勇者の武器屋

第二五話 初恋の相手は

エピソードの総文字数=1,508文字

戦士さんや魔法使いさんがお店のことで走り回ってくれるのを無駄にはしません。私は懸命に武器講座の開催まで頑張ろうと思います。ゆくゆくは学校設立までやって、卒業した冒険者さんから有名な人が出てくるといいですね。魔王さんを倒すような人が現れてくれると、世界中から学校に人が集まってくるかもしれません。

何よ。その言い方、アンタ自身は魔王を倒すことは諦めちゃってるわけ?

諦めるとか、そういうことじゃないんです。魔王さんはとっても偉大な方なんだって知ってから、私みたいなおバカな人間がいざ魔王さんを前にすると、なんだか緊張して震えちゃって、どうするべきかわからなくなっちゃうんです。いずれ魔王さんに追いついて、追い越して、ちゃんと向き合ってみたいんですけど、私なんかが本当にそうなれるのか……道のりが遠すぎて実感できないっていうのが本当の気持ちです。なんだか曖昧な感じでゴメンなさい。

それマジ……? すっかり魔王に洗脳されているような気が……。

手ひどく騙されたはずなのに、すっかりこれだよ。危うく首釣る寸前だったっていうのにな。うちの勇者のお人好しぶりは恐ろしすぎるぜぇ……。

これが勇者のよさだろう。そのせいで何度もコロッと騙されるんだろうが。

魔王さんになら何度騙されても仕方ないのかなって。わかりますか、この気持ち?

全然。

わからない。

恋かよ、なわけねーよな多分……。

……まさかとは思いたいけれど……。

アンタさ、恋したことってある?

恋、ですか?

今まで戦闘ばかりだったので、そんなことを考える余裕なんてありませんでした。でも魔王さんをそういう対象として見ているつもりはないんですよ。もっとこう、なんというか……。

すっかり乙女の目線になってるんだが……。

ちっ、違います、本当に!

真っ赤になって否定するところが……。

だって魔王さんって40代のたぶん半ばくらいですよね。私はまだ19歳ですよ。それに魔王さんは魔族出身で、私は人間出身っていう種族の壁もあります。どう考えたって、魔王さんがすごく迷惑すると思います。憧れの気持ちがあるだけで、それ以上の何かじゃないんです。

恋に年齢や種族って関係ないでしょ。私は6歳のころにはもうすでに、恋の味わいを知っていたわ。

ませたガキだったんだな。その6歳のころの初恋の相手って誰だったんだ?

私はゴールドが初恋だった。あるとき天界の鉱山から、教皇庁に500万Gの値打ちのある大量の砂金が運ばれて、私が1日間の警備を担当することになったのよ。6歳の私に警備させるかって話だけど、すでに十分強かったし、子どもなら砂金を一部懐に忍び込ませる心配がなかったんでしょうね。でもね、そのとき輝く砂粒を前にして、いつまでもその場にいたいと思った。私がマネーと結婚しようと決意した日だったわ。

なんという夢も希望もロマンもない話……。

だけど、500万Gなんてとんだ私の勘違いだった。男を見る目がなかったということね。

金からは卒業したっていうのか。

もう1000万G以下なんて相手にしないわ。この前、勇者が借り入れた1000万Gを見た以上、私の結婚相手はもっと先にいる。魔王が私たちに約束しかけた1000億Gだって、今の私の心は動かさない。たぶんきっと、世界を操るような兆単位の話になって、ようやく私は結婚を決意するんでしょうね。

どうぞご勝手に。その道をどこまでも行ってくれ。

勇者と僧侶は世界有数の戦闘技術の持ち主だが、その分だけ頭のほうが……。強すぎるヤツは、やはりどこかイカれちまっているのかもしれん……。大して強くない俺は、実は幸せだったのかも。

もうヤダこのパーティー……。どこに向かっているのかわからねーんだが……。

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