勇者の武器屋

第五話 触らぬ儲け話に祟りなし

エピソードの総文字数=1,292文字

……え?

これが勇者が勝手に買収した武器屋『ドリームアームズ』?
おいおい、思ってたよりもずっと豪華な店じゃないか。

店構えも立派だし、店内も綺麗に整えられてるな。これほどの店構えを整えるだけでも100万Gなんて軽く越えちまいそうなんだが……。

ですよね!

そのくらいのことは私もわかります。私だって、やるときはやるんです。

このドラゴンキラーは、よく鍛え上げられたかなりの一品だ。これ一本に、熟練した職人が2ヶ月かかりきりになってもおかしくはない。安く見積もっても5万Gは下らないだろう。

鎖帷子なんか、かなり丁寧に作り込んであるなぁ。見栄えだけの廉価品を並べているわけじゃないことは確かだ。

このクリスタルシールド、何気なく飾ってあるけど……たぶんミレニア地方で採れる最高品質のクリスタルで丹念に作られたものね。軽いし堅いし魔法抵抗力まであるし、私も装備していきたいくらいよ。素材自体の資産価値も高いから、20万Gでも買えないかも……。

店頭に並んでいる商品だけじゃなく、奥にある倉庫にも在庫の武具がありますよ。お店を売買するときに私も確認しましたが、かなりの名品揃いのお店だと思います。

…………。

…………。

…………。

私たちが今装備してるちょっと古くなった武器防具を、この店の商品に入れ替えるだけでもお釣りがきませんか?

これが、店丸ごと98万G……?

ありえるのか、こんないかがわしい取引が。

何かこれ、騙されてるんじゃないかしら?

そうだな……。ドジな勇者をカモにしようと詐欺師が企んだのかも……。

とっても賢い店主さんでした! 色々教えてくれたんです。あんなに良い人が、他人を騙すわけがないんです!

不安しかないんだが……。

本当にこの『ドリームアームズ』を経営するつもりか? せっかく魔王を追い詰めているってのに。

武器屋を経営していれば、行商人さんからいろんな情報が聞けますから、逃げ去った魔王さんの情報も掴めるかもしれません。だから魔王さんが見つかるまで、私が頑張って切り盛りしてみたいと思うんです。パーティーの軍資金を私が勝手な判断で注ぎ込んだ分も、このお店の商品を販売してすぐお返ししますので、心配しないでくださいね。

俺たちは魔王を探すぞ? それでもいいのか?

早く魔王を見つけて1000億Gの交渉をしないとね。

はい、もちろんです。よろしければ、このお店の商品を装備していきませんか? 代わりの古くなった装備は、中古品コーナーを作って売ってみますよ。皆さんの装備は腐っても一級品ばかりですからね。

いや、どうにも納得できない取引だし、私は今の装備でいいさ。触らぬ神に祟りなしってな。

どうしてこんな展開になっちゃうのかしらねぇ?

とにかく、魔王が見つかったら呼ぶから、そのつもりでいてもらえるかしら。問答無用で魔王に斬りかかっていった勇者が隣で威圧したほうが、魔王がびびってくれて1000億Gの交渉を進めやすくなるはずだからね。巨万の富を巡る交渉ともなれば、恫喝と懐柔を上手く使い分ける必要があるわ。

わかりました!

魔王さんに再開できるのを、『ドリームアームズ』を経営しながら楽しみに待っていることにします!

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