黄昏のクレイドリア

8-5

エピソードの総文字数=850文字

<某日、ロージア西端の邸宅>
…………成る程。
兄のことは、誠に遺憾です。
しかし……わざわざご足労頂いた
貴方達も、凄惨たる現場を目の当たりにし……
散々であったことでしょう。
いえいえ、ランダ殿に
比べれば、私の事など!
それよりも、心無い出来事のせいで
この地に豊穣の祈りを
捧げられなかった事の方が……
ギエル殿の死と同様に、胸が痛みますぞ。
…………。
何にせよ、我々ベラーネ家としても、
親族を殺害された以上、
この街を脅かす不可視の死神に
制裁を与えなければなりません。
奴が望むのは首だけだと
考えていましたが……、
兄の首がつながっている代わりに、
杖が無くなっていた事を考えると、
ただの意地汚い、人殺しの賊だったようだ。
むぅ……。
…………。
もう一度お尋ねしますが、
昨日の兄に変わった様子など……
導師は本当に、何もご存じないのですね?
フン、一晩顔を合わせただけの相手に、
そこまで気を払うわけがないだろう。
僕は導師に聞いている
…………、
えぇ、もちろんですとも。
天の炎、ノルファに誓って、
私はただ、塔でギエル殿を発見しただけの……
ただの老いぼれであった事を。
……わかりました。
それでは、ランダ殿。
私たちはこれで失礼致しますぞ。
また次の地へと参らねばなりますまい。
えぇ。
導師達も……どうぞ、
背後にはお気をつけて。
忠告痛み入る。
両者が視線を交えた刹那に
視えない火花が散ると、
彼等はその場を後にした。


------------- ーーーー  ー   ー
おのれ……!!
与えられた役割に舞い上がり、
任を失敗するどころか、
杖を奪われるなど……
とことん最期まで無能な兄だ!!
”あの方”から賜った、
あの杖を……!

<???>

…………。
少年は激昂したまま、
部屋の隅で跪いていたままの影へ、
怒りを隠すことなく言葉を放つ。
……主役の贄が、あの場に
残っていなかった事を考えれば、
その者が杖を持っているはずだ。
そう遠くまで行ってはいまい。
あの杖……”百雷の針杖”は、
なんとしても取り戻せ!!

<???>

かしこまりました。
影は一つ返事をすると、
部屋を後にした。

◆作者をワンクリックで応援!

3人が応援しました。

◆コメント欄は未記入でもOK! 公開されないのでお気軽に。

ページトップへ