勇者の武器屋

第十五話 武器屋『ドリームアームズ』、本格始動!

エピソードの総文字数=2,332文字

武器屋『ドリームアームズ』の店頭。
バニーガールの格好をした勇者と、普段着の魔法使いが、看板を掲げて叫ぶ。
勇者の武器屋『ドリームアームズ』でーす!
新商品、続々入荷中ですよー!
一生懸命経営してますんで、どうぞ見ていってくださーい!
持ってけドロボー!
今日入荷したばかりのサンダーロッドは、なんと正教会で1ヶ月間も聖域に祀って製品化した一品だ! 魔法の使い手なら必見! 立ちふさがるモンスターに神罰を喰らわせてやれ! 一品限定もの2万9900Gだ!
店の奥では、戦士と僧侶が打合せ中だった。
2人は、並べられた商品を検品しながら話し込む。
ザリアル工房でブロードソードの在庫がかなり余っている。交渉中だが、取引金額を秘密にするという条件で、10本を通常仕入れ値の4掛け程度で卸してもらうことができそうだ。
どうせ鉄製の汎用品でしょ?
私たちの武器屋は高級店という位置付けなんだし、せめて白金製か聖鉄製を扱いたいところよ。いずれはアーティファクト級の商品もお店に並べたいわね。
高級店にみせたがっているのは俺たちだけだ。実際には、商品価格が3万Gを超えてくるとなかなか売れない。
考えてもみろ、世間の平均月給はせいぜい1万G程度だぞ。一年貯蓄に励んで、ようやくそれなりの汎用品に手を出せるようになる。昨日なんて5000G以下の革製防具が3つ売れただけじゃないか。
それでも、武具はやっぱり日常生活に欠かせないわ。隣町に行くくらいならともかく、何泊かしなくちゃならないような遠出をするなら、しっかりした装備は不可欠よ。
そりゃそうだが、日々の暮らしに追われてる大多数の庶民なら、古い武具をこつこつメンテナンスして、騙し騙し使っていくのがやっとだろう。いくら必需品でも、新しい武具はそれなりに高価だから、簡単に買い換えるというわけにはいかない。
騙しながら使うのも限度があるでしょ。どうしたって武器はすり減る。杖なら持ち手の魔力を増強する力が弱まってくる。錆びた防具は死活問題に繋がる。需要は必ず掘り起こせるはずよ。
お昼どきも過ぎたころ――。
店頭で懸命に宣伝活動にいそしんでいた勇者と魔法使いが、店のなかへと引き上げてくる。
お疲れさまです!
ちょっとだけお昼休憩入りますね。
ふいー、喉は枯れるし、足はむくむしで辛すぎる……。モンスター相手にしてたほうがよっぽど楽ってもんだぜ……。
おつかれさん。
しかし勇者のバニーガール姿っていうのも……目のやり場に困るところだな。
泣き言を言っている場合じゃないんです。やらなくちゃいけないときってありますから。
勇者のこの格好は男の視線を大いに引くんだけど、やっぱ、購入までに至らせるのは簡単じゃないんだよな。普通に売ってるだけじゃ、いつまで経っても大きな成果は見込めねーぞ。
このままじゃ金利支払いすらままならないわ。私たちには元々一発逆転する道しか残されていないわけで、何か大きな手を打っていかないとね。
まぁ、数万Gの武具なんて、そうそう簡単には売れないよなぁ……。
そこを頑張って売るために、新しい取り組みを色々考えていきましょう。必ず道はあるはずです。
普通に売ってるだけじゃ限界があるのは明らかだ。武具イベントみたいなのを開いてみるとかどうよ?
イベントって何よ?
だからそれを考えるんだろ。
何それ。
アンタはいつも投げ遣りなのよね。
あんだと?
誰かさんほど裏表が激しくないから、思ったことを素直に口にするだけなんだよ。
誰かって誰――
ま、待ってください!
武器屋経営は始まったばかりです! 販売方法くらいで喧嘩していたら、まともにお仕事なんてできませんよ!
ちっ……。
色々追い詰められてると、どうも気持ちが荒んでいくもんだな。
茶々入れて悪かったわね。
そもそも悪いのは魔王なのに、私たちが口論になるのはバカみたい。この怒りを魔王にぶつけてやりましょう。
魔法使いさんのイベントを開くという案は、少し考えを変えれば面白いかもしれませんよ。たとえば14歳の成人を祝う儀式には、親御さんが、子どもにそれなりの武具をプレゼントするのが習わしになっていますよね。成人祭の季節に合わせて、喜ばれる商品を集めた展示会を開催するとかどうでしょう?
そういうのだよ、そういうのでいいんだ。今までの武器屋って何か高飛車で、『売ってやる』って商売をしているヤツが多かった。だけどアタシらは客のニーズをしっかり調査して、徹底的に媚びてもいいんじゃないかって思うんだよな。
良いんじゃないの。ただ、また茶々を入れるわけじゃないけど、成人祭の季節って一時期だけでしょう。もっと幅広くチャンスを広げていきたいわね。
だったら……武具ってぶっちゃけ、他人に見せびらかすのも一つの役割だろ? アタシらや専門冒険者みたいに、実戦だけを想定して武具を見繕っているのはむしろ少数派なんじゃないか。大多数の連中は、実用性と虚栄心を天秤にかけて、見かけの良い武具を選んでいると思うんだよ。
たしかに。ということは、格好いいデザインを追求した私たちの独自ブランドなんかを作ってみてもいいかも。つい見せびらかしてしまいたくなるような。
昔から誇りを持って武器屋を営んでいた店主さんたちに叱られそうですね。
いいんだよ、それで。こっちはケツに火が付いてるんだから、誇りもへったくれもねえ。武具販売商ギルドと対立しようとも、儲けることが優先だ。じゃないと生きていくことすらままらないわけだからな。
ていうか、なんで戦士はさっきから一人黙ってんのよ。
色んな案を出していくのはいいことだ。ただ、それらを現実化させていく労力は想像以上に大変なものだぞ。言いっぱなしで終わりじゃなく、ちゃんと構想を整理して、ひとつひとつ実現させていかなくちゃならない――

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