いかに主は導きたまうか。

10.1 Deciplin 体。

エピソードの総文字数=1,830文字

  京都の職場における三年間はボクにとって、最も平穏な期間だったと言える。これも後で振り返って思えばの話だ。【不健全さ】とボクが呼ぶ、[妬み嫉み][足の引っぱり合い][裏切り][良いトコ取り]といった職場における、これら悪しき習性があまり見受けられなかったのだから...。これは単に、そこが微温湯(ぬるまゆ)だったから、また皆にとって、ボクが歯牙にもかからない存在だったからだとも言える。職場の同僚は皆、かなりの年配者で、ベテランさんだった(ほぼ五十代)。同年輩が一人いたが、その下はいなかった。その代わりと言っては何だが、ヘビーな仕事が、さも当たり前ともいうようにボクに全て回されていた(これらは在職期間約三年間、動かされることは決してなかった)。

1. 仕入れの仕事:

  朝一番に出社をすると、先ずは掃除(フロアーの掃除機がけ等)を行い、すぐに郵便局に軽で向かう。そこには(日よるけれど)、大体7〜10個のダンボール箱がまとめて保管されている。中身は外国から届いた本だ。*郵便局はそこから配達はしてくれない。そこそこ重いダンボール箱をボクは車へ台車を使い移動して積み込む。そして会社に運び入れる。*良い筋トレになりました。

  持ち帰ったダンボールを開封し、本を取り出す。出版社ごとに山を作る。ELSEVIER, SPRINGER, McGraw Hill, etc。そして不要になったダンボールを完全に潰して、PP紐で括る。地階の決められたゴミ捨て場へと移動させる。*朝方は管理人と、よく出くわす。マンションの管理人は中年の女性だった。相手はボクが虫が好かないのか、いつも意地の悪い挨拶をする。言葉だけは、”はんなり”と丁寧だが蔑視の思いが声のトーンには含まれていた。流石は京都のイケヅである。ボクは踏ん張り、丁寧に、「こちらは、なんとも堪えていませんよ」とばかりに明るく穏やかに挨拶を返す。すると相手は、とても嫌な顔になる。

  本には傷まないようにとパラフィン紙をかけていく。一冊一冊、綺麗に折り目を付けて取り付ける。背表紙がチャンと中央に来るようにと神経を使う。止めはセロテープで四カ所。本は同種であれば良いのだが、大体はサイズがみんな違う。預かり品なので、ある一定期間を限度に返品すれば返金してもらえる仕組みだった。だからの包装だった。次に納品書(Invoice)にある親番号を本の表紙裏に、枝番号を添えて、鉛筆で薄く書き込む。(返品時には消しゴムでそれは消される)。

  それが済めば、電子タイプライターを用意する。一冊に三枚セットの伝票を(色違いで白、黄、ピンクの感圧紙)、そして営業で持ちだす為の伝票をタイプで作成していく。キーを押すと「パシャ、パシャ」と薄っぺらで騒がしい音がする。早く打つとケタタマしい感じになった。伝票には書名、筆者と枝番号が入る。全冊数を終えるには数時間かかる。集中力の訓練になった。打ちあげた営業用の伝票は本の中に挟んでいく。

  各営業マンのデスクに、指定通りに分けて積んでいけば、仕入れの仕事は終わる。営業マン達はそれらを何処何処の何先生や、何処そこのメーカーに持っていくかを考えるだけだ。

補足:

仕事を仕事として、やってもあまり意味がない。
ボクは(Gのガイドに従い)頭と心と体が、バランスよくどれかが中心となって刺激を受けることを求めた。そして、その時に他の二つがどのようにあるのか、過ごしているのかを観察をしてみた。例:タイプ打ちは基本、体(運動センター)が中心の作業だ。腕と指が、しなやかに、力みなく、そして早くキーを打つことに筋肉のコントロールを心がけた。心は電子タイプライターのタイプ音に、よく刺激を感じていた。*もっといい電動タイプのタイプライターを買ってもらいたがっていた。頭はタイプ文字が正確であるようにチェックを行っていた。*だいたいにおいて、みんな怠けたがっていた。集中力も忍耐力も、すぐに消え失せそうになっていた.....。

本エピソードになにかの価値があるとするならば、管理人さんの話の部分だと思う。
彼女は貴重な機会をボクに与えてくれた。最初は不快感で途方にくれていた。やがていろいろな試行錯誤の結果、上に描いた姿で正解になったように思った。
京都の文化の成果だと思う。あの方には心から感謝をしなければならない。なぜなら彼女がいてくれての機会だったのだから。

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