いかに主は導きたまうか。

11.1 Contemplation 力の底で。

エピソードの総文字数=2,098文字

  北大路通は高野の交差点までは、そこそこ交通量も多い幹線である。だが、ここからは少し静かな通りになる。少し歩いて更に北に向かうと、左手には、アンティコ (ANTICO)というイタリアレストランがある。*このお店は、ボクが一乗寺に住みはじめて間もなくオープンされていた。さらに歩くと同じく左手に、そこそこ大きな喫茶店があった。ボクは、ここに会社からの帰りしなには、いつも寄っていってた。あの本を読む為に...。

  〈Fragments〉は驚くべき本だ。これが即興、即座の会話の記録であるとは信じられなかった。「これは100年前のことだぞ」と驚嘆していた。今まで読んだ、いかなる本の中にも語られたことのない見解が山のようにあった。ボクは、この本を読んでいったが、理解/消化がそう簡単には及ばないことをいつも感じていた。*不思議と日が経つにつれて、少し、また少しと分かる面もでてくることもあたった。しかし、自分に〈本質的に合う〉とは思った。*これは〈さよなら天使〉のKKにも、かって感じたことだった。これは確信だった。”圧”に耐えながら、語られることのエッセンスというべきものを吸収すべく努力を続けていた。

  読書の後は、アパート近くで夕食をとった。よく行ったのは、いつも鶏肉を揚げてトマトケチャップで炒め直したものがメインのオカズである定食屋か、素人料理の延長としか思えないスパゲッティー屋だった。駅前商店街の中にあり、丸いカウンター席しかなかった。人が座っても五名ぐらいの狭く、小さく、暗いお店だった。タラコのスパゲッティーは兎に角にもいけた(安かった)。

  銭湯に行ってアパートに戻れば、次は座る。大体、一時間から二時間ほど。『静かに、ただ黙って』が唯一のガイドであった。ボクは力づくでやっていた。*ものの本によると、これは間違ったアプローチらしい。十分二十分で入神状態には入れた。未だ、この面においては以前の冴えた状態が残されていたのだと思う。[落ちついた実在感]はあるが、ねっとりと纏いついているものがある。力場による拘泥感の中に在ることが分かる。*禅の表現に〈粘着縛着する自我〉という言葉がある。

  すぐに、怪しい影響が始まる。これはどこか異界からの作用だと思った。悪意が沁み入ってくるように感じられた。ボクは全くの無力で、どうのしようもなかった。何とも言えない危うさを覚え、ボクは怯える。そして何とか気を張って、”念”として心の中で祈った、「我が主、イエスキリストの御名において命ずる、我に干渉するなかれ」。幾度もの繰り返しの中で、この干渉は弱まり消えた。*これは真実です!。

  改めて静かに留まる。自分が巨大な圧力の底にいることが感じられた。頭上から[これから逃れることが本当に適うのであろうか]と思われるほどの押さえつけがある。*これでは五行山の石の下の孫悟空ではないか...。また、一回だけだが、頭上に無数の声を聞いた。「ワサワサ」と人のおしゃべり、語り、つぶやきが涌(わ)き起こったかのようだった。*Gによれば、人間の中には何百何千のバラバラの〈私〉があるとされる。*マルコ福音書には、ある男に憑いた悪魔は【レギオン】と名乗り、その名の意味は『大勢いる』であると書かれている。

  段々と自分の在る状況がハッキリしていく。落ちついた状態(I AM)は頭に多く、また胸に降りてあることもできた。腹の中で...、はない。最後には〈主の祈り〉を三回唱えて終わりとした。*これは日課として京都時代、三年少しの間、毎日繰り返すことができた。貴重な期間であったと思う。


補足:

KKは、かってボクの高校時代のカリスマだった。初期三部作、あの赤本、そして機械じかけの夢は教科書だった。言われていることは難しくて分からないのだけれど、なにか ”合う” と感じていた。かの人も、何らかの体験を持たれているハズだとボクは思う。それだからの、駆の独白であり、天啓(ノーシス)というタームへの嗜好であり、生前解脱者ジルベールへの憧憬だと思う。*思想戦以外のお話そのものはあまり好きではなかった。局所に体験に根ざすのであろう ”思い”、 ”イメージ” が鮮烈だった。尚子さんに彼の写真(本裏)を見せると、「この人、頭よすぎー」と言ってた。また、「天からの助けがきている」とも言っていた。ナディアの駆への愛がその影響なのかと思った。(略多)

あのカウンターのスパゲティー屋では、怖いことがあった。その晩は、ボクの他に四名座っていたのだが、これらの四名が群れとなって、襲ってきた。勿論、生身での話ではない。生霊として全員一丸となってボクに働きかけてきた。即座に祈りで防衛はしたのだけど、こういうこともあるのだなと思った。

高野川の辺(ほとり)でも座ることがあった。見えないけど女子高生の集団と思われる人たちが前を通り、思いっきり[声かけ]にて邪魔をされた。*こういう時には「音・音・音・音」で反応(怒)を起こさないように、切っていく。「ったく、おんなってやつわ〜」



  

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