。この覇気が薄いシューマがとんでもない存在?考えすぎか)
カラムは己の飛躍し過ぎた思考を打ち切った

魔女のことは置いておくとしてもこのシューマの将来は気になる

強くなる余地は十分にある

強くなってくれるのなら前線都市の戦力になってくれるはずだ

そうすればこの前線都市も安全に少しは近づいていけるかもしれない。

今日は疲れたろう。

いろいろ手続きは必要だが、今日はそれで終わりにしよう。

明日からはシューマにはいろいろ知っていってもらおうと思う。

今のシューマは何を知っていて何も知らないのかわからないからな。


気になったことがあったらいつでも質問して欲しい。

釘をさすようで悪いけど俺は後見人になったから、シューマが問題起こしたら俺に責任がかかってしまうんだ。だからハメを外すような事はしないでほしい。

理解ある行動を頼む。

もちろんですっ!

助けていただいた恩は返します!


(シューマはあまり自信があるようには見えないものの礼儀はしっかりとしているな)
いろいろと話しているうちに前線都市の壁が目の前まで来ていた。
たっかー!
シューマは目を見開きながら驚きを顔中で表現していた
なんだ?都市城壁を見るのは初めてなのか?
はい初めてです! こんな大きな壁が立ってるなんて。

この壁の向こう側にあれだけの都市が広がっているんですね。

(都市城壁なんて生きていれば子どもでもう1度見たことがあるだろうにそんなことを言うシューマへの疑問が新たに生まれてしまったな)
もしこの都市に定住するのなら、守っていってやってほしい。

守れるかどうかはシューマ次第だけど。

若さの残る顔がやる気に満ちた顔に変わる。

その初々しさを見ながらガラムは口元が緩む感覚を覚えた


楽しみだ

そうして騎士の集団と何も知らないシューマは前線都市グランフロントの城壁の中へと続く正門の扉へと入っていった。

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