黄昏のクレイドリア

6-6

エピソードの総文字数=1,967文字

貴様等……!!
?! 
何やってんだジェスター!
ギエルから逃走していた男たちは、
仲間の一人が 残されていた男2人に
食って掛かっているのを見て、
慌てて止めに入った。
今それどころじゃないって、
アイツが帰ってきたんだぞ!!
それどころも何もない、
元からこいつ等は、あの魔術師と
手を組んでいたんだ…!!
えっ……

<細身の男>

へへっ、ちょっとお前らと組んで馬鹿やって

投獄されれば、金がもらえるって言うからよ……!

楽な仕事だったぜ

<ボサボサ髪の男>

あぁ、久しぶりの

酒と食い物と女は……最高だったなぁ!

そんな……
うわぁっ!!
オーギ!!
吹き飛ばされた少年の元へ、
慌てて男が駆けていくと、
悠々と魔術師が広間に姿を現した。
束の間の冒険は楽しかったかね?
殺風景な広間で さぞ退屈していたのだろうが……。
ギエルが天井を仰ぐと、
琥珀色の混ざった ほの暗い空によって、
天窓の骨組の半分が、わずかに輪郭を浮かべていた。
……なるほど、藁にもすがる思いで
天蓋を下ろそうとしたのかね。
とはいえ、それも無駄だったな
ァ?
…………。
少年へ追撃をかけようと、
手をかざした魔術師の首元に、
ナイフによる刀傷が、深く刻まれていた。
(殺ったはず、だが……)
…………、
魔術師ともあろうものが、
魔術を使わず武力行使など……
恥を知らないのかね、君は?
灯に照らされたギエルの刀傷は、
血を流すどころか、みるみる塞がっていく。
同時に、ギエルと対峙している
イーリアスの背後から悲鳴が上がった。

<細身の男>

な、なんひぇ、

おれの首から血ぎゃ……

!!
ギエルと結託していたはずの男は、
みるみる青ざめ、床に音を立てて転がった。
もう一人の男は、恐慌状態に陥ったのだろう、
"こんなの聞いてない"
といった類の言葉を連呼し続けていた。
なんだ、これは……!
……"スケープゴート"か。
ご名答。
そうでなければ……私が家畜などを、
わざわざ囲ったりなどはしまい。
!!
魔術師が徐に杖を掲げると、
杖の先端に飾られたオーブから
光が放たれ、一帯にいた人影に次々と踊りかかる。
イーリアスは咄嗟に身をかがめて回避したが――
グぁッ?!
突然の出来事で反応出来なかった者たちは、
光を一身に受け、その場に倒れていく。
男たちを横目に、イーリアスは
生成された光を躱し続けていた。
(……おかしい。
 あの精度の低い魔術しか扱えなかった男が、
 技術も魔力も要求の高い術を……
 容易く扱えるわけがない。)
(どう考えても、
 戻ってきてから携えてきた
 あの杖によるものだろうが……
 どうにかして奪い取れれば)
!!
避け切れなかった光撃を脚に受け、体勢を崩す。
痺れで動けなくなっていたところへ、
ギエルが歩み寄ってきた。
健闘したね、魔術師イーリアス。
しかし……無駄な足掻きだったなァ!
魔術師は再び杖を振り上げたが、
チッと音が鳴った後、
彼の頬に朱の一文字が浮かんだ。
なッ!?
…魔巧具も、所詮は術式だからな。
解呪した、と……?
この短時間でかね……!?
チィッ、所詮は
不良魔巧具ということか……!!
だが!!
……ッ!!
杖の石突部分から、
突如として先端の尖った刃が飛び出し、
イーリアスの右足を穿つ。
刃は石造りの床をも貫き、
彼はその場に縛り付けられた。
奥の手を用意しているのは、
君だけではないのだよ、イーリアス。
……そのようだ
それでは、さらばだイーリアス。
君は不可視の死神に、
私は死神を斃した、
偉大なる魔術師となるために。
…………。
(俺の命運も、此処までなのか――)
イーリアスの眼前へ、ギエルの手がかざされた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
影が翼をはためかせて、
上空からこの広間へ、
魔術師めがけて舞い降りたのだ。
鈍い衝突音が響いた後に
残ったものは、


静寂と、

光の天蓋の残光と、

白の羽衣で身を包んだ剣士だった。
…………。
…………。
…………。
…………。
まったく、守る方が
助けられてるんじゃ 世話ないわね
剣士は玉の汗を浮かべながら、
気丈に笑ってみせた。
どうなっている、女ァ……!
貴様と会ったときには、そのような
魔力は感じなかったというのに……!!
風穴を開けられた胸部を抑えながら、
ギエルはゆらゆらと立ち上がって
カノンを睨みつけた。
奥の手は隠しておくもの、でしょ?
クソ……ッ!!
そっちこそ、
一体どこから この魔巧具の事を知ったの?
ましてや悪事に利用するなんて……
どこの家の魔術師
魔巧具……?
ハハッ、そうか、
貴様はスクオーラの人間だったか……。
まさか女だったとは……
…………。
合点がいったのか、
ギエルは暫くの間 力なく笑っていたが、
咳き込んでそれが遮られると、
ぎこちなく、面をカノンへと向けた。
……スクオーラの女よ、
これだけは言って逝こう。
賽は投げられたのだ。

私達に歯向かった事……
後悔するがいい!!
瀕死とは思えない声量で
言葉を吐いた魔術師は、
その直後に喀血し、背にあった壁へ
ずるずると身を預け、動かなかった。

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