主よ、人の望みの喜びよ

2回目の夜

エピソードの総文字数=2,064文字

ねぇ、アレン
何ですか?
ドラマチック・アイロニーってご存知ですか?
知らないですけど……
 アレンとカレンはひとしきり愛し合った後、同じ布団に入り、その余韻に慕っていた。その日、アレンにとってもカレンにとっても初めてのキスになったのだ。いつもなら頬に落としていたが、今日は両者の感情が高まってしまい、唇に情熱的なキスを落としたのだから……。その余韻に慕っても良いだろう。
ドラマチック・アイロニーは、ロミオとジュリエットやオセロで書かれていた通りですわ。いつの間にか悲劇に向かって進んでいた……という意味です。ロミオとジュリエットは、最後両方とも死んでしまうストーリーでしたから……。私たちは、そうであってはいけないと思いした
シェイクスピアの作品ですよね?ごめんね……文学はあまり読んだことなくて……
アレンは、文学作品は苦手なんですか?ごめんなさいね……そうとは知らずに無責任な事を言ってしまいましたわ!!
いいえ、悪いのは僕です。文字があまり読めなくて……
それなら私が文字の読み書きと楽器の練習に付き合いますね♪だって、私たちは恋人同士ですから♪何でも乗り越えられますよ
 カレンが笑顔を見せると絶対そうだと思える。アレンは、カレンに微笑んだ。
そうですよね……。僕たちなら出来るような気がします!!
じゃあ、私を幸せにしてくださいね。また、あの悪夢を見ないように……
あの悪夢って何ですか?
さぁー、なんでしょうね。私が悪夢を見るなんて大きな間違いですわ。私は、悪夢なんて見ませんよ?
 カレンは、悪戯な笑みを浮かべ、悪夢の事を否定した。アレンにとっては、何かを隠されているみたいで……もどかしい気持ちに陥った。

 多分、カレンは何かを隠している。アレンは、そう確信した。

そ……それなら良いんですけど……。カレンは、いつもそうやって誤魔化すから……
じゃあ、私はもう寝ますね。凄く眠たいです
あっ……そうだね。おやすみ、カレン
 そのままアレンとカレンは眠りについたのであった。



 何時頃だろうか……。アレンは、冷ややかな空気を感じ取り、目を覚ました。何か冷たい何かがアレンに当たっている気がしてならないのだ。アレンは、カレンに目をやってみる。

(寝てるよね?でも、凄く手が冷たい……。寒いのかな?それに冷や汗が凄い……。昨日の夜と一緒だ……)
 その時だった。

 カレンの手に力がこめられ、力強くアレンの手首を握ってきたのだ。爪がアレンの手首にめり込み、アレンは苦痛の表情を浮かべた。

痛い!!カレン、どうしたの?!
 しかし、カレンの力は強くなっていく一方で、アレンは痛さで呻き声をあげることしか出来なかった。

 その時、カレンの口から言葉がこぼれ落ちる。

お兄様……お兄様……。ごめん……なさい……。私が……悪いんです……
えぇっ!!何が悪いの?!
嫌……嫌……
何が嫌なの?!
 カレンの呼吸は荒くなっていく。息苦しそうに呻き声をあげることしか出来ないアレンは、何も出来ずされるがままの状態だ。

 このままだと……そう思っていた時だった。いきなり世界が一回転したかのようにアレンは感じた。その後、息苦しさと首への圧迫感を感じる。

 これは、ヤバい……。殺される!!

カ……カレン……。やめ……て!!苦し……い……
はぁはぁ……初めからこうしておけば良かったのですね……
や……やめ……
お兄様は生きています。でも、私のせいで殺したも当然になってしまったのです……。はぁはぁ……だから、アレンも私と一緒に……死んでください……。お願いします……
かはっ……。マジで……やめ……
 ダメだ!!このままだと殺される!!しかも、馬乗りにされて首を絞められているってどんな屈辱なんだ!!

 アレンは、カレンの手を掴み、何とか首から手が離れた。

 

げほっ……げほっ……げほっ!!
 アレンは、咳き込んだ。新鮮な空気を吸い込むことが出来、今度は立場が逆転した。
カレン……さすがの僕でも怒るよ!!どうしたというのさ!!
はぁはぁ……だって、私はお兄様の人生を奪ったとても酷い人間なんですよ……。だから、私が死ねば……
これ以上は言うな!!これ以上言うとその口塞ぐから!!
……っ!!
 アレンが怒ることは滅多にない。だから、カレンには絶大なダメージを与えたに違いない。カレンのサファイア色の瞳から涙がこぼれ落ちた。
ごめん……泣かせるつもりなんてなかったんだ……。ただ、カレンには普通に生きてほしいから……
ごめんなさい……ごめんなさい……
そんな事ないよ……僕も悪かったから。カレンのこと分かってあげられなくて……
……明日、アレンについてきてもらいたい所があるのです……。怖いのでついてきてください……
良いですよ?どこについていけば良いんですか?
 カレンは、目尻にたまっていた涙を拭い、心に決めて言った。
私の実家についてきてください!!もう3年ぐらい帰っていなくて怖いんです!!お願いします!!
 カレンの実家=彼氏が行ったら不味くない?!

 アレンの頭の中は、真っ白になったが、

は……はい……
としか言えなかったのであった。

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