勇者の武器屋

第十六話 事業計画、策定中

エピソードの総文字数=2,015文字

構想を整理って言ったってな。
アタシみないなのは、切った張ったの戦闘してたほうがずっと楽なんだよ。もうホントは難しいことアレコレ悩まず、攻撃魔法だけ唱えていたいんだよ。
細々とした整理や裏方仕事は、このなかじゃ戦士が一番得意でしょ。アンタが事業構想を整理しなさい。
戦士さん、お願いします。
私たちのなかで経営者としてちゃんとやれるのは、戦士さんだけなんだと思います。
俺はこのメンツ唯一のバイトだぞ……。
まぁ得意ってわけじゃないが……たしかにハイパー脳筋集団のお前らに出来る気がしないからな。
脳なんとかって言い方が大いに引っかかるけど、アンタがちゃんと整理できるっていうのなら追求しないでおいてあげましょう。
ひとまず取り組まねばならない物事をまとめていこう。大きく2つに分類してみるぞ。まずは『①既存事業の強化』、そして『②新規事業への挑戦』に分けて整理しよう。
①既存事業の強化
・営業戦略、宣伝戦略の見直し
・接客対応の一新(「売ってやる」から「おもてなし」へ)
・大量仕入による仕入れ価格の圧縮
・武具を製造する各工房との関係強化
・各工房が投げ売りする商品を抱えるための倉庫の増強
・王国政府への武器納入業者になること(御用商人)

②新規事業への挑戦
・独自商品の製造
・成人式などの季節イベントに合わせた武具販売キャンペーン
・実用性よりも価値のほうを優先した高級ブランドの創設
お前らが挙げていたものは入れ込んだつもりだ。武具販売商ギルドと対立しても、顧客に媚びる方向でおもてなしを採り入れることなんかは、即効性がありそうだな。それから『成人式用の武具イベント』とか、『高級ブランドの創設』なんかは十分面白い取り組みでも、こっちは新規事業のほうに分類されるだろう。
既存事業』ってやつと『新規事業』、どっちのほうが重要なんだ?
強いていえば、車の両輪なんだろうな。
なんだその曖昧で尤もらしい言い方は。
事実なんだからしょうがないだろう。まずは『既存事業』の基盤をしっかり固めることが最優先だとは思いつつも……俺らみたいに一攫千金を急がなくちゃならなくて、普通の状況じゃない場合には、『新規事業』でどでかい一発を当てていかなくちゃならないのかもしれん。
億単位のゴールドを稼げるようなものをやりたいわ。
いっそアタシに1000万Gを預けてくれよ。そしたらカジノで10倍に増やしてやっからさ。まぁ増やせる確率は5%くらいだが……。
アンタは負けてばかりでしょうが。カジノに入り浸りな割に、5%も勝率ないくせに。
願望を言ったってしょうがないじゃないか。次々と案を出してくれ。俺たちの現状を打破できるようなものをな。
貿易商さんから、まだこの国や地方で入手困難な武具をいち早く卸してもらって、積極的に売っていくというのはどうでしょう?
普通だな。
普通よね。他の武具販売商だって儲かるとなればやってるはずだし、一攫千金には程遠いわ。
ゴ、ゴメンなさい……。
だったらそうですね……貿易商さんから見たこともない武器を手に入れたとして……私たちっていちおう武具の扱いに熟練してますから、初めての武器でもそれなりに使いこなせたりするじゃないですか。
こう見えて、エキスパートだからな。そんじょそこらの冒険者には負けんよ、アタシらは。
でも普通の人は、武具の扱いに不慣れだったりしますよね。ましてや初めての武器なんか、簡単には使いこなせません。だったら、私たちが使い方を教えてあげる教室なんかを開くとかどうでしょう?
なるほど、そいつはいい!
そういった武具講座を開いて使い方を教えたあとに、その武具を売りつければいいわけだからな。一石二鳥だ。というか、新しい販売戦略になるぞ。
それも一攫千金には遠そうだけど。
もう一攫千金とかいう思考はいったん脇におけよ。何も考えられなくなるからさぁ。
武具講座なら、勇者ブランドが大いに役に立ってくれるかもしれんぞ。武具は勇者が直接作るわけじゃないが、講座なら勇者が直接教えることに意味があるからな。遠方からも客を引っ張ってこられる広告塔にできるかもしれん。
私なんかで良ければ、いくらでも広告塔になりますよ。自分のことでもあるわけですし。
こうして戦略を逐次打合せ、練り直しつつ、役割分担して、プロジェクトを一つ一つ着実に形にしていこうじゃないか。仕事をしながら、新しい着想が生まれることもあるはずだ。そういったものは次々アイデアを持ち寄り、議論して、収支が期待できそうなものは採り入れていこう。
うーん、なんだか本当に戦士は仕切り役に相応しいな。体育会系のうちのパーティーのなかで、唯一の知恵者って感じか。
そうですよ、戦士さんはもともと頭がいいんです。軍師さんですね。
なんか私たち女3人組がパワー担当みたいになっちゃってるじゃない。逆でしょ。おかしいわよ、そんなの。
……でもまぁ、経営全般をしっかりチェックするっていうのなら、少しは多目に見てやってもいいかもね。

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