退魔天使は聖夜に踊る ~復讐の乙女~

【7】親友、家族、仮初めの家庭

エピソードの総文字数=1,757文字

 ゲートを十カ所ほど回ったころ、丁度昼メシの時間になったので俺とシスターベロニカは教会に戻ることにした。
 結局、音の鳴るゲートは最初の一つだけ、ゲートの詩も一つだけしか収集出来なかった。

 ☆

 食堂入り口に掲げられた、タムラさんの書いたホワイトボードの献立表では、今日の昼食は天津飯と唐揚げだ。
 俺得すぎるメニューで自然と顔がにやけてくる。

「たっだいまー」

 俺は満面の笑みで食堂に入った。
 もう俺の胃袋は天津飯ウエルカム状態、唐揚げスタンバイ完了だ!

 食堂のわきの水道で手を洗うと、俺はトレーを持って配膳カウンターに向かった。すでに盛りつけてある天津飯の一つを取ろうとすると、

「ショウくんのはこっちだよ。たくさんお食べ」
 と、タムラさんがでっかいどんぶりに盛った天津飯を出してくれた。

「どうせおかわりする気だったでしょ?」
「ええ、まあ。すいません」

 俺は恐縮しながら特盛り天津飯と唐揚げの皿、たまごスープのお椀をトレーに乗せて、適当な席についた。

 メシを食い終わり、テレビを見ながらシスターベロニカと二人でくつろいでいると、タムラさんが俺に声をかけてきた。

「ショウくん悪いんだけど、弓槻ちゃんにお昼持っていってあげてくれる? まだ出て来てくれないのよ」
 口ぶりからすると、弓槻はまだ自室に引き籠もっているらしい。

「……へ? 俺が? うーん……」

 俺は弓槻にはものすご~~~く嫌われている。適任とは思えないんだが……。

「みんな忙しいから、ね?」

 と、半ば押し切られるような格好で、俺は弓槻に食事を届ける役目を仰せつかった。

 細心の注意を払いながら、片手でトレーを持って行こうとしたら、タムラさんが慌ててワゴンを押してきた。
 ルームサービス的なやつ。これなら安全に運べそうだ。


 食堂からゴロゴロとワゴンを押しながら廊下を進み、弓槻の部屋までやってきた俺は、ひとつ深呼吸をしてからドアをノックした。

「弓槻ちゃん、お昼持って来た。開けて。今日は天津飯と唐揚げだぞ」
 予想どおり返事はない。でも、中にいる気配はする。

「えっと……、じゃあここに置いていくから。寒いし、メシ冷めちゃうから、すぐ食うんだぞ。じゃあな」

 部屋の中から、クチュン、とかわいらしいくしゃみが聞こえた。
 返事がわりと解釈し、俺は報告のため食堂に戻った。


「あのー、一応置いてはきたんですけど……」

 俺は、テーブルをぞうきんがけしていたタムラさんに、申し訳なさそうに声をかけた。

「いいよいいよ。ありがとねありがとね、ショウくん」

 そう言いながら、タムラさんは俺の頭をポンポンと軽く叩いた。
 彼女から見れば、俺も弓槻も息子や娘くらいの年頃だろう。
 子供扱いされてもそんなにイヤな気分はしない。

 ☆

 昼下がり、俺がまんじりとも出来ず自室でマンガを読んでいると誰かがドアを叩いた。時計を見ると、そろそろお茶の時間だった。

「はい、開いてますよー」
 俺は返事をしてベッドから身を起こした。

「こんにちは~。多島君、ヒマ?」
 ドアを開けて顔を覗かせたのは、海紘ちゃんだった。

「ああ、ども。ヒマだけど、なに? 今日はファッションショーはカンベンな」
「ちがうちがう。弓槻の様子見にきたの。ほら、ちゃんと寄せ餌も持ってきたんだから」

 と、手にしたケーキの箱を持ち上げてみせた。
 たぶん、五~六個は入りそうなやつだ。

「もしかして、俺のぶんもあったりしちゃう?」
「あるある」
 海紘ちゃんはにっこり笑った。

「やったぁ! ……あ、やっぱ、ムリだわ」
「え? どうして?」
「今日も出て来ないんだ……。俺がいたら尚さらダメだろうな」

 海紘ちゃんは、ふうん、と言って少々思案すると、こう言った。
「でも、きっと出てきてくれるよ! 私がダメもとで誘い出してみるから、多島君はお茶の用意をして待ってて」
「いやでも……俺はいない方が……」
「ダメよ。ケンカしたままはよくないわ。ちゃんと仲直りしないと。ね?」
「そういうわけじゃないんだけど…………わかったよ」

 結局俺は押し切られる格好で海紘ちゃんのプランに乗ることになった。

ページトップへ