黄昏のクレイドリア

6-3

エピソードの総文字数=887文字

<ロージア西端の邸宅にて>
…………。
む、どうかしましたかな、ヘルフ。
ぼーっと外を見つめて
! ヨールダン導師。
青年は声の主である老人へ振り向くと、
一瞬だけ ひそめていた眉をはなしたが、
すぐに元のしかめっ面に戻って口を開いた。
いえ、なんでもありません。
ただ、明日でこの街も……
見納めだと思っただけです。
そんなに明日の儀式が
心配かね、御仁
む?
心配せずとも全て滞りなく、
準備は進んでおります。ヨールダン導師。
機を見計らったかのように、
扉を開いて魔術師は二人の前に進み出た。
御機嫌よう、導師。
旅の疲れはとれましたか?
えぇ、一日ゆっくりしていましたからな。
我々聖教会にご協力いただき、
感謝いたしますぞ、魔術師殿。
それはよかった!
しかし……残念です。供犠の塔の光の天蓋は、
天から地へと近づくほどに、光の強くなる神秘の塔。
それを見ることの叶わぬ 新月のときにしか……
導師はお越しになることができないのですから。
それが私の成すべき事ですからな。
贅沢は言ってられますまい。
それもそうですね。
我々魔術師は、この力を以て、
民を導くことが使命でありますゆえ――――
貴様!ヨールダン導師の扱う聖術を、
外法の魔術などと一緒にするでない!!
これ、ヘルフ!
よいのです、導師。
今のは私の失言でした。
いくら根源は同じとはいえ……
豊穣をもたらすアーティファクトを扱うあなたと、
我々魔術師を同列に並べるのは、
いささか驕りが過ぎたようです。
…………。
未だ表情を強張らせたままのヘルフを意に介さず、
ギエルは日の傾き始めた空を窓から一瞥すると、
笑みを浮かべたまま、ヨールダンへ向き直った。
それでは、私はこれにて失礼致します。
最後の作業を残したままにしてありますので。
魔術師が一礼して部屋を後にすると、
小さく舌打ちをしてから ヘルフは口を開く。
相変わらず、魔術師というのは
嫌味な連中しかいないようですね。
ヘルフ、あまり態度を
露わにするものではないですぞ
しかし!あれは暗に
聖教会の出る幕など無いと、
そう言ってるようなものではありませんか!
なに、言わせておけば良い。
私達は私達の目的を達するために、
此処にやって来たのですからな。

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