マジカルミュージック

目覚めの農夫は木こりに覚醒する

エピソードの総文字数=2,406文字

    詩織は、何とか聡太の入院している病院に到着することができた。このまま聡太の部屋に行くと家族が来ていて聡太の周りを囲んでいた。詩織の姿を見た聡太の母親は、いきなりずかずかと歩いていき、詩織の頬を叩いたのだ。そして、嘆き悲しむように吼えたのだ。
2017/08/31 14:08
あんたがしっかりしていないから聡太がこんなことになったのよ!!    何故、聡太が……あんたが聡太と入れ替わってくれたらよかったのに!!
2017/08/31 14:11
……
2017/08/31 14:13
お母さん、大人げないよ。ごめんね、南さん。母が無礼な真似をして……
2017/08/31 14:13
私、今日聡太さんを目覚めさせる方法を思いつきました。このCDをここで流してもいいですか?    この方法で聡太さんが目覚めなかったら、私は音楽をやめます。これが聡太さんの為にできる私の最後の最終兵器なんだから!!
2017/08/31 14:15
分かったよ。君たちの演奏の録音を聞かせてもらうよ
2017/08/31 14:17
    聡太の母親はずっと泣いているのが分かる。こうなったのは、止めなかった詩織と郁が悪いと世間が言ったが、これは誰も悪くない。悪いのは、聡太をこのような目に遭わせたやつなんだから。詩織は、CDプレイヤーにCDをセットし、音楽を再生した。
2017/08/31 14:18
    溢れんばかりの音の波が詩織たちをのみ込んでいく。詩織自身もこのような情熱的な演奏をしていることを初めて知る事になったのだ。きらびやか水面とイベントの開会・海辺の町……全てが詩織の前に広がって見えるような演奏をしている事を知る。聡太の反応に少し変わったことが起きた。ピクリと身体が反応したのだ。もう少しだ。もう少しで……聡太が目を覚ます。その前に「マナティー・リリック序曲」が終わってしまった。次にかけるのは「三日月の舞」……今日の詩織は頑張ったんだから聡太も起きてくれるはずだ。そう思い詩織は神に願いを捧げるようなポーズをとった。
2017/08/31 15:08
(どうか聡太さんが目を覚ましますように……神様、仏様……お願いします。どうか私に力を下さい)
2017/08/31 15:14
    詩織がお祈りするのと同時に、現実世界が遠ざかるのが分かる。何故なら、聡太に夢世界に誘われたからだ。もちろん、それと同時に現実世界からシャットアウトされ、夢世界に投げ捨てられた詩織は暗い暗い森の中に投げ捨てられたのであった。勿論、音楽はなり続いている。早く聡太を見つけないといけない。詩織は森の中を走り抜ける。夢世界の衣装は、巫女装束で走りづらいけどそんなことを言っている暇なんてない。早く見つけないと……。しかしだった。詩織は、蔦に足をすくわれそのまま転んだのだ。もちろん、転ぶ瞬間なんてスローモーションみたいだった。詩織は立ち上がろうとしたが、足を痛めて力が入らない。もうこれ以上動けないようだ。だったら、大声で叫ぼう、と思いついた詩織は大きな声で聡太を呼び続けた。
2017/08/31 15:19
聡太さん!!    聡太さん!!    どこにいるのですか?!    いたら返事してください!!
2017/08/31 15:25
   しかし、詩織の声だけが森の中に響き渡り、誰の声も返ってこなかった。それに、詩織の声もだんだん掠れてきて声が出づらくなってきた。これが最後の一回と決めた詩織は、大声で聡太を呼んだのである。いつもの「さん」付けではなく、ただ単に聡太の名前を……。
2017/08/31 15:28
聡太、出て来て!!    お願いだから!!
2017/08/31 15:32
    詩織の願いが叶ったのか聡太は詩織の前に現れた。
2017/08/31 15:34
詩織……大丈夫かよ?!    また転んでいるのか……って何故泣いてるんだ?!    痛かったのか?!
2017/08/31 15:35
違うの……。いつになったら聡太さんは私たちの所に帰ってきてくれるの?    私は辛いよ……聡太さんがいないまま音楽をやっていても楽しくない……。どうして帰ってきてくれないの?    私たちは、本気で演奏しているのに……
2017/08/31 15:36
ごめん……詩織。俺にも分からないんだ。どうしたら元に戻れるのかも分からないんだ。今流れている音楽は聞いていて早く戻りたいって思わせるものだ。でも、俺はどうやったら元に戻れるのか分からないんだ
2017/08/31 15:38
じゃあ、私が聡太さんにおまじないをかけてあげるね♪
2017/08/31 15:58
    そう言った詩織は、聡太の頬に顔を近づけていき、そっと頬にキスを落とした。
2017/08/31 18:29
な……な……
2017/08/31 18:35
ふふふ……真っ赤な聡太さんはかわいいですわね。何か貴重なものを見れましたわ
2017/08/31 18:36
分かったから……俺も戻るから……。だから、一緒に夢世界から出よう!!
2017/08/31 18:38
分かってますよ。聡太さんの手は離しませんから大丈夫です
2017/08/31 18:39
    夢世界が姿を変える。鬱蒼としていた森はなくなり、自然的な公園に変化した。動物たちも帰って来て、元の状態に戻ったのだ。これでしばらくは大丈夫そうだ。詩織は、聡太の手をひき、現実世界に戻るのであった。
2017/08/31 18:40
    詩織は、目を覚ます。何故か聡太のベッドに顔を伏せて寝ていたようだ。聡太の家族が心配そうに詩織を見下ろしているのが分かる。そうだ、詩織はあのあとぐっすり眠りに落ちたようだ。背中には、チューバの重みがあり、現実に戻ってきたんだと実感したのであった。

    その直後だった。詩織の頭にゴツゴツした大きな手が乗せられる。聡太の家族が驚きを隠せない様子で聡太を見つめている。詩織も下を向いていた顔を上げて聡太を見つめると、目を覚ました聡太と視線があう。これは、奇跡だ。こんな変な病から聡太は奇跡的な回復を見せたのである。

2017/08/31 19:26
おはよう……詩織。長く待たせたな……。俺は、もう大丈夫だ。決して、歌音さんの事を無下にしたりしないから。俺の音楽……また聞いてくれるか?
2017/08/31 19:49
うん、聡太さんにならいつでもついていきますよ♪    だから、早く元気になって音楽を奏でようよ♪
2017/08/31 19:50
そうだな。すぐに俺もみんなの所に戻るから……
2017/08/31 19:52
    この日、聡太は奇跡的な回復を見せた。この音楽なら歌音についていってもいい、と聡太は思うのであった。茜色に染まる病室で詩織と聡太は、二人で仲良く思いを打ち明けあったのであった。これでしばらくは心配ない。農夫は木こりに覚醒する……まさにその事だと詩織は知らずに……。
2017/08/31 19:53

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