魔界の姫と二匹の黒猫の物語

第六話 働かざる者食うべからず!

エピソードの総文字数=1,212文字

ほれ、どうした!

腰が入っとらんぞ!

はぁ、はぁ……おじい人使い荒すぎ……!

てか、耕したり雑草取ったり……。
なんなのこれ、いつまで経っても終わらないじゃない……。

良い野菜を生み出すには、手間暇が必要だからの。

姫様の好物のイチゴだって、魔界ではゴブリン達が汗水たらして栽培しているんですよ。

魔界名産ヤミノコマチも、コボルド達が八十八回の手間をかけて育てているのですぞ。

お嬢は「早くケーキ食べたぁい♪ 残飯はオークにでもあげといて」などと仰ってましたが。

ヒィヒィ……そんなの……フゥフゥ……全然……ゼィゼィ……知らなかった……

姫様の暮らしも、他の者達の暮らしも、それぞれが働くことで支え合って成り立っているのです。

左様。働かざる者食うべからずとは、まことによく言ったものですな。

むー。今のあんたに言われると、なんかイラッと来るわね……。

そろそろ休憩にするかの。

冷たい麦茶を入れたから飲みなさい。

ゴクゴクゴク……ぷはー!

美味しい……!!

どうじゃ。働いたあとの一杯は格別じゃろう。

うん、ただの麦茶がこんなに美味しいだなんて……!

姫様は今まで苦労という苦労をされたことがありませんものね。

あ、私も一杯お願い致します。

ですな。

お嬢、我には麦酒をとご老人にお伝え願いたい。

あんたらはひたすらゴロゴロしてたんだから、飲む権利なんてないわよ。

働かざる者食うべからず!

でもさ、おじいはいつも一人で畑に出てるんでしょ?

大変じゃないの? 暑かったり、寒かったり。雨とか雪とか……。

農作物は、その年の気候によって出来不出来が大きく左右されますしな。

そうさな、こうして生きていくことを選んだのはワシ自身じゃからな。

自分で選んだ道なら、多少の険しさはどうということはない。一歩ずつ歩いて行くだけじゃよ。

自分で選んだ道、かあ……。

あたしだったら苦しいのは嫌だけどなあ……。

姫様はいっつも授業をサボって逃げ出してますもんね。

そういえば、ご老人はご子息をお持ちではないのですかな。

一人で住むにしては、少々広いように見えましたが。

確かにそうね。

ねえ、おじいは子どもとか奥さんはどうしてるの?
いないの?

姫様! 直球過ぎます!

プライベートなことについて尋ねる時は、もっとオブラートに包まないと。

そうさな……。妻はだいぶ前に病気でな。気立ての良い女だったわい。

それと息子が一人おったが、とうの昔に村から出ていきよった。

そうなんだ……。

それからずっと会ってないの?

ま、そうさな……。会ってないっちゅーか、風の噂によると死んだそうじゃ。遠くの地で、な。

ぇ……。

……。

……。

ぇと……その……あたし……知らなくて……。

ハハハ、なぁに、嬢ちゃんが気にすることじゃないわい。

湿っぽくなってしまってすまんかったの。

でも……。

それに今は野菜たちがワシの子どものようなもんじゃ。

手をかけてやれば立派に美味しく育つし、手を抜けば不味くなる。
さて、美味しく育てるために、もうひと踏ん張りじゃぞ!

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