黄昏のクレイドリア

6-2

エピソードの総文字数=994文字

チクショウ、何が
”塔の儀式の手伝いをすれば
釈放の余地はある。”だ。
ハナから魔術師のご機嫌取りに
利用されただけじゃねぇか……。
すまない……元はといえば、俺が、
あの女に先手をとられたせいで……
ジェスターは悪くないって……
…………。
……なぁ、いつまでやってんだ、魔術師サンよ。
あのギエルとかいう野郎は
今いないんだぜ?
…………。
……あぁ、そうだったな。
男の呼びかけでようやく、
どことなく視線が定まらない様子で、
イーリアスは血溜まりから顔を上げた。
ガスト…、おれ、
この人も怖いよ……。
ケッ、全くだ。
胸糞悪ィったらありゃしねぇ。
それは災難だったな。
こんな場所から早く逃げたいなら、
俺の縄を解いてもらえると助かるんだが。
おまけに態度もデカいときやがる……。
……って、なんだって?
俺の縄を解けと言ったんだ。
何度も言わせるな。
解けだぁ?
あんたが自由に動けるようになったところで、
一体何ができるってんだよ。
出口の扉だってびくともしないんだぜ?
少なくとも、この塔の中を調査できる。
さらには、何かしらの打開策を得られるかもしれないな。
そして奴はお前たちを……なにより、
俺のことをなめきっている。
つけ入るなら今しかない。
そうは言ってもな……
…………。

もし何の手立ても見つからなければ、
ギエルが戻ってきたが最後、
真っ先に、拘束を解いた自身が
贄にされることはわかりきっていた。
男が考えあぐねていると、となりからスッと
現れた少年が、イーリアスの手足の拘束を解いていた。
お、おいオーギ!
魔術師のことなんか信じるってのか?!
だ、だって、このままじゃおれたちみんな、
あの魔術師に殺されちゃうだろ?!
そんなのおれ……いやだよ!
オーギ…………
助かった。
血にまみれた顔を袖でごしごしと拭き取ると、
イーリアスは立ち上がる。
絶命した男の身につけていた 衣服を破いて拝借すると、
その辺に転がっていた 棒切れを拾って先端に巻きつけ、
壁の灯から火を移した。
お、おい、どこに行くんだ
窓を開けに行く
窓ぉ?
ギエル……だったか、
あの魔術師も言っていただろう。
月の出る夜には、光の天蓋が降りると。
いまさら窓なんか開けたところでよォ……
……そうか!そこから脱出するってことだな!
…………。
無視かよ!
おい、待てってこの野郎!
あっ!
待ってくれよ、あにき~!
男たちに構わずに、灯りを持って
歩いて行くイーリアスを追う男を、
少年は暗がりで躓きながらもついていった。

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