【1/12】ダンゲロスSS(86)高波一乱VSヤドナシ

高波一乱

エピソードの総文字数=3,024文字

ここは高波一乱さんの執筆スペース!
他の人は書き込んじゃダメですよ!
校庭では学生たちが部活動に励んでいる。
それを侮蔑的な目で見下ろしている男子生徒がいた。

takanami

ンーフフ……以前の僕だったら、『努力なんてくだらない』と馬鹿にしていたけど
今の僕は違うよ。誰よりも努力の尊さ、素晴らしさを理解している
いいよねえ、努力……ンフフ……ンーフッフッフ……!
江良晴志門が手にしているのは、すべて『満点』の答案用紙だ。
突然の成績アップに一時は不正を疑われたが、実力であることがわかると、教師やクラスメイトたちの態度が明らかに変わった。
尊敬や嫉妬の眼差しを受けることは、これまで目立たない男に甘んじていた志門にとって最高の愉悦だった。

takanami

今までは努力をしていなかった……自分の力を抑えていただけなんだ。
僕が努力をすれば出来ないことはない。
それを証明する力が僕には備わっている!
『努力への冒涜』、T・B・E! 己の寿命と引き換えに、その期間に相当する努力を即時に得ることが出来る!
なんて素晴らしい能力なんだ……ンフフ……ンーフッフッフ……!
魔人の能力に目覚めた志門は、さっそく寿命2年を犠牲にして、『東京大学合格へ向けた猛勉強』の成果を得ることにした。
その効果は想像以上で、学園のテストなど簡単すぎてアクビが出るほどだった。

takanami

甲子園? 国立競技場? 行けるといいねぇ。
そのためにこうして毎日、大変な努力をしているんだからさぁ
もっとも僕がその気になれば、君たちの数年分の努力を一瞬で追い抜くことが出来るんだけどね。
このTBEで
ま、そんなくだらないことに、僕の大切な寿命を費やす気はないけど。
ンッフッフ……!
考えるまでもなく、得しかない能力だった。
老いさらばえ、寝たきりでいるような期間を犠牲にするだけで、この若く可能性に満ちた年齢を充実させることが出来る。
男性の平均寿命は80年。まだまだ寿命には余裕がある。
志門の前には、輝ける未来しか見えなかった。

だが、様々な能力を持った魔人が跋扈するこの世界では、明日とも知れない命だ。
魔人たちの目の届かないところに逃げて、ひっそりと生きていくべきか。
否、それは魔人としての能力『努力への冒涜』を引き出した、江良晴志門の自尊心と万能感が許さない。

せめて一人でも魔人を殺さなければ、この先、大手を振って生きていくことが出来ないだろう。
偉そうな態度で自分を見下し、馬鹿にしてきたあいつらだって勝てるということを、自分自身に証明しなければならない。

takanami

それが叶うのなら、5年……いや、10年を犠牲にしたって惜しくはない……
次に会った魔人を殺することを、志門は決めていた。

takanami

ンーフッフッフ! 邪賢王だろうとド正義だろうと関係ない! 僕の努力で出来ないことは無いんだぁ!

翌日、志門は公園で不審な男を見かけた。

一見してごく普通の初老男性だが、肩にバナナを抱え、腰にもバナナを差している。


子どもが木の上を見上げて泣いていた。

その頭をなでた男性は、手にしたバナナを風船に向かってながる。

風船の紐の根本に絡みついたバナナは、空中で大きく弧を描いて、男性の手元に戻ってくる。

takanami

おじちゃん、ありがとう!

気をつけて遊ぶのですよ。そしてバナナのように優しい女性になるのです

? う、うん……

いまの挙動を見れば、男性が通常の人間でないことは確かだった。

takanami

投擲系の能力か……?
魔人としてはオーソドックスなタイプか
おや、いったい、何の用ですかな
わるいがおっさん、死んでもらうぜ
冗談……のようには見えませんな
TBE発動!
さん……いや、5年分の寿命と引き換えに、身体能力を強化!
1年分の寿命と引き換えに、動体視力を強化!
1年分の寿命と引き換えに、反射神経の強化!

そう宣言した瞬間に、志門の肉体は見違えるように成長した。

takanami

ンフふふふ、素晴らしい!
体中にちからがみなぎってくる!
これが僕の努力の力だ!
死ねえぇっっ!!
投擲系能力は間合いが命!
ここまで僕を近づけた時点で、お前は敗北していたのだあっっっ!!!
お嬢さん、ちょっと失礼
あっ

バナナの風船を手にした男性は、そのままふわふわと空に浮かびがった。

takanami

な、なんだとっ!?
お前の能力は投擲系じゃないのか!?
私の名は松野馳夫。
バナナ武術連盟の会長にして、誇り高きバナナ魔人である。
私が一度手にしたバナナであれば、この通り……

バナナの皮が放り投げられ、ゆっくりと落ちてくる。

ふざけやがって! と舌打ちをした志門だが、

次の瞬間、バナナの皮が物凄い勢いで地面を滑ってきた。


体制を崩した志門の靴裏に入り込み、足を滑らせた志門は、固い土の地面に後頭部を強打する。

takanami

ぐああっ

ふらつく頭をもちあげれば、一面に広がっているバナナ、バナナ、バナナ。

それぞれが命を持っているように、あやつり人形のように動き回っている。

takanami

これだから魔人はむかつくんだよ……
わけのわかんねえことばかりしやがって!
てめえだけは絶対に殺してやる!
TBE!
寿命5年と引き換えに、肉体を大幅強化だ!
バナナなんぞいくらぶつかっても、ダメージにすらならねえ!

志門の体はさらに膨れ上がった。

バナナが弓矢のように飛んでくるが、びちゃびちゃと音を立てるばかりでダメージにはならない。


志門は地面に落ちていた砂をつかみ、松野に向かって投げた。

その一粒がバナナ風船にあたり、風船が割れる

地面に落下するかと思われた松野だったが、地面に落ちていたバナナたちがクッションとなってカバーした。

takanami

困りましたね……それほどまでに私を殺したいのですか。
どのような理由で?
ンふふふ……理由などどうだっていいだろう。
つぶれたバナナのようになって死ね
仕方ありません。
私も自分を守るために戦いましょう!
ンフ、こんな柔らかいバナナなど、僕の努力で鍛え上げた肉体の前には……
ぐはあっ!?

無数のバナナが、志門の鋼のような肉体に突き刺さっていた。

takanami

馬鹿な、これは……冷凍バナナ……だと……!
バナナは万能の食べ物です。
栄養価も高く、味はまろやかでこの上なく優しい。
そしてときには、このように悪を罰する正義の刃となる
ぐはあっ!
こ、この肉体では防ぎ切れない!
もっと、もっとだTBE! 寿命10年と引き換えに、さらなる肉体強化だ!
僕の努力でなんとかならないことはない!
おろかな……

志門は膨れ上がった肉体に無数のバナナを刺したまま、前のめりに倒れた。

指や腕、膝や足首の骨は、殆どがバナナによって破壊されている。

takanami

どんな理由があったのかはわかりませんが、哀れな男です。
せめて手向けに、バナナを捧げ……
……ンフ、僕の勝ちだ
っ!?
TBE発動!
寿命1年と引き換えに、この体の傷を治療する努力を得る!

志門が握っていた鋭利なバナナが、松野の首に突き刺さった。

松野は体内に入ったバナナを瞬時に凍らせて、止血を試みる。

takanami

最後まで面倒をかけてくれるなあ、ンフフ!
でも所詮、僕の敵じゃなかった!

ナイフが松野の心臓に突き刺さる。

松野は小さなうめき声を上げて倒れた。

あたりには甘いバナナの匂いが立ち込めていた。

takanami

ンフフフ……やった、やったぞ……魔人を殺してやった!
費やした寿命は15……20年あたりか?

戦う前とはだいぶ歪な体になってしまったが、役に立たないというわけではない。

手元に落ちていたバナナを拾い、乱暴に口に運ぶ。

takanami

そんなにオススメなら、今日から毎日食べてみるか。
僕の寿命が、いくらかでも伸びるかもしれないしねえ。
ンフ……ン-フッフッフ! ンフ、ンフ、フッフッフ!
(終わり)

takanami

そこまでです!!

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