勇者の武器屋

第二話 手詰まりパーティー

エピソードの総文字数=1,766文字

勇者パーティー、宿屋にて。

魔王はどこへ逃げちまったんだろうなぁ?

せっかく1000億Gの交渉中だったのに、勝手に逃げ去ったのは許し難い限りよ。次に見つけたら1500億Gに吹っかけてやろうかしら。

勇者が実力を散々見せつけたせいか、このところ魔王軍の活動が大きく停滞してしまっている。良い状況なんだと思うが、そのせいで探し出すのは容易じゃない。

勇者一人で魔王を圧倒してたからなぁ。アタシらは観戦しにいったみたいなものだ。

回復に手下掃討にと私は物凄く役に立ってたはずだけど。とくに戦士なんて、まーったく役に立ってなかったじゃないの。

そりゃあ、勇者のように圧倒的な技量はないし、魔法使いみたいに魔法力はないし、力や体力じゃ僧侶に勝てないし……いつもお前らの戦闘をぼんやり眺めてるだけの俺の存在意義って何だって話だ。かなり悩んでるんだぞ、これでも。

誰が力と体力だって……? 私の即死魔法の実験台になってみる?

急にスクワットやめろって……。

戦士はさぁ、ガタイはいいし一見強そうに見えるだけで、ぶっちゃけ実戦をまともにこなしたことないだろ。襲いかかってくるモンスターや悪魔の人生のことまで考えてちゃ、そりゃあトドメはさせんぜ。博愛主義者ぶりもほどほどにしとけ。

博愛主義がいきすぎて、人類初、攻撃しない戦士の完成ね。要するに偽善者なのよ。

わかってるつもりなんだ……。ただの荷物持ちなのに、こうして籍を置かせ続けてくれたお前らには感謝してるさ……。

良いヤツなんだけどなぁ。まぁアタシらも重い荷物をぜんぶ運んでいられねーし、ポーター役として男手は今後も必要さ。

戦士さん、そんなことで悩まないでください。私は皆さんに支えられて戦ってこられました。私が思わず敵中に先行しても、いつも皆さんが後ろでバックアップしてくれたからこそ、魔王軍をここまで追い詰めることができているんです。皆さんにはいつも感謝ばかりで、どうやってこのご恩をお返しすればいいかいつも考えているんですよ。

バックアップってより、こっちは必死こいて追いかけてるだけなんだが……。

実際のところ、うちのパーティーはアンバランスだよなぁ。勇者の実力は神話で語り継がれるレベルとされてるし、僧侶はそこらの冒険者が寄って集って対抗してもどうにもならない一騎当千。
反面、私は魔法協会から推薦されただけ。戦士なんて元々バイトで入ったみたいなものだったし。

可憐な乙女に向かって一騎当千呼ばわりはやめてくれないかしら……?

睨むなって……。褒めてんだからな。
とにかくここは、無闇矢鱈に動き回っても無駄なだけだし、しばらくは情報収集に励もうぜ。

そうだな。
この街――王都リステリアは国際貿易の中心として名高い。ここに居座れば、往き来する商人たちから、魔王軍に関する最新情報がもたらされるだろう。

要するに、王都でダラダラと無為な時間を過ごすのね。

魔界の奥深くまで行って帰ってきたばかりだし、ここらで休暇もいいじゃねーか。
どれ、アタシは王都のカジノで久々にスロット三昧と洒落込もうかね。私の右手が唸りの時を待ってるぜ。

魔法使いさん、またギャンブルですか? 程ほどにしてくださいね。あくまで王都への滞在は、魔王さんの情報収集が第一目的ですから。

たまには勝つのならいいけど、アンタいっつも負けてばかりなのよね。損を重ねるために通い詰めるなんて私には考えられないわ。

ギャンブルってのは精神修養なんだよ。遊びながら魔術の鍛錬をしてるわけさ。いや、これ本当。アタシの黒魔法は、ギャンブルの積み重ねのなかから磨きが掛けられてきたんだな。

と、言い訳にしたいわけだ。たしかにアンタは魔法協会で一番の黒魔法の使い手なんだろうけど、それでも私の魔法力の足下にすら及ばないくせに。

そりゃ天下無双の僧侶と比べられちゃあアタシも形無しだよ……。せめて少しはこのパーティーで役立つために、今日も血湧き肉躍る精神修養に行ってくるわ。そんじゃまた夜な。

では私も、宿に籠もっていても仕方ありませんし、さっそく情報収集がてら、街に出てこようと思います。平和な世界を取り戻すため、一刻も早く魔王さんを見つけないと。

どこへ行くつもりだ?

この前の戦いで、愛用していた聖鉄製フランベルジュが刃こぼれしてしまいました。街で情報収集しながら、新しい武器を見繕ってきます。

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