黄昏のクレイドリア

7-5

エピソードの総文字数=904文字

えぇっと、中は、その……
刺激の強い光景だったと
思いますが……大丈夫ですか?
心配には及びませんぞ、カノン殿。
ヘルフは少々気分が優れぬようですが…
無理もありますまい。
血の匂いに慣れていないだけです……。
体を冷やしては毒です、
早くロージアに戻りましょう。導師。
…………。
ヘルフの提案に頷いて返したが、
暫しカノンたちを眺めてから、
ヨールダンは口を開いた。
カノン殿、
貴方たちはロージアに戻らず、
今すぐこの地を離れなされ。
…………。
…………。
この一連の事件が、
ギエル殿の……
ベラーヌ家の策略なら、
カノン殿がいくら弁明しようとも、
彼らは、自らの罪を認める事は無いでしょう。
たとえそれが、
スクオーラの弁明であっても。
……その通りでしょうね。
それならば、
結局は霞の中に真実が
隠されてしまうのならば、
貴方達もまた、身を隠すのが
賢明というもの。わざわざ相手に、
顔を知られる必要はありませんからな。
おっしゃる通りです。
でも……
もともとカノン達が
ロージアを目指していたのは、
イーリアスの右足を治療する為であった。
応急手当を施したとはいえ、
風穴は塞がらず、未だに血が流れ続けている。
ふむ、成る程……
考えあぐねている所に、
ヨールダンがイーリアスの右足へ
手をかざした。
……!!
ヨールダンの手から淡い光が放たれると、
傷が癒えているのか、イーリアスの汗が引き、
顔色が良くなっていく。
傷を確認すると、足に空いていた
風穴は見事に塞がっていた。
すごい……。
……いいのか、
あんたのこの力は……
なぁに、本来なら明日の儀式で
使うはずだった力です。
殺生によって儀式を棒に振られた今、
貴方達のお役に立てるのなら、本望ですぞ。
……感謝する。
ほれ、貴方達も
はいっ!?
?!
二人が面食らっている間に治療を終えると、
導師はセシルたちへ視線をみやった。
…………。
あっ、オレは
無傷なんでお構いなく
ふむ。それでは、
貴方が最後ですな
あっ
握られた手から
温もりが全身に伝わると、
空気に触れる度に走っていた痛みが
徐々に治まっていった。
…………。
聖職者にも、いい人って
いるんだなぁ。





この間は襲って
ごめんな、じーちゃん…。
手に溢れ落ちる雫を意に介さず、
ただただ導師は 笑みを浮かべていた。

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