いかに主は導きたまうか。

9. On the way to be... アネクドーツ3。

エピソードの総文字数=2,623文字

  エリコさんという秋田出身の人がいた。血液型はAB型。車の運転が好きだったのだろうポルシェ914を駆っていた。彼女はボクと同じButte Collegeの学生だ。先輩にあたる。年齢も上だった。アメリカ人と結婚していたと誰から聞いたことがある。このエリコさんに一ヶ月ぶりぐらいに会った時の話だ。

  "『オット!』" 「彼女の話をするならば、彼の話もちゃんとしておかないと!」
彼とは先に名前だけあげたハルオさんという少し年上の浪速のお兄ちゃんのことだ。(9ボールに付合っていただいた方)。彼はオープンのキャデラック(1970年代製、尾翼はなし、当然V8)を所有していた。あの鉄のFlying Carpetだ!。なかなか豪快な運転テクニックの持ち主だった。特に割り込みにおいての妙技はそれは見事なものだった。これは皮肉として言っているのではない。ボクが言葉を失っているのをみて「技...見してもうたな〜」と悦にいって言われたのが思い出される。 Chico の学生で、また日本語講師もそこでされていた。ボクは彼の人柄、懐の広さ、同郷のよしみから、事後、急に接近をしだしていた。状況に巻き込んでしまったといえる。だから至近距離でボクの状態を、一時の変遷を、唯一まともに観察できた方と言える。(あの節は大変お世話になりました)。さて、このハルオさんとエリコさんは当然知り合いであった。お互いザックバランな話の出来る間柄だった。「よしっ」これでやっと”エリコさん”という人にボクが久しぶりに会った時の話に戻れる。

  しばらく姿を見かけないなっと思ったら、日本に帰っていたとのことだった。彼女は前に「優しすぎるのもダメだからねっ」と堪(こら)えられんとばかりにボクに意見したことがあった。何をもってそう言ったのかは分からなかった。思い当たる状況でもなかった。そんなに親しい間柄でもなく時々、日本人同士が何人かで寄り集まって近況を話したりするぐらいの間柄だった。とにかく彼女のいない間に、いろいろとボクの身に変化があったのだが、そのせいもあるのだろうか久しぶりのこの再会において、えらいことが起った...。
  Butteのオープンテラス、あの時と同じ場所での再会だった。その時ボクの心中は、なにか思わぬ時に思わぬ場所で宿敵にでも会ったかのようなワクワク感で心が高まっていっていた。あちらはあちらで久しぶりに見つけた彼奴を小馬鹿にでもしてやろうとでもいうような顔をして勇んで近づいてくるのが見てとれた。本当に近くなって二言三言の言葉のやりとりをしていた途端に何かが弾けとんだ。ボクは一変して急に自由を奪われたように感じ、ガクンっと言葉が重くなった(ブレーカーが落ちた?)。あちらはあちらで異変があったようだがそれは分からない。この時、起ったことを言葉にするならば、「ボクの感情の放射と彼女のとが混ざり高まるうちに、なにか化学反応のようなことが急激に引き起った」になる。*こんな経験はこれまで自分の彼女との間でもあったことがない。急にボクが押し黙ったようになったのでエリコさんは「どうしたの?」と聞いてきた。もうだめで、もごもご口ごもることしかできなかった。この後、数日間はエリコさんのことが頭から離れなくなっていた。

  この時ではないと思うのだが、エリコさんがButteでの科目を全てオールAで単位がとれたとの話があった。彼女が自分から言うわけないので誰か他の人もいて、その人が話でもしたのだろう。ボクは、「すごいわ〜、偉いわ〜、よくそんなに頑張れたね〜」と心から賛嘆の思いを彼女に直接伝えていた。すると彼女は、「お願い〜」「もっと言って〜」と更なる言葉を強請(ねだ)りはじめたのだ。不思議とボクは言葉が続かなくなってしまっていた。「そうか...、こういうのはダメなのよね...」と、自分の過ちに気づいて彼女はすぐに自己を改めた。しかし本当に全て”A”は、ありえないことなのだ。どんだけ頑張ればそうなれるのか分からない。彼女は「頭が禿げるぐらい勉強したとわよ」と苦々しく話してしていたのを思い出す。

補足: ボクは人の良い所、素晴らしい所への[気付き]がよくなっていたのだと思う。相手を知る知らないを問わず、よくなにかの賛辞を人に伝えてしまっていた。例: 「あなたは、なんて姿勢良く立てるの!」とか。そうすることに全く躊躇しなくなっていた。

  エリコさんとハルオさんとボクの三人が誰かの家の前で喋っている。この時は、もうすぐボクが日本に帰ることを報告していたのだと思う。エリコさんはボクのプレリュードを「運転してもいい?」と言ってきた。どうぞどうぞと鍵を渡す。彼女は目の前をビューンと行ってしまった。少し経って戻ってくるとまた会話に加わった。*あの時の彼女サイドの内容をこの時に聞けたが、これは記さないでおこう。
「そうかハルはクリスチャンになったのね」と感慨深く言われる。ハルオさんからいろいろ聞いていたのだろう。ボクはすべてを承知した。そして、いやいやそれは違う...
” I'm not a Christian, yet. I'm just on the way to be a Christian " 
なのだと英語の表現で訂正した。エリコさんは少し驚いた顔をして、「本当のクリスチャンだわ...」と言った。

山上の垂訓も、あの十戒もボクのコンピューターは「実行は不可能」との解をはじき出す。そう状況次第で全ては容易く破られてしまうだろう。これからが試練の時だと覚悟を固めていた。

追記;
新約の中には「恋は狂気」とある(4福音中ではない)。そうなのだろうとボクは思う。核たる自己を離れて、(感情/肉体の別の自己の)思いに取り付かれる、思いが暴走する。この現象をボクは数回経験したことがある。ここにあるような偶発的なもの、そして怖いのは相手が念をもって、それを敢えて引き起こしたりする場合だ。暗示などとの生易しいものではない。恐ろしい術式もこの世には存在するのだ。それも、ボクにとっての使い手はとても若かった。若かったが為に最後の詰めがあまく助かったことがある。注意の喚起のためにこれを記す。

ボクは思ったそうだ。「そうなんだ...体を重ねなくてもセックスは可能なのだ」と。

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