黄昏のクレイドリア

21-3

エピソードの総文字数=1,143文字

(またアークライトか……。最近動きが派手ね)
(シェズの時といい、ロージアの時といい、警戒するに越したことはない――――)
いたっ

思考に耽り、注意がおろそかになっていたカノンは、前方の人影にぶつかった。

ぶつかった衝撃で相手の方が体格が上だと判断し、やってしまったと思いながら相手へ向き直る。

す、すみません
あ?
(……げっ、)
謝罪に刺のある言葉で返され、カノンは面倒そうな手合いとぶつかってしまったと内心でため息をつきながら、穏便に事を進めるために相手の姿を冷静に観察する。
(……鎖の千切れた、手枷?
奴隷にしてはガタイがいいから出場者かしら。
でもって…………)
…………。
こちらが相手を観察している時は、
相手もこちらを観察しているものである。
カノンは自身が好奇の視線に晒されていることを肌で感じとると、距離をとろうと半歩足を引いた。
(はぁ……、これだけ
あからさまなのも久々だけど、
こーゆーのとは、さっさと距離をおくに限る)


それじゃ、あたしはこれで……

待て。
(待つかっての)
待てって言ってんだろ
!!
相手が手を出してくるのを、カノンは予測していた。
しかし、振り払いながら相手の顔面めがけて放った徒手は、すんでのところで、相手の拳によって止められていた。
(弾いたと思ったのに、
男とはいえ……素手でこの重み……?!)
そんなにビビんな、
道に迷ってたんだろ?
だったら手を離してもらいたいんだけど
別に此処だろうが

中だろうが同じじゃねぇか

はぁ?
何の話だとカノンが首をかしげていると、青年はにんまりと口角を上げた。
オレ達闘士に"媚び"に来たんだろ?

試合が始まる前に女がやることは、それしかねぇ。

…………。
カノンが絶句しているのをいいことに、
青年は自由な右手でカノンの顎へ手を添え、唇をなぞった。
初めてで緊張してるのかもしれねぇが、

心配するな、オレが可愛がって――――

痛ェッ?!
あーら、ごめんあそばせ
指を噛まれ、驚いて手を離してこちらを睨み付ける赤髪の青年を尻目に、カノンは地へ一つ唾を吐いて唇を拭った。
てめぇ……!!
猫も気にくわなければ
噛みつく気概は持ってんのよ。
それに………
盛って盲目になってる猿には

この剣が見えなかったんだろうけど、

あたしも戦えるの。

そんなに遊びたいなら……試合で相手してあげるわ。

!!
……ハッ、面白ぇ。
腕に自信があるってことか。
不機嫌そうな表情から一変して、
不敵に笑みを浮かべると、
真っ直ぐにカノンへと指差した。
それなら……精々決勝まで上がってこい。
闘技場荒らしのオレが、
てめぇを打ち負かしてやる。
上等。
あんたこそ調子にのって、
どうでもいい試合で落とすんじゃないわよ。
売り言葉に買い言葉で文句を返すと、

カノンは今度こそ、仲間の待つ入り口へと戻っていった。

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