黄昏のクレイドリア

19-3

エピソードの総文字数=1,193文字

<リーン邸 執務室>
滅びたと伝えられる、

私たちエルフが交流していた人間の村。

そして、魔術師に侵略された彼等……

…………。
……セシルが言っていた、

エルドという
愛称のエルフは、

私がまだ幼いときに父より聞いた、

かつての同胞の名です。

カノン達が目の当たりにした出来事は、

おそらく……事実の一部でしょう。

…………そう。
なんだかそういわれると、
逆に実感が湧かないわ。
仕方がないですわ。
私だって、まさかそんな100年前の
出来事が……結界魔術によって、
ましてや天候をも再現するだなんて、
聞いたことがありませんもの。
ひゃ……?!

フィリカって、今何歳?

あら、レディに年齢を聞くのは

ご法度ではなくて、カノン。

……フィリカってほんとに
エルフなのね……。
ふふ、何を今さら
それに加えて、イーリアスの
呪いの発症か……まったく、
入団試験のはずが、
踏んだり蹴ったりもいい所だわ。
…………。
あっ……、別に、
指示したフィリカのせいだって
わけじゃないわよ?

えぇ、大丈夫。

わかっていますわ。

ぼんやりとした様子で、

外へ向けていた視線を戻すと、

フィリカは再び口を開いた。

……さて、カノンは
今回の事件をどう見ますか?
あなたも寂静の遺跡は、
過去に訪れて、
"何もない"遺跡だったと
記憶しているはずです。
えぇ、あの時は

遺跡を軽く見学して、

森の惑いの時に気を付ける程度で

終わったからね。

ですが、実際は違いました。
意味ありげな地下空間、
滞留する魔力。
そして脱出したら
展開されていた結界魔術……
……イーリアスが、
今回の騒動の核なのは
間違いないでしょうね。
えぇ。あの吸血鬼さんは、

どうやらただの

変態魔術師ではありませんわ。

もしかしたら、彼は

私たちの望む……真実へ至る"鍵"を、

持っているかもしれません。

鍵…………。
……それなら、

誰かに奪われるわけには

いかないわね。

導き出されたシンプルな結論に

これからの方針を決めたカノンは、

大きく伸びをしてからフィリカへ向き直った。

フィリカ。
はい!
明日の朝に、

あたしはロージアに向かうわ。

イーリアスの呪いが発症する前に、

あの魔巧具を手に入れないと。

わかりました。 

ふふっ、あの時

あなたが腹を切って、

お金を渡した甲斐がありましたわね!

(きっちり給料から

 引かれてたからね……)

……まぁ、すぐ帰ってくるから、

それまでイーリアスの事よろしくね。

えぇ、もちろん。

あなたのお願いなら

断れませんもの。

あの吸血鬼さんの

お眼鏡に叶うかわかりませんが、

カノンが戻るまで

エルフ秘伝のアンブロシアで

発症を抑えておきます。

安心してくださいな。

……ありがとう。


感謝の言葉を述べて踵を返すと、

部屋を出て、静かに扉を閉めた。

…………。

(エルフが魔術師の迫害によって

 淘汰されていた、か……。


 いつも通りに見えたけど、

 フィリカはこの事を

 既に知っていたのかしら?)

(フィリカ、大丈夫かな……。)

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